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【FIM スーパーバイク世界選手権2022 第2戦アッセン:プレビュー】息詰まる三つ巴バトル!ライダーが主役のSBK
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ前回大会決勝レース2のポディウム
排気量1000ccの市販スポーツバイクによる世界選手権レース「FIMスーパーバイク世界選手権」の2022年シーズンはスペインのアラゴンで開幕。いきなり見応えのあるトップ争いが展開されました。J SPORTSでは全12戦のシリーズを放送中。今回は4月22日(金)〜24日(日)にオランダのアッセンで開催される第2戦のプレビューをお届けします。
まずは開幕戦を振り返ってみましょう。今季の注目ポイントは新チャンピオンになったトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)と6度の王者ジョナサン・レイ(カワサキ)の激しいバトルということになりそうな雲行きでしたが、開幕戦からいきなり、そこに新たな刺客が登場することになりました。今季ホンダからドゥカティに移籍したアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)です。
スペイン出身のバウティスタは長くグランプリ(ロードレース世界選手権/MotoGP)で活躍したライダーで、2006年には125ccクラスのワールドチャンピオンに輝いています。最高峰MotoGPクラスではキャリア未勝利に終わったものの、グランプリ時代からレースでの勝負強さはバウティスタの持ち味であり、そのワクワクする走りが魅力でした。決してマシンに恵まれていたわけではなくとも、決勝で上位に進出してくる走りはファンの心を惹きつけたものです。
そんなアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)が「スーパーバイク世界選手権」にやってきたのは2019年のこと。V型4気筒マシン「ドゥカティ・パニガーレV4R」のデビューにあわせて参戦し、開幕から11連勝を果たす快進撃を見せました。シーズン後半ではマシンが厳しい性能調整を受けてポテンシャルダウンを余儀なくされ、チャンピオンは逃しました。しかし、バウティスタはずっとレース専用マシンを使うグランプリで戦ってきたライダー。彼にとって初の市販車レースだったにも関わらず、いきなり圧倒的な速さを見せたのです。
そんなバウティスタは2020年、ホンダに移籍。しかし、マシンのポテンシャルは厳しく、再びドゥカティワークスへと帰ってきました。その初陣でレース1からいきなりトップ争いに加わり、スーパーポールレースでは優勝、さらにレース2ではジョナサン・レイ(カワサキ)を大きく引き離して2連勝を飾りました。まさに主役級ライダーが優勝争いに戻ってきたことを印象づける素晴らしいレースでした。
一方、チャンピオンのトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)は予選までは速さを見せたものの、決勝では3レース続けての3位表彰台。しかも、レイとバウティスタに差をつけられての表彰台ですから、チャンピオンのプライドに傷がついたことは間違いありません。
そんな3人の三つ巴バトルが今季も展開していきそうな雲行きですが、日本のファンにとって嬉しかったのがホンダワークスの躍進です。今季はバウティスタとハスラムが去り、MotoGPライダーのイケル・レクオナ(ホンダ)、Moto2ライダーのチャビ・ビエルゲ(ホンダ)という新人を起用することになりました。
ホンダとしても苦肉の策だったとも言える起用でしたが、ライダーとして今後のキャリア形成につなげたい新人たちが勢い付き、2人とも常にトップ10でレースを展開。3レースともにキッチリ結果を持ち帰ったことは非常にポジティブな要素と言えます。
さて、そんなホンダにとっても士気向上のキッカケにしたいレースがオランダのTTサーキット・アッセンで行われる第2戦です。MotoGPオランダGPの開催地であり、オートバイレースの聖地としても知られるアッセン。1992年にスーパーバイク世界選手権が開催されて以来、今年で開催30周年を迎えます。
ダッチウェザーとも呼ばれる変わりやすい天候が特徴で、雨に見舞われることも多いサーキットです。しかも今年は開催時期が以前の4月下旬に戻ったということで、肌寒さを感じる気候。晴れたり雨が降ったりとコロコロ変わる路面状況にアジャストできるライダーの順応性とチームの適応力が問われます。
そんなアッセンで強いのが昨年も3連勝したジョナサン・レイ(カワサキ)。このコースでレイはなんと15回も優勝しています。最強体制のカワサキに移籍する前はホンダにいましたが、その時代もレイがシーズン初優勝を飾る場所がアッセンでした。そういう意味ではまさにレイのためのサーキットです。
チャンピオンのトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)はアッセンでは未勝利。ランキング首位のアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)は2019年に2連勝しています(スーパーポールレースは中止)。今とはコースレイアウトが違いますがグランプリ250cc時代の2008年にもアッセンで優勝しているバウティスタにとっては相性が悪くないコースと言えます。
開幕戦アラゴンで苦戦した野左根航汰(ヤマハ)は昨年、アッセンのサーキットを経験済み。全日本JSB1000では後輩ライダーの岡本裕生が雨の中、躍進したレースを見ているでしょうから、先輩の野左根も雨を味方につけてぜひ浮上のキッカケを掴んでもらいたいところですね。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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