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【スーパースポーツ世界選手権 開幕戦アラゴン:プレビュー】エガーターの初陣に注目!日本から18歳の川崎祥吾も参戦
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ昨年の王者ロカテッリ
600ccのスポーツバイクで争う「FIMスーパースポーツ世界選手権」の2021年シーズンがスペインのモーターランド・アラゴンで開幕します。「J SPORTS」では今年もスーパースポーツ世界選手権を全戦放送。今回は開幕前のプレビューをお届けします。
さて、コロナ禍でスケジュールが大幅に変更された2020年のスーパースポーツ世界選手権はルーキーとして参戦したアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)の圧勝でした。ロカテッリは2019年までレーサーマシン(レース専用車)で争うロードレース世界選手権Moto3、Moto2と6シーズンに渡ってフル参戦。そこからプロダクションバイク(市販車)のスーパースポーツ世界選手権に転向してきました。
ここ数年、スーパースポーツ世界選手権はグランプリ(=ロードレース世界選手権)から転向してくる選手が多く、ロカテッリもそのパターンでしたが、蓋を開けてみると破竹の連勝街道を突き進み、全15戦中12勝をマーク。ルーキーイヤーでいきなりチャンピオンを獲得。王者ロカテッリは上位クラスの「FIMスーパーバイク世界選手権」でいきなりトップチーム、Pata Yamahaのシートを得て昇格していきました。大出世ですね。
ということで、今季は王者不在。そしてランキング2位のルーカス・マヒアスもスーパーバイク世界選手権に昇格ということで、ランキング上位2人が卒業した中で新たなシーズンが始まることになります。さらに今季は「MVアグスタ」がワークス活動から撤退することになり、2019年に王者にとってMVアグスタに移籍したランディ・クルメナッハーが再び「ヤマハ」へと戻ってくることになりました。
注目されていた新型ホンダCBR600RRのエントリーはなく、参加チームの大半はヤマハYZF−R6をチョイス。対抗馬は今年もカワサキZX−6Rを走らせる「Kawasaki Puccetti Racing」のライダーという構図になるでしょう。
「Kawasaki Puccetti Racing」は昨年ランキング3位のフィリップ・エッテル(カワサキ)のチームメイトに、ルーカス・マヒアスの後釜としてトルコ人ライダーのカン・オンジュ(カワサキ)を起用。2018年にレッドブル・ルーキーズカップで王者になった若干17歳のオンジュは昨年、スーパースポーツ世界選手権に参戦し、ランキング12位。2年目でカワサキのトップチーム入りを果たします。エッテル、オンジュ共にグランプリ出身のライダー同士ということでポテンシャルの高いコンビ。5年間ヤマハに敗れ続けているカワサキが今年こそはチャンピオンを奪還できるでしょうか?
少数派のカワサキ勢では日本人ライダーの参戦が決まりました。この春に高校を卒業したばかりの18歳、川崎祥吾です。川崎はグランプリライダーへの登竜門であるアジアタレントカップに2016年に参戦。その後、2018年、19年とイタリア選手権でSS300(スーパースポーツ300)を戦ってきたライダーです。
今年も当初はスーパーバイク世界選手権、スーパースポーツ世界選手権(600cc)に帯同する「スーパースポーツ300界選手権(250cc〜300cc)」に参戦を予定していたそうですが、スーパースポーツ世界選手権への参戦を打診され、参戦決定となりました。600ccでのレース経験が無いということで、その実力は未知数ですが、海外レースや海外生活には慣れている選手だと思うので、まずは600ccクラスのスピードに慣れて頑張って欲しいですね。
今年は大久保光がMotoEに転向したため、川崎が唯一の日本人ライダーということになりますが、日本のファンにとって気になるライダーが出場します。鈴鹿8耐で表彰台に登った経験もあるドミニク・エガーター(ヤマハ)です。エガーターはスイス出身のライダーで、Moto3を3年間、Moto2を10年間、そして現在はMotoEを戦っているグランプリライダーです。
プロダクションバイク(市販車)のスプリントレースはエガーターにとって初めてですが、鈴鹿8耐では1000ccのスーパーバイクで耐久レースを戦い表彰台に貢献したライダーですから、経験の豊富さという意味では開幕戦から攻めた走りをしてくれるのではないかという期待があります。
チームはかつてスーパーバイク世界選手権やスーパースポーツ世界選手権でホンダのトップチームとして君臨した「テンケイト」。近年はヤマハYZF−R6を走らせ、昨年はスティーブン・オデンダール(ヤマハ)を起用してランキング5位を獲得しました。経験豊富なチームからの参戦ということで、アグレッシブで存在感のあるライディングがトップ争いで見られれば、エガーターはシリーズの中心になっていく可能性もあります。まずは開幕戦でどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。
今季は全12ラウンド24レースで争われる「FIMスーパースポーツ世界選手権」。元グランプリライダーの増加でさらにハイレベルになりそうな2021年シーズンが始まります。開幕戦を制するのはどのライダーでしょうか?
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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