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【FIA フォーミュラE世界選手権 2022 第10戦 マラケシュ(モロッコ):プレビュー】2度の王者ベルニュが5点差に迫る!
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシランキング首位 ストフェル・バンドーン(メルセデス)
電気自動車のフォーミュラカーレース「フォーミュラE」。シーズン8(2021年〜2022年)は初開催の地、インドネシアからアフリカ大陸へ移動。第10戦の舞台は2年ぶりの開催となるモロッコのマラケシュです。「J SPORTS」では第10戦の模様を放送。今回はそのプレビューをお届けします。
さて、前戦のインドネシア・ジャカルタは初開催となりましたが、広いコース幅とオーバーテイクを促進しやすいレイアウトで、アタックモードやスリップストリームを多用した激しいトップ争いが楽しめました。
ジャカルタではかつてのチャンピオンチーム「DSテチータ」が躍進。元F1ドライバーのジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)がポールポジションを獲得。久しぶりの優勝に期待がかかりましたが、レースは終始、ミッチ・エバンス(ジャガー)とエドアルド・モルタラ(ヴェンチュリ)と共に三つ巴の優勝争いが展開。ミッチ・エバンス(ジャガー)が今季最多となる3勝目を飾ることになりました。
ジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)は本当にあと一歩で待望の今季初優勝を逃してしまいましたね。シーズン4(2017−18)、シーズン5(2018−19)の年間チャンピオンであり、フォーミュラEの顔ともいうべきフランス人ドライバーのベルニュ。プジョー・シトロエンのグループ会社であるDSオートモービルのパワートレインを使うワークスチームである「DSテチータ」と共に、これまで通算10勝をマークしてきました。
しかし、近年は「DSテチータ」に年間を通じての強さがなく、好調のメルセデス勢の後塵を拝することもしばしば。昨シーズンのシーズン7(2020−21年)でチームは僅か2勝をマークしただけで、元チャンピオンのベルニュもノーポイントレースが多く、元チャンピオンらしからぬランキング11位となりました。
今季もまだ優勝はありませんが、ポールポジションを2回獲得しており、表彰台はジャカルタの2位を含めて5回。全戦で着実にポイントを重ねていくフォーミュラEのチャンピオンらしい安定した走りで、気がつけばランキング2位に浮上してきました。
第10戦 マラケシュ(モロッコ) コースレイアウト
ランキング首位はストフェル・バンドーン(メルセデス)=121点。首位の座を死守していますが、僅か5点差でジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)=116点、首位から7点差でランキング3位にエドアルド・モルタラ(ヴェンチュリ)=114点と接戦状態に。これはシーズン折り返しがかなり面白いシーズンになりそうです。
第10戦のコース、マラケシュは過去4回開催があり、コースレイアウトは基本的には同じであるため、前戦・ジャカルタとは違い、チームはデータを豊富にもった状態でレースをすることができます。そんな中で直近の2020年に速さを見せたのが「DSテチータ」なのです。アントニオ・フェリックス・ダコスタ(DSテチータ)がチーム移籍後、初優勝を飾り、チャンピオン街道を走っていくキッカケとなったのがマラケシュでした。ジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)も3位表彰台を獲得していますし、ここに来て、一気に形勢逆転もありそうなビッグチャンス到来と言えますね。
3勝をマークしてランキング4位につけるミッチ・エバンス(ジャガー)はマラケシュで表彰台に登ったことがありませんが、コースは経験があるため、今季の好調ぶりをみていると、エバンスにもチャンピオン争いをするチャンスが生まれてきそうです。
一方で、苦しい立場になっているのが「メルセデス」のワークスチーム。今季、F1でも「メルセデス」は苦戦していますが、ジャカルタでは表彰台に登れず、
ディフェンディングチャンピオンのニック・デ・ブリース(メルセデス)はリタイアしてノーポイントになってしまいました。
「メルセデス」は今季限りでフォーミュラEを去ることになっていますが、そのリソースは来季から参戦の「マクラーレン」が引き継ぐことになっています。しかし、来季からGen3にシャシーも変わりますし、勢力図はまた変わる予感がするシーズン9(2022−23)に向けて、「マクラーレン」はなんと日産のパワートレインを使うことを発表。「ニッサン」ワークスもe.damsを買収して完全なフルワークス体制を敷いて、フォーミュラEのテコ入れを図る動きがあると考えれば、「マクラーレン」の体制は非常に興味深いです。
スピードレンジが上がる新型マシン導入の新シーズンは思い切って新しいパートナーシップを結び、ベテランの実力に頼らずに速さと勢いのある期待の若手ドライバーを起用するのも選択肢としてはあるでしょう。そのため、シーズン後半はドライバーのシート争いとなるストーブリーグが加熱するため、チャンピオン争いだけではなく、意外な伏兵の登場にも期待したいですね。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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