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悲願のル・マン24h初制覇を達成した小林可夢偉(中央)
小林可夢偉選手の乗るTOYOTA GAZOO RACING GR010が第89回ル・マン24時間レースに勝ちましたね。HYPER CARクラスが導入されて初年度、歴史的な1戦で優勝。可夢偉選手はこれまでに何度もル・マンの勝利の女神に微笑んでもらえずに悔しい思いをしてきた。直前にリモートでル・マンに向けての思いを聞いた時に「今年はなんとか勝たせてもらえるのではないでしょうかね」と言っていたのを思い出します。
そして、これまでのインタビューでは問いに対する彼の切り返しが時折アイロニーや変化球を含めていたのが、今年は、思いの丈をストレートに語っていたことが印象に残った。今年の可夢偉選手は違うなと思えたのです。チームメイトと共に表彰台で笑顔が弾けた。優勝おめでとう。
そして、今年は青木拓磨選手が初参戦し、初完走を遂げた。これも素晴らしい結果だ。
グランプリライダーだった青木選手はテスト中のアクシデントで下半身不随になってしまった。しかし、モータースポーツに対する情熱は途切れることなく、4輪に転向、当初は運動機能が50%に満たないと判断されてライセンスが発給されなかったが、ジムカーナ、ラリー限定のライセンスが発給された後に限定解除されてサーキットレースにも参加できるようになった。ライセンス取得には友人の土屋武士氏などの協力があったと聞きます。
2019年に現地で取材した際に、サポートイベントのRoad to Le Mans Cupに彼が乗り込むチームSRT41のパドックをお邪魔した。<乗ってみてください>と青木選手が言ってくれたので、LMP3のコクピットに。
青木選手とチームメイトは下半身の運動機能を失っているのでアクセルはステアリングの裏にあるパドルで操作。ブレーキは、シートの右にあるレバーを押すと制動がかかるようになっていた。そのブレーキレバーは、ダイレクトにキャリパーのブレーキパッドに繋がっていて、まるで壁を押すように固かった。<青木選手、これで止めるのですか?><そうです(笑)。結構キツイですよ(笑)>ボクが驚いているとチームメイトが右腕の力コブを見せながら笑っていた。
2020年に24時間レースに参加予定をしていたが、コロナ禍で断念。今年念願の参戦が実現した。62台中31位完走という素晴らしい成績だ。19年の時にマシンにマスコット的なヤモリのステッカーが貼ってあった。今年は大きくマシンのサイドにヤモリが。このヤモリ、右前足が無い。一本足が無くたってへばり付いてヤルゾ!というチームの心いきを示している。
青木琢磨選手が参戦した84号車アソシエーション・SRT41は見事に完走した。
HYPER CAR時代の幕開け、そして、障害者への24時間レースへの重い門戸を開けた今年のル・マンでしたね。
おめでとうございます。小林可夢偉選手、TOYOTA GAZOO Racing。
おめでとうございます。青木拓磨選手、SAUSSET RACING TEAM。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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