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通算100勝目を達成したジョナサン・レイ
「FIMスーパーバイク世界選手権」は5月21日〜23日にスペインのモーターランド・アラゴンで開幕し、2週連続のレース開催です。第2戦の舞台となるのは昨年、コロナ禍の中で最終戦の舞台として復活したポルトガルのエストリルサーキット。「J SPORTS」では5月28日〜30日に開催される第2戦の模様をお届けします。
コロナ禍の混乱で5月中旬開幕という遅いスタートになった「FIMスーパーバイク世界選手権」ですが、アラゴンの開幕戦は迫力あるバトルのレースになりました。レース1はジョナサン・レイ(カワサキ)とアレックス・ロウズ(カワサキ)のカワサキワークス「Kawasaki Racing Team WorldSBK」が1−2フィニッシュを達成。今季も変わらぬ強さをカワサキが見せつけるオープニングレースになりました。
続くスーパーポールレースはまたもやジョナサン・レイ(カワサキ)、アレックス・ロウズ(カワサキ)の順でフィニッシュし、カワサキの1−2フィニッシュ。昨年まではレイが優勝してもロウズがそれに続いて2位フィニッシュするパターンは稀でしたから、ようやくロウズがカワサキZX−10RRに慣れ、戦闘力を示すようになってきました。
昨年のマニュファクチャーラーズ選手権ではドゥカティに僅か1ポイント差に迫られたカワサキでしたが、今年はロウズのパフォーマンス向上でさらなる強さを見せそうですし、ロウズの存在はレイの7連覇に最高の後押しになりそうです。レイは通算100勝目を達成し、またもやスーパーバイク世界選手権の歴史を塗り替えることなったのです。
しかしながら、レイの3連勝とはならず、レース2はスコット・レディング(ドゥカティ)が優勝。レイはバトルを仕掛けてきたフロントロースタートのギャレット・ガーロフ(ヤマハ)がスリップダウン。レイはアウト側に押し出されてコースアウト。そして微妙なコンディションの中、スリックタイヤを選択したレディングが圧倒的なハイペースの周回を重ねてトップに浮上。2位以下に10秒近い差をつけての優勝になりました。
ということで、開幕戦アラゴンはカワサキ2勝、ドゥカティ1勝という形に。カワサキ優勢な印象が強めですが、ワークスチームを離れ、Team GoElevenに移籍したチャズ・デイビス(ドゥカティ)が素晴らしいパフォーマンスを見せていましたし、ドゥカティの戦闘力も申し分なさそうです。
しかし、ドゥカティ以上にカワサキの対抗馬として今シーズンを引っ張っていきそうなのがヤマハでしょう。トップチームの「Pata Yamaha WorldSBK Team」で今やエース的存在のトプラック・ラズガットリオーグル(ヤマハ)はレース1で3位表彰台を獲得するにとどまりましたが、スーパーポールレースではジュニアチームのギャレット・ガーロフ(ヤマハ)が3位フィニッシュし、フロントロースタートを獲得。先のレイとのバトルでレース2での優勝はなりませんでしたが、トップチームのシートに相応しいのは僕だと言わんばかりのガーロフは今季かなり面白い存在になるでしょう。
第2戦の舞台となるのは2012年までMotoGPポルトガルGPを開催していたエストリル・サーキット。1周約4.2kmのサーキットで昨年光ったのはトプラック・ラズガットリオーグル(ヤマハ)。予選ポール、レース1優勝、スーパーポールレース優勝、レース2で3位表彰台となり、昨年のシーズン中盤の不振を払拭する走りをみせつけました。ラズガットリオーグルが今年も速さを見せつけるのか注目です。
そしてヤマハといえば、全日本JSB1000のチャンピオンを獲得して渡欧した野左根航汰(ヤマハ)が「FIMスーパーバイク世界選手権」にデビューしました。野左根はレース1で14位、スーパーポールレースで9位、レース2で12位とそれぞれ完走し、全レースでポイントを獲得しました。ジュニアチーム「GRT Yamaha World SBK Team」のチームメイト、ギャレット・ガーロフ(ヤマハ)がトップ争いを展開する活躍を見せたために、ちょっとギャップが大きい結果となりましたが、今はしっかりレースをフィニッシュしてスーパーバイク世界選手権の環境に慣れることが先決。怪我をすることなくデビューシーズンに多くを学んで行くことも大切でしょう。
次戦の舞台、エストリルは野左根にとって初めてのコース。トップチームの「Pata Yamaha WorldSBK Team」に加入したアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)もまだスーパーバイクでは上位争いに加われていませんが、彼を含むヤマハの3人は昨年、エストリルでのレースを経験しているので、ヤマハ勢の中では野左根だけが未経験ということになります。このハンデを乗り越え、チームメイトのガーロフやトップチームのロカテッリを上回ることができるか。すでに特徴的なライディングフォームで注目を集めている野左根の走りに期待しましょう。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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