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モーター スポーツ コラム 2022年12月2日

ワールドカップの差別問題で思い出した、インディ500マイルでの出来事。

今日も今日とてプッシュ&ルーズ by 高橋 二朗
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ウィリー・T・リブス選手

サッカーのW杯がたけなわですね。

今回のW杯で話題になっていること。日本対ドイツのキックオフ直前の写真撮影でドイツの選手がいきなり右手で口を覆った。テレビ観戦していてビックリした。開催国のカタールにおけるLGBTQの多様性許容の低さ、人種差別に対してのアピール『ONE LOVE』のキャプテンマークの着用をFIFAが認めなかったことへの抗議の行動だった。

モータースポーツにおいては、F1で元チャンピオンのレジェンド、ネルソン・ピケ氏がルイス・ハミルトン選手に対して人種差別発言をしたことが発端となって参加ドライバーたちがスタートライン上で人種差別撤廃の行動を起こしたことは記憶に新しい。

今回の差別問題を知った時に、あの出来事を思い出した。

1991年のインディ500マイルレース。
ウィリー・T・リブス選手。アフロアメリカンのドライバーが初めて予選を通過し決勝に臨んだ。
私はその歴史的な瞬間に立ち会えた。
メディアセンターに戻ると、白人の記者たちの会話が気になった。

「ウィリーには、良いポップオフバルブが与えられたに違いない」

ポップオフバルブとは、ターボのブーストをコントロールする圧力調節弁のこと。このバルブは、オーガナイザーから供給されていて、エンジン出力を公正に保っている。リブス選手がその年に予選通過できるかどうか注目されていて、そこで通過ならずとなったらメディアはどう報道するだろうかをオーガナイザーは気にしたという意の会話が囁かれていた。
つまり、一定以上のブーストがかかるように弁のスプリングが硬いポップオフバルブが彼に与えられたから予選を通過できたのだと。彼の快挙を素直に喜べない雰囲気が漂っていた。その話は、どのメディアにも出なかったと記憶している。しかし、アメリカでは、黒人と白人の間には確固たる人種差別が存在しているので、それを回避しなくてはならないという思いが根深いと感じた出来事だった。彼のマシンには主だったスポンサーロゴは無かったが決勝前にマクドナルドがスポンサーとなった。ご存知のハンバーガーショップが株を上げた。

リブス選手は、今どうしているのか調べてみた。彼は、現在F1のレポーター、インタビュアーとして活躍しているようだ。F1をライブで見ないのでそれを知らなかったけれど、彼がアメリカGPにおいてフェススタッペン選手やルクレール選手にレース後のインタビューをしている映像をYouTubeで見ることができた。貫禄十分のリブス氏が快活に仕事していた。

文:高橋 二朗

高橋 二朗

高橋 二朗

日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。

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