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モーター スポーツ コラム 2021年11月19日

昨年以上に緊迫感が高まっているSUPER GTのGT500王座争い。最終決戦の行方は……

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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ランキングトップのNo.1 STANLEY NSX-GTは逃げ切れるか!?

2021年のSUPER GT第7戦ツインリンクもてぎ。例年なら、11月上旬のこの1戦がシリーズ最終戦となり、ここで何度も王者争いの決着を見てきた。

だが、今シーズンは第8戦富士が今月末に控えており、もてぎはチャンピオン争いに生き残るための激しい戦いが繰り広げられた。

なかでも注目を集めたのが、レース終盤に展開されたNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)とNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)のトップ争い。戦前のポイントランキングを考えると、両者ともに第7戦で大量得点を果たさないと逆転チャンピオンの可能性がなくなってしまう状況だった。

第5戦SUGOでチームとしては5年ぶりとなる勝利を挙げた12号車。そこで勢いづいた彼らは、このもてぎでも4番手スタートから終始アグレッシブな走りをみせ、21周目にトップに浮上した。

直後の23周目にピットインし平峰に交代。ここでも積極的に攻めていく走りで後続とのギャップを広げにかかった。

しかし、そうはさせまいと最後まで諦めない走りで追い上げてきたのが、8号車だ。今シーズンはチャンピオン候補の一角と目されていたが、開幕戦から歯車が噛み合わず、勝てそうなチャンスを逃す場面も少なくなかった。一時はチーム内の雰囲気もどんよりとしたものになっていたが、エースの野尻をはじめドライバーたちが、チームを引っ張る活躍をみせ、第6戦オートポリスで今季初優勝を獲得。そこから中1週間で、このもてぎに大会に臨んでいた。

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この時点で両者とも、ランキング首位であるNo.1 STANLEY NSX-GTの山本尚貴とは20ポイント以上の差がついていたが、1号車は予選から上位に食い込めず、決勝もポイント圏外を走行。もし、12号車が勝てばトップと8ポイント差、8号車が勝てばトップと5ポイント差となる。それだけに、両者とも喉から手が出るほど優勝が欲しかった……。12号車(平峰)と8号車(野尻)のバトルは、一瞬も気の抜けない攻防戦に発展していった。

ラスト1周までアグレッシブな走りでリードをしたNo.12 カルソニック IMPUL GT-R。

GT300クラスとの混走を利用して、なんとかチャンスを見出そうとした野尻だが、平峰も混走をうまく使う走りで、相手に隙を見せなかった。順位が入れ替わらないままファイナルラップへ。誰もが12号車の今季2勝目だろうと思い始めた瞬間。青色のGT-Rは突然加速力を失った。ガス欠症状に見舞われたのだ。

「2コーナーを立ち上がってから12号車が加速していかなかったので、その瞬間に『これは僕たちのレースだ』と思いました。僕たちも同じようなことにならないように、燃料は大丈夫だと言われていましたけど、最後のラップは気を抜かずに走りました」(野尻)

12号車がスローダウンした瞬間、おそらく多くの人が昨年の最終戦でのNo.37 KeePer TOM’S GR Supraのスローダウンを思い出したことだろう。ある意味で、このレースも最近のSUPER GTがいかに“勝利のために各チームが極限まで突き詰めているのか”を物語っているような気がする。

その中で勝利を飾り、最終戦での逆転チャンピオンの可能性を大きくした8号車。レース後、ARTAのピットは活気に満ち溢れていた。それ対し、これまでポイントリーダーとして堅実なレース運びをみせてきた1号車チームクニミツのピットは、勝負の1戦と捉えていたもてぎ大会で結果を残せず、どこか“追い込まれた”という切羽詰まった雰囲気に支配されていた。

No.8 ARTA NSX-GTは劇的な逆転勝利を果たした。

たった1戦の結果で、ここまでチームの流れや雰囲気が変わってしまう。それも、SUPER GTの難しさであり、見どころのひとつなのかもしれない。

ポイントランキングを見ると、ホンダ勢のマシンとドライバーが上位を固めているが、トヨタ勢ではNo.36 au TOM’S GR SupraとNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra、日産勢では12号車が逆転の可能性を残している。

最終戦はトヨタのお膝元である富士スピードウェイで、同地でのスープラの速さはライバルもお手上げ状態になるほど。それだけに、もてぎでもスープラの逆襲を警戒する声が多方面から聞こえてきた。

また日産勢として唯一タイトルの可能性を残している12号車は、チャンピオンはもちろんのこと、もてぎでの雪辱を何としても晴らしたいところ。持ち前のアグレッシブな走りが存分に発揮されれば、どこかで勝機が見えてくるかもしれない。

現時点では、どういった展開になるのか、レースウィークが始まってみないと全く分からない状態ではあるのだが……ただひとつ言えるのは、あれだけ“SUPER GT史上に残る激戦”と言われた昨シーズンを上回るほどの緊迫感がパドックに漂っているということだ。

普段は冷静に言葉を選んでコメントを残す山本尚貴が、珍しく自身のSNSで苦悩を吐露する場面があったほか、チャンピオン争いに関わるドライバーや関係者らの、レース後の表情をみても、昨年より重苦しさに似たものを感じた。

それだけ、SUPER GTのチャンピオンは誰もが欲しいものであり、そこにかかるプレッシャーは計り知れないということなのだろう……。

最終戦を終えて、歓喜の瞬間を迎えるのは、果たして誰なのかこと……。今月末の最終戦富士、絶対に見逃せない。

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文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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