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モーター スポーツ コラム 2022年8月24日

SUPER GTでも台頭を始めた“新世代”

SUPER GT by 吉田 知弘
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第4戦を制したNo.37 KeePer TOM’S GR Supra

8月6日・7日に富士スピードウェイで行われた2022 SUPER GT第4戦。スケジュールの都合で、約2ヶ月間のインターバルがあったこともあり、多くのファンが楽しみにしていた1戦となった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、引き続き厳格な制限が設けられる中での大会となったが、サーキットサファリが復活したほか、ファンと選手・レースクイーンらがソーシャルディスタンスを確保した上でのピットウォークなど、徐々にイベント関係も再開されつつあり、SUPER GTもコロナ前の活気が戻りつつあるように感じられた大会だった。

シリーズの折り返しを迎える富士大会。GT500クラスでは、若手ドライバーたちの台頭が目立った。

8月6日の公式予選は、それまでの猛暑日とは打って変わり、気温21度と肌寒さを感じる1日となった。GT500クラスは、予選Q1から熾烈なタイムアタック合戦が繰り広げられ、トップ8台が0.25秒以にひしめくという大接戦となった。Q2も同様に手に汗握る接戦になるかと思われたが、ライバルを置き去りにする速さでポールポジションを決めたのは、No.19 WedsSport ADVAN GR Supraの阪口晴南だった。彼自身としては今季2回目、そして19号車としては3戦連続でポールポジションを獲得するという快挙だった。

WedsSport ADVAN GR Supraは3戦連続でPPを獲得した

ここ最近の19号車とヨコハマタイヤのコンビネーションは際立ったものがある。それに加えて、阪口の速さもプラスされ、この快進撃につながっていると言えるだろう。

かつてはホンダの育成ドライバーとして、FIA-F4や全日本F3を戦っていた阪口だが、その育成枠から外れることとなり、ここ数年は苦労することが非常に多かったが、コツコツと努力を重ね、ひとつひとつのチャンスを掴んでいった結果、ついに今季はGT500クラスレギュラー参戦のチャンスを掴んだ。

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すると、全車ノーウェイト勝負となった開幕戦岡山では見事Q1を突破し、第2戦と第4戦ではQ2トップタイムを記録。決勝に関しては、まだまだ課題はあるようだが、ここまで努力を重ねてきたことが、着実に速さにつながっているような快進撃となっている。後半戦は、どんな活躍を見せてくれるのか、さらに注目が集まりそうだ。

阪口晴南(WedsSport ADVAN GR Supra)

迎えた8月7日の決勝レースでは、今季からGT500クラスに登場し注目を集めている日産の新型Zが速さをみせた。特にNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Zは、序盤にトップを奪うと、中盤まで安定したペースでポジションを守り、KONDO RACINGとしては、およそ5年ぶりとなるGT500クラス優勝が現実味を帯びていった。

しかし、そこに待ったをかけたのが、GT500クラス最年少コンビとなるNo.37 KeePer TOM’S GR Supraのサッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋のコンビだった。

3番グリッドからスタートし、第1スティントのフェネストラズが2番手に浮上した。レース直前に雨が降ったこともあり、特に序盤はコースの一部が濡れている状態だったが、フェネストラズはそれも見越して“無理をしないドライビング”に徹した。このため、24号車を無理に負わずに2番手をしっかりとキープし、1回目のピットストップで宮田に交代。ここで満タンまで給油する作戦をとったため、必然的にピットでのロスタイムが増えたほか、第2スティントでは、比較的短めの給油に抑えた24号車に対して、ペース的に不利になる場面もあった。さらに後方からはNo.12 カルソニック IMPUL Zの平峰一貴も迫ってきており、日産Zに囲まれる形に。完全に不利な展開となったが、それを言い訳にすることなく、宮田はペースを上げていった。

そして、73周目に2度目のピットストップを敢行。前回のピットストップで満タンにしている分、最後のピットストップは短い給油時間で済ますことができる。さらに72周目にピットストップを行なった24号車は作業で若干のミスがあったほか、GT300クラスが数台いる場所でコースに復帰することになり、ペースを上げられなかった。これが決定的な差となり、37号車が逆転トップに立つ。

見事なピット戦略をみせ逆転を果たしたNo.37 KeePer TOM’S GR Supra

公式映像のカメラを向けられると、思わずガッツポーズを見せつつも“落ち着こう!”と自らジェスチャーをしていたフェネストラズ。ここからの最終スティントが、2人にとってはとても長い時間となった。

「(サインボードの)ラップのカウントダウンを消してほしいと思うくらい(ゴールまで)長く感じました。本当にキツいレースでしたし、残り5周は泣きそうでした」と、レース終盤の心境を吐露する宮田。過去にはトラブルなどで勝てるレースを落とすという苦い経験もしてきただけに、最後の最後まで気が抜けなかったのだろう。

「(エクストラフォーメーションラップなので1周原算の99周で争われていたが)正直いうと、100周だと思っていて、もう1周あると思っていました。だから『本当にファイナルラップなのかな?』と思いながら走っていました。最後もGT300を抜きながら、チェッカーを迎えていて、フラッグマンも慌てていた感じだったので、本当にチェッカーを受けたのかドキドキでしたけど、みんなが喜んでいる姿をみて『チェッカーを受けたんだ』と実感できました」という宮田。パルクフェルメで公式映像のインタビューを受けると「やりました!」と雄叫びをあげた。

「僕のレース人生は、速さや強さを証明しても、なかなか強さを証明しても、体制面でなかなか恵まれなかったような印象が強かったです。でも、それを言い訳にせずに常に自分の中で努力してきました。だから、昨年もポールポジションを獲って表彰台も獲得できました。そこで自分がやってきた努力は間違っていなかったと思います」

「あとは、それをもう1レベル、2レベル上げることができれば、トムスという日本国内で最強最速なチームで必ず勝つことができると思っていたので、ずっと努力し続けようと思っていました。自分の思う体制でレースができるというのは、本当に感謝しています」

「今年はサッシャと組むというのも最年少コンビで、全日本F3のライバルだった関係から始まって、今ではチームメイトです。2人の団結力というのはGTの中でも一番あると思っていました。1戦目、2戦目で結果を残せませんでしたけど、ステップバイステップで絶対に良いレースをするというのは、良い目標で続けていたので、今こうやって勝てたというのも、その努力が結果として現れたのだと思います」

そして、チームメイトのフェネストラズにとっても、ずっとGT500での優勝を目標に掲げ、努力をしてきた。昨年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国規制の影響で、来日できない日々が続き、ほぼ1年を棒に振る辛い経験をした。それでも諦めずに、今シーズンも参戦。昨シーズンの鬱憤を晴らす結果をつかんだ。

「僕にとってGT500クラスは3シーズン目になるけど、昨年はコロナの影響で入国できなくて、ほとんど走ることができなかったけど、やっと戻ってくることができて良かったし、今年宮田と一緒に組むことが決まって、すごく楽しみなシーズンになるなと思っていた。スーパーGTの中では一番若いコンビになるからね。昨年はほとんどレースをすることができなかったから、本当に辛いシーズンだったけど、こうして最高の結果を残すことができて、興奮している」(フェネストラズ)

優勝会見で笑みをこぼすサッシャ・フェネストラズ

これで、フェネストラズ/宮田は一気にドライバーズランキングでトップに浮上。37号車の山田淳監督も「若い2人の勢いに期待している」と、後半戦のチャンピオン争いを楽しみにしている様子だった。

KeePerカラーの37号車に2017年以来となるチャンピオンをもたらすことができるのか。今後の2人の活躍から目が離せない。

【最後に】
この第4戦富士で印象に残ったのが、レース全体を通して目立った接触がなかったということだ。富士スピードウェイでのSUPER GTといえば、ちょうど3ヶ月前に起きたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Zのメインストレートでのクラッシュが記憶に新しい。まだ、あの瞬間の衝撃が脳裏に焼き付いている人も少なくないだろう。

その後、GTアソシエイションがアクシデントをしっかりと検証し、再発防止策を作成。ドライバーをはじめエントラントに説明し、意見交換をするなど、“同じことが二度と起こらないように”と尽力している。その効果もあってか、今回のレースでは決勝中にセーフティカーが出動することはなく、フルコースイエロー(FCY)も、トラブルでコース脇に止まった車両を安全に撤去するために導入された1回のみだった。また、他車への接触行為や危険なドライブ行為によるドライブスルーペナルティも、GT300のスタート直後に起きた混戦でのアクシデントで88号車に課せられた1件のみだった。

さらに前述の再発防止策で明記された『ハザードランプあるいは方向指示器により後方車両に自車がスロー走行状態にあること を明確に知らせる』を遵守しているシーンも見られた。5月のアクシデントから試行錯誤されてきた対策などが、少なからず効いているということなのかもしれない。

その分、レース後の雰囲気も5月とは大きく違う印象を受けた。

ただ、レースをやっていく以上、大きなアクシデントが起こる可能性はゼロにはならない。あの5月のアクシデントについても、随分と時間が経ち、少し“過去のもの”となり始めている感があるが、あそこで経験したことや学んだことを忘れてしまうと、また同じことが起きてしまう。

そうならないためにも、再発防止策を遵守することはもちろんだが、“同じことが2度と起こらないように”、出来るところを努力してしく必要はあるように感じた、第4戦富士大会だった。

文:吉田 知弘

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吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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