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SUPER GT 第1戦:山下健太(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)「結構疲れました」
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子「SUPER GT あの瞬間」と題して、レース内容をドライバー自身に振り返ってもらう本企画。一部映像化し本コラムの最終ページで視聴可能のところ、本コラムでは余すことなく全文を書き起こしてご紹介する。
記念すべき初回ピックアップドライバーは、”ヤマケン”こと山下健太選手。2021年シーズンの幕開けにふさわしいガチバトルを、どんな思いで戦っていたのか――。坪井翔選手との激しいバトルをはじめ、レース中の心境を振り返ってもらった。
山下健太(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)
── 今季は2年ぶりのSUPER GT復帰です。ヘアカラーは”やる気”の表れですか?
山下:SUPER GTの公式テストを2回やったときの感じが、ちょっと調子悪かったんです。まぁGTだけじゃなくてSF(全日本スーパーフォーミュラ選手権)も調子が悪かったので、流れを変えるためにも髪の色を変えました。19年に大嶋(和也)先輩とチャンピオンを獲ったときは金髪にしたときだったので、「とりあえずそれにするか」という話になり、こうなりました。実は、金はもうやったから(今回は)銀にしようと思って、SF(開幕戦)の前――2週間くらい前にやったんですよ。なんでそのときは銀だったんですけど、今なんか色が抜けてきちゃって…。金になりました(笑)。ま、結果的には良かったですけど。
── 優勝明けの月曜日、どんな幸せを感じましたか?
山下:レース終わって、家に戻って。月曜日、なんも予定がなくて…。暇だったんでベッドからずーっと出ないで、Twitterとかで自分のエゴサーチをして…。で、「すごい、すごい!」とかなってるのをずーっとベッドの中で見てて幸せな気分になりました(笑)。ニヤニヤしながら見てました。ずっとですよ、ほんと。午前中はベッドから出ませんでした。昼ごはんを買いに行くのでベッドから出ましたね。
── では本題のレースの話題に移りますが、今回の予選までの流れを振り返ってください。
山下:まず(公式)練習から行くと、走り出しから結構調子が良くて。富士の公式テスト(3月27~28日実施)の最後の10分間で本当に良いセットを見つけて、その流れで岡山に来ました。すごくいい感触で終えたんですが、ただやっぱり最後の(GT500クラス)専有(走行)の結果からだと、ホンダが速そうだなという第一印象でした。
Q1は結構通るのが厳しいんじゃないかなという印象のなかQ1を走ったんですが、終わってみると結果2番手でトヨタ勢が前を占めていたんで、そこでようやく初めて「今週いける(勝てる)かもな」という雰囲気になりました。実際、次に大嶋先輩が(Q2のアタックに)行ってくれて2番になったので、2番スタートなら全然(勝てる)チャンスあるなって(思って)臨んだ決勝でした。
No.14 ENEOS X PRIME GR Supra
── 大嶋選手のスティント中、無線を通じてのインフォメーションは?
山下:無線はあまりしてなかったと思うんですけど、こちらから見ていて、37(KeePer TOM’S GR Supra/阪口晴南)を追い回すくらいのスピードが見えたんで、「これ、結構後半勝負なんだ」と思ってて。もし前に出れれば勝てるかなっていう雰囲気で見てました。ピットインのタイミングですが、基本的にSC(セーフティカー)のリスクがすごいあるので、前半のスティントはミニマムに近いところでピットストップするっていうのが、多分どのチームも作戦だったと思います。
今回はたまたまSCが入りそう…というタイミングがミニマムの少し後だったので、多分ほとんど全車がそこで(ピットに)入る形になって…。ほんとにすごいぐちゃぐちゃになったんです、ピットが。ただそのなかでも、今回ROOKIE Racingの新しいメカさん含め、ほんとに完璧なピット作業をしてくれてかなり余裕をもってトップに出られたので、ピットアウトしてすぐ「これはすごいチャンスだな」と。ピットクルーのみんなのためにも頑張んなきゃいけないなとも思いました。
No.14 ENEOS X PRIME GR Supra
── コースに出ると、坪井 翔選手(No.36 au TOM’S GR Supra)が背後に迫り、その後、30周以上に渡って壮絶なドッグファイトを展開しました。”手に汗握る”戦いを繰り広げていた心境は?
山下:「いけるだろうな」っていうのは大嶋選手のスティントを見て思ってたんですが、SC明けて2~3周した時に、いまいち(タイヤ)グリップもあんまりないし、バランスもあんまり良くなかったので。逆に坪井君がすごい勢いで迫ってきて…。速かったので、その時点で「いけるな」とは思わなかったですね。逆にもう「残り40周くらい、これヤバいな」って思いました。
抑えるのは厳しいなとは思ってはいたんですが、やっぱり岡山のコースレイアウト的に抜けるポイントっていうのは限られてて…。基本的にバックストレートエンドのヘアピンが一番勝負ポイントと思うんですが、それ以外はGT300に詰まったとき。そのふたつをしっかり押さえておけば、まぁ大丈夫かなというのが自分の中ではあったので、そこだけは絶対に押さえるように1周1周組み立ててました。
── 長い壮絶戦のなかでも、これ!というバトルはありましたか?
山下:序盤のうちは結構同じことを何周も繰り返すような形になってたんですが、途中から結構坪井選手がパターンを変えてきて。例えばアトウッド(カーブ)なんかは、自分はずっとインベタを走ってたんですけど、最初は坪井選手もイン側、自分の後ろをついてきて、バックストレートでスリップから抜け出すっていう形だったんですが、一回アウトからそのまんま坪井選手が行ったときがあって。そのままバックストレートで並びかけられて、そのときは多分ヘアピンで少し接触して2台ともロックした時だと思うんですけど。そのあたりですね。結構速度差があって、マズいなって思い始めたのは。
頭の中はいっぱいいっぱいでした。タイヤもズルズルだとか、わかってたんですが、だからこそ(坪井選手に)半車首でも出られてしまうと簡単に行かれて、多分一回前に出られちゃうと絶対もう抜き返せない。こっちにまったく力が残ってない状況だったので…。ちょっと強引だったかもしれないですが自分が絶対に前に行くという感じ(のバトル)をやってました。
── 71周目の1コーナーのサイド・バイ・サイドも激しかったですね。
山下:あの周回の前後はGT300との巡り合わせも悪くて。岡山の最終コーナーとその一個前(マイクナイトコーナー)は(GT)300に詰まってしまうと、ダウンフォースも抜けてしまって300と同じ速度域になってしまうんですよね。そうなると、やっぱり後ろの坪井選手がストレートでぴったり来てしまう状況になってしまって。あのときは、1コーナーでまたアトウッドと同じような形でアウトから並ばれてしまうような形になって、結構1コーナーは坪井選手のほうが若干鼻先前に出てたかなという状況でコーナーに入っていったんですが、アウト側(の路面)も汚いことがあるので、立ち上がりにかけて若干自分のほうが前に出られたこともあって、なんとかギリギリ防げたのかなと思います。
── 迎えた75周目。ヘアピンのアプローチでついに勝負がつきました。
山下:あのときは、一番今回やったバトルの中で、坪井選手に抜かれる可能性が一番高かった場面かなと思ってて。多分、坪井選手が自分のスリップから抜け出た場所がすごく良くて。その加速を維持したまんまヘアピンに行ったので。ヘアピンのブレーキングをする段階で、自分のほうが半車首以上後ろの状態でブレーキを開始したので、「これマズい!行かれる!」って思ったんですけど、自分もギリギリまでブレーキを遅らせてたんです。けど、坪井選手がそれ以上ブレーキを遅らせてて…。「それ、止まれんのか!?」って思ったんですけど、坪井選手、止まれなかったですね。自分もブレーキがギリギリで結構ロックしてたんで止まれないんじゃないかって思ったんですけど、ああいう形になって。結果的には”助かったな”っていう感じです。
── コースアウトした坪井選手ですが、それでも挽回して迫ってきました。心配は?
山下:あのあとチームと無線のやりとりをしていて、「こっちのタイヤが結構マズいしズルズルだし、振動も出ているのでちょっとヤバいかもしれないです」っていう話をしてて。なので36(号車)とのタイム差を教えて欲しいっていうことと、毎周ごとに何秒詰まったのかというのを教えてもらってて。7、6、5周って残りが減っていく周回に合わせて36との差を聞いていて、「多分大丈夫だろうな」っていうなかで自分は一応コントロールしてやってました。タイヤの振動とかはあったんですが、基本的にBS(ブリヂストン)さんのタイヤが壊れることはほとんどないし、ガソリンも基本的に1周決められている使っていい量の基準を下回る燃費で毎周毎周走っているのを確認してたんで、特に不安はなかったです。
山下健太(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)
── チェッカーを受けたときの気持ちは?
山下:いや、もうほんとに純粋にうれしいなと思ったのと、疲れた~って思いました(笑)。やっぱり展開が展開なので、多分自分が追い詰めていくほうであれば、周回数がどんどん減っていくような感じがするんですけど、自分が追い詰められてるときの周回数の減りの遅さ(苦笑)っていうのが、やっぱり今回特に長く感じましたね。そもそも30周、40周って(バトルそのものが)長かったですけど。もう、結構疲れました。
── 長きに渡るバトルだったので、レースのハイライトを挙げるのは難しい?
山下:ハイライトは…。坪井君が飛び出したところだと思うんですが、それもちょっとどうかなぁ…。まぁ(レース)全部っすね、はい。坪井選手とはレース後にクルマを降りた段階でこっちに来てくれて、「おめでとう」って言ってくれたんで。自分も「ごめんね」って話をして。ちょっと強引だったところがあるんで(笑)。坪井選手とはほんとに同じ道をたどってきたというか、カート時代からずっと一緒なんですよ。出身地も千葉と埼玉で近いので、出てるレースも場所もサーキットも似てるし。ずーっと一緒にやってきてるので。坪井選手の強さとか速さとかっていうのも良くわかっているので、自分もあのくらいいかないとやられてしまうと思っていたので、まぁちょっと申し訳ないんですけど、あの辺までやらなきゃいけなかったですね、勝つには。
── 折しも、決勝日の朝、山下、坪井両選手がかつてGT300クラスで参戦したチーム「つちやエンジニアリング」初代代表の土屋春雄氏が逝去されましたが、ふたりによる素晴らしいバトルはなによりの手向けになったのでは?
山下:そうですね。(土屋)春雄さんが見ててくれたのかなという感じもするし、喜んでくれればいいなと思います。
── 続く第2戦富士はサクセスウエイトを積んでもいけそうですか?
山下:今回、ホンダ勢がちょっとタイヤ(選択)を外したっていう…。そういうこともあるので、実際練習中まで全然速かったし、テストの結果を見てもNSX勢が速かったし。今回たまたまではないですが、ちょっとスープラに有利な状況だったかなと思うし、そこで結果を残せたのはある意味ラッキーな部分もあると思うんですけど、次の富士はスープラが得意というのはわかることなんで、逆に次の富士でちゃんと結果を出さないと。それ以降のレース、SUGOとかオートポリスとか今まで(現行の)スープラでやってないコースが続きますけど、イメージ的にはNSXがそういうサーキットは速そうなんで、富士はほんと連勝するような勢いでいかないといけないかなと思っています。
ROOKIE Racing
── 気が早いかもしれませんが、大嶋選手と再びタイトルを! という気持ちは?
山下:チームはROOKIE Racingという新しいチームになるんですが、エンジニアは阿部(和也)さん、相方は大嶋先輩で2019年に(タイトルを)獲ったときと同じような形でやれているので、コミュニケーション的にはすごくいいと思ってますし、作戦の面でもだいたいうまく行っているので、うまくやるのを積み重ねていけば(タイトルを)獲れるのではないかなと思っています。
文:島村元子
【SUPER GT あの瞬間】
第1戦:山下健太選手(No.14 ENEOS X PRIME GR Supra)
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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