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大草りき選手(No.10 TANAX GAINER GT-R)「“雑草ドライバー”として、子たちに夢を与えられるようなドライバーになりたい」
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子富田竜一郎/大草りき/塩津佑介
レースでの出来事をドライバー自身に振り返ってもらう「SUPER GT あの瞬間」。レースでの秘話、ドライバーのホンネを“深掘り”し、映像とコラムでお届けします!
第5戦鈴鹿の予選で、GT300クラスのポールポジションを手にしたのはNo.10 TANAX GAINER GT-Rの大草りき選手。今シーズン、SUPER GTにフル参戦を果たしたばかりのルーキーながら、予選での一発の速さ、そして決勝での粘りある走りを存分に発揮する有望株だ。今や、“あの闘将”も一目置く存在となったニューフェイスに、鈴鹿の一戦、そして今後の目標を語ってもらった。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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SUPER GT 2022 第6戦 スポーツランドSUGO 予選
配信期間 : 2022年9月17日午後2:20 ~ 2022年9月17日午後5:30
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SUPER GT 2022 第6戦 スポーツランドSUGO 決勝
配信期間 : 2022年9月18日午後1:30 ~ 2022年9月18日午後6:24
──鈴鹿では、今シーズン2度目の表彰台に上がりました。ただポールポジションスタートだったので、2位は複雑な気持ちでしょうか。
大草りき:鈴鹿のレースウィークは、ヨコハマタイヤとブリヂストンタイヤがちょっと僕たちのタイヤ(ダンロップ)に勝っていて、正直あの位置でレースをできるとは思ってなかったんです。予選であそこまで行けたのは、ほんとにダンロップさんがとてもいいタイヤを用意してくれたおかげなので、そこは感謝しています。ただ、前回の優勝後、ちょっと勝ちから遠のいてしまっていて。その中でやっと手にしたポールポジションだったので、自分的にはポール・トゥ・ウィンをしたかったっていうのは理想なんですけど。まずはトラブルなく、チーム全員も大きなミスはなかったので、ポジティブな結果だったと思っています。
──予選ではQ2担当し、2番手とは0.054秒差でGT300クラスのポールポジションを獲得。どんなアタックでしたか?
大草:週末をとおしてあんまり速さがなかったので、Q1が終わった時点でクルマをどうしようかっていうのを、(コンビを組む)富田(竜一郎)さんとチームと一緒にすごく悩んだんですけど、そこはしっかり相方の富田さんの素晴らしいフィードバックのおかげで、「こう変えていけば、絶対タイムが出る」っていうのをチームみんなで共有しました。自分自身もドライビングで合わせることができたし、タイムを伸ばすことができたので、有限実行できてホッとしてます。
──今シーズンの大草選手は、ルーキードライバーらしからぬ落ち着いたレース運びをしている印象があります。ここまでの戦いでどのような手応えを得ていますか?
大草:今年(SUPER GTに)デビューさせてもらって、ここまで戦えるとは自分自身思ってなくて。そのなかで開幕戦の予選で3位を獲ることができて、「今年はもしかしたら行ける(戦える)年かもしれない」というのが自分の中でちょっとあったんですね。なので、それからは相方の富田さんから吸収できるものは全部吸収しようというスタンスに変えて、レースウィークにおけるメンタル(管理)だったりとか……結構ルーキーだとブレがちなんですけど、富田さんにもいろいろサポートしてもらい、自分のやるべきことをしっかりとやれてるので、それが落ち着けている要因なのかなと思いますね。
──富田選手を間近で見て、参考にできるものや気づきがあれば教えてください。
大草:細かく言うとバレちゃうんで(笑)。クルマに対しての理解度というか、クルマがどう動いたら足がこう動きになるっていう事細かな……なんて言ったらいいですかね、“クルマの物理学”というか、そういうところがすごく(富田の)頭の中に細かく刻んであるので、僕が「ここまでやっぱり考えて走らないと速く走れないんだ」という頭に切り替えることができました。富田さんと喋っていても、「あ、こういうことだからこういうクルマの動きになったんだ。じゃあセッティングはこうしていこう」みたいないい方向に……。(表現するのは)ちょっと難しいんですけど、そこはすごく自分にプラスになったところですね。いいクルマを走らせてるだけじゃなくて、クルマを作っていく順序というか。どこから直していくんだっていうことも(重要)……。今年は富田さんと深くコミュニケーションを取ることができて、 クルマ作りに対しての自分の理解度がすごく上がったような気がします。
──この活躍に、あの“名将”星野一義監督も一目置かれていると聞きました。現場でもエピソードがあったそうですね。
大草:(第3戦)鈴鹿の予選で幻(※1)になっちゃったんですけど、自分自身初めて予選(Q2)でトップタイム出して、ポール(ポジション)インタビューを受けているときに、うしろからわざわざ星野さんが来てくださって。「顔見せろ」って言われてマスクを取ったら、「オマエの居る場所はここじゃない。ジャニーズに行け!」って言われて(笑)。そのときほんとに“初めまして”(の挨拶を)させてもらったので、「やっぱ見てもらってるんだな」っていうすごい実感がわきましたし、とてもうれしかったです。ほんと、テレビでしか見てなかった人だったので、その人に認知してもらえたっていうだけでもすごくうれしかったです。
※1:第3戦鈴鹿、大草はノックアウト予選Q2を担当。トップタイムをマークし、自身初となるGT300クラスのポールポジションを手にするはずだった。だが予選後の再車検で最低地上高違反が見つかり、タイムは抹消された。
──レースでは、第2戦富士の優勝の後、第3戦鈴鹿、第4戦富士で結果が出ませんでした。今回の鈴鹿に向かうなか、チームとしてまた大草選手はどういう準備をしてきましたか?
大草:第3戦鈴鹿と第4戦富士に関しては、ドライバーのミスだけじゃない部分で落としてしまったレースでした。(第3戦は)車検で(違反が見つかり)ビリから(のスタート)になったのと、(第4戦富士の決勝中、ピット作業後に)エンジンがかからなくなってしまったので。そのなかでも2戦とも(クルマは)調子良く、勝てるなっていう感触があってのレースだったので、僕たちとしては、(今回は)もうほんとにトラブルが出ないように祈るのみでした。ただ行ける(勝負できる)ときに行ける準備をしとかないといけないので、今回の鈴鹿には今まで以上にしっかりとシミュレーターだったりとか、いろいろと準備はしていきました。
──決勝はスタートドライバーを担当。他のクルマがすでにグリッドにつく中、堂々とクラスポールポジションとしてグリッドにつきました。このときはどんな気持ちでしたか?
大草:僕、あの演出を知らなくて……。乗ってる感覚としてはただ(グリッドに)着いてるだけだったんですけど。場内放送というか音楽みたいのが(流れて)……動画をあとから見たんですけど、「うわ、これカッコいいな」ってめっちゃ見返してます(笑)。ほんとになかなかポールって獲れることが少ないと思うので、このタイミングでポールが獲れて、こんな経験をさせてもらえたんで、いいクルマを作ってくれたチームそしてダンロップさんには感謝してます。それもあって、初めての(ポール)スタートだったんですけど、僕の中でいいスタートは切れたかなと思います。
決勝レースでグリッドに向かう10号車 TANAX GAINER GT-R
──レース序盤はトップ3台がほぼ等間隔で周回が続きました。その先のレースはどのように組み立てていたのでしょうか。
大草:僕の中で思い描いてたレースのストーリーとしては、あそこで逃げ切るのは正直キツいなと思っていたので、とりあえず序盤にマージンを稼いで……(タイヤが)タレてしまったらガマンしようと思ってはいたんですけど。もうちょっと自分自身がタイヤの使い方を考えないといけないなという部分がありました。今回、2周目に全体ファステスト(タイム)で周回をしていたときに、ベストを出しすぎてしまったので、後半(タイヤの)タレがちょっと大きくなってしまった。タイヤの使い方をもうちょっと緩やかにしておけば、後半タレずに済んだかなと反省してますね。(9周目のダンプコーナーでNo.244 HACHI-ICHI GR Supra GTの先行を許したが)もうあの時点で僕のタイヤの方が244に比べて結構タレてしまっていて、あそこでブロックしても2人ともロスするだけだなと思ったので、僕ももう(トップを)守る気はなかった。なので、逆にさっさと行ってくれという感じでしたね。
──1回目のルーティンワークは23周終わり。奇しくもトップ3台が揃ってピットへ入る形になりました。10号車としてはどういう戦略でしたか?
大草:もし、タイヤが行ける(走れる)ようだったら(ピットインのタイミングを)伸ばす予定だったんですが、正直あの状況では、多分どのクルマもそうだったと思うんですけど、思ったよりタイヤがしんどくて。だからトップ3台は同じタイミングで入ったのかなと思います。
──その後、セーフティカー導入直前となる2回目のルーティンワークのタイミングが、10号車にとって大きなチャンスにつながりました。
大草:(コース上にはタイヤ)無交換組がいたりとか……(55号車)ARTAさんが多分無交換だったと思うんですけど、 思ってたよりもペースが落ちず、途中は2位を走っていたと思うんです。 あそこまで届くかなっていうような感触だったんですけど、僕たちにとってすごくラッキーなタイミングでSCが入ってくれたので、そこで運良くピットインできたというのが、表彰台獲得を8割以上決めた要因でしたね。
──その展開をピットで見守っていたときの心境は?
大草:(ドライブを担当していた富田は)タイヤの使い方だったりとか、経験値に圧倒的な差があって、僕より高いレベルにあるので、いつも安心してレースは見てるんですけど、さらにその中で運というか……SUPER GTはそういう運の要素が特に絡んでくるレースなので、今回は前回や前々回のように悪い方向に行かなかったのですごく良かったかなとホッとしていました。そのときも富田さんが(無線で)しゃべってるのを聞きながら、「こういうこと考えてるんだ」ってずっと勉強してました。本人がどこに着目してレースしてるかとか、周りの状況の確認の仕方だったりとか。僕とは違うところがいろいろあったので、毎戦毎戦勉強させてもらってばかりですね。
──今回のレースでチームはランキング2位に浮上。サクセスウェイト93kgで次のSUGOを迎えます。意気込みを聞かせてください。
大草:今回のレースを見てて特に思ったのが、100kg(のサクセスウェイトを)積んでるリアライズさん(No.56 リアライズ 日産メカニックチャレンジ GT-R) の作戦がとても緻密で、SCが入るタイミングで(10号車と同様にピットインして)給油量だったりとかを多分コンマ何秒単位で調整してると思うんです。僕たちのチームはリアライズさんに比べるとまだちょっとコンサバな部分があるので、そこはしっかりチームと密にコミュニケーションを取って、ギリギリを攻めれるように(したい)。やっぱりサクセスウェイトを積まれると速さでは勝てないので、そういうところからちょっとずつちょっとずつ(不利な点を)削っていって、最終スティントに「あれ、なんでここにいるの!?」っていうようなレースができれば、僕たちもポイントを獲得できるチャンスがあると思うので、チームと頑張っていきたいと思ってます。
──ちなみに、SUGOは“魔物が棲む”とよく言われますが、 大草選手とSUGOの相性はいかがですか?
大草:僕、SUGO自体は結構好きなサーキットなんですけど、なかなか結果が出てるかって言われるとそうではなくて。速さはあるんですけど、僕の中では結果が出ないっていうサーキットのイメージなんです。なので、次のSUGOでそれを払拭できるように、いいきっかけにできればいいなと思ってます。
第5戦 鈴鹿でのポールポジション獲得直後の大草選手
──ところで突然ですが、ルーキーの大草力選手を皆さんにさらに知ってもらうために、ここで自己紹介してもらえないでしょうか。
大草:えっ!? 難しいですね、どうしようかな……。皆さん、こんにちは。レーシングドライバーの大草りきです。今シーズンは10号車でゲイナー様からGT-Rで参戦させていただいてるのと、あとスーパー耐久にPorsche Team EBI WAIMARAMA様から参戦させていただいてます。SUPER GTに関しては、ルーキーイヤーということでまだまだわからないことがたくさんあるんですけど、ところどころでなんとか速さ見せられているので、このままルーキーイヤーでチャンピオンを獲れるように、しっかりと頑張っていきたいと思ってます。
──ドライバーとしての強みは?
大草:ドライバーとしての強みですか……。僕、ほんとに今までなかなかメーカー系にお世話になることがなかったので、他のドライバーに比べるといろんなクルマに乗せてもらう機会が多いんですね。今、SUPER GTやスーパー耐久のほか、フォーミュラ・リージョナル(ジャパニーズ・チャンピオンシップ)にも乗ってますし、さまざまなカテゴリーでレースをさせてもらってるなかで、他のドライバーよりも多少なりとも器用なんじゃないかなとは思っています。初めてのクルマにパッと乗ってある程度速く走れたりとか、そういう部分で優ってる部分はあると思うので、そこは自分自身の強みなんじゃないかなと思っています。
──レースを始めるきっかけは? またプロのレーシングドライバーを目指すという思いが固まったのはいつ頃ですか?
大草:レース始めるきっかけは、お父さんがレース好きなんですけど、小ちゃい頃からSUPER GTとか見に行かしてもらっていて。そんなとき、昔からお世話になってる地元のレストランのオーナーさんが、たまたまレーシングカートの漫画のカペタ(capeta)にハマっていて……。お父さんが「こいつ(大草)に何させよう」って言ったら、オーナーさんが「カートやらせようよ」って。それでカートを始めたのがきっかけでした。プロドライバーになりたいと思い始めたのは、安田(裕信)さんと出会ったことが一番大きいですね。安田さんとは、僕が初めて全日本ジュニアカート選手権で優勝させてもらったんですけど、そのとき安田さんのチームがたまたま横のピットで、声をかけてもらったんです。安田さんに声をかけてもらってなかったら今の自分はいないので、そこは感謝しかないですね。
──この先、ドライバーとしてどのような願望を抱いていますか?
大草:今までこの場に立てるまですごく苦労して、僕は周りの先輩方にたくさんお世話してもらったので、ここからはしっかりと今までお世話ししていただいた方々に恩返しする気持ちで、国内最高峰まで上りたいなと思ってます。そして、“雑草ドライバー”として……まぁ僕みたいな立場の若いドライバーがいっぱいいると思うんですけど、そういう子たちに夢を与えられるようなドライバーになれたらなと思ってます。モータースポーツはチャンスがそんなに転がってるわけじゃないので、そのチャンスをいただけることにまずは感謝しないといけない。そこでしっかりと決め切らないといけないのは、自分の準備次第だとは思うんですけど、まずはそのチャンスをいただけていることに感謝して、しっかりとこのチャンスを無駄にしないよう、ステップアップできるように頑張っていきます。
──それでは、最後に恒例のここ直近の「ちょっとした幸せ」を教えてください。
大草:最近の趣味がサウナなんですけど、すごいサウナにハマってて、結構レーシングドライバーさんはサウナ好きが多いと思うんですけど、初めて行ったサウナでめちゃくちゃいいサウナを家の近くで見つけたことが、ここ最近ですごくうれしいなって思いました(笑)。めちゃくちゃ水風呂も冷たくて、サウナの温度も熱くて。いいところを見つけて、すごく幸せな気持ちになりました。僕は普段、仕事もしてるんですけど、仕事と(レースを)切り替えるためにレース入りする前の日は休みにしてるんです。リセットするためにサウナに行って、美味しいもの食べて……みたいな感じでルーティンを決めてて。そのときに初めて行ったサウナがめちゃくちゃ良かったので、もう今後はそこにしようと思ってます。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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