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予選は中止になったものの、決勝戦は無事に開催されたSUPER TEC 24時間レース2021。
先陣を切って突き進む。
そんな、戦国時代の武将、それも大将を見たような気持ちでした。
先週の富士24時間レースでROOKIE Racingがエントリーしたトヨタ カローラ スポーツは、世界で最初に水素燃料エンジンでレース参戦した。ステアリングを握ったのは、テストドライバーさんとプロレーシングドライバー。そしてMORIZO選手の計6名。ご存知ですよねMORIZO選手は、世界のトヨタの社長さん、豊田章男氏である。
モータースポーツジャーナリスト以外に約100名のジャーナリストが富士スピードウェイに来て、そのもようを取材していた。今や、カーボンニュートラルへの対応は待ったなしの状況になってきていますよね。政府は、電気自動車=EVの普及を声高にPRしている。専門家や自動車メーカーの意見を聞かずに、期限まで切って「EVだ!EVだ!」と喧しい。
今回の水素燃料車はEVが絶対という政府の方針へのアンチテーゼそのものだったと思います。カーボンニュートラルを実現するのはEVだけではありませんよ。と実力行使したのが今回の24時間レース出場だったのですね。水素燃料エンジンで走るクルマを見るのも聞くのも初めてでした。どんな音を出して走り去るのかと思っていたら、ガソリンエンジン車に比べて低音で野太いエキゾーストノートでした。ディーゼルエンジン車のようで、とても普通に走っていたので、ちょっと拍子抜けした。考えてみれば。既存のGRヤリスのエンジンシリンダーに水素を注入して点火、爆発させてパワーを生み出しているのだから、他の内燃機関と同じなのは当たり前だったのですね。
車室の後部に水素ボンベをいっぱいに積み込み、その重量差は、200キロ。チェックをしながら、ピットインを繰り返し、電気系のトラブルにも見舞われながら目標であった24時間を走り切った。順位は関係なかった。過酷な状況で走行して走り切る。それこそが大きな成果。EVが普及すると、現行の自動車関係者の100万人が雇用を失うと言われています。それは、EVを構成する部品点数が内燃機関自動車より40%も少ないから。しかし、水素燃料車は、既存のエンジンを使う。燃料が水素になったというだけ。そして、カーボンニュートラルの点では、電気を生み出す際の炭素排出より環境にやさしい。
水素は、爆発しやすいという懸念を持つ一般の方に対して、世界のトヨタを率いるトップが自ら走って、その安全性を強くアピールしたのですね。
本陣に佇んで、軍配を翳すだけではなくて自らがレーシングスーツとヘルメットを纏ってコクピットに収まってアクセルを踏む様は、リーダーシップそのものだった。感動しました。歴史的な24時間に立ち会えてよかったです。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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