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第3戦、第4戦の舞台はイタリア・ローマ
電気自動車レース「フォーミュラE」のシーズン7(2020年〜2021年)は2月に中東サウジアラビアのディルイーヤで開幕。同地で2戦を消化し、ここからは舞台をヨーロッパへと移します。
J SPORTSでは2021年4月10日(土)〜11日(日)にイタリアのローマ市街地で開催される第3戦、第4戦の模様を生中継。そのプレビューをお届けしましょう。
さて、ヨーロッパでは新型コロナウィルスの感染拡大が今年も止まらない状況になっており、フランスなどでロックダウン(都市封鎖)などが行われている状況ですが、開催地のイタリアでも2万人前後の感染者数が毎日報告されており、イタリアでも強い措置が行われている状況です。
しかしながら、ローマでのレースは当然、無観客ではありますが開催されます。しかも、市街地コースでの無観客開催。日本ではちょっと想像しづらいですが、昨年中止になった「ローマePrix」を開催すべく準備を進めてきていただけに、何としても開催したいという思いが強いのでしょう。ファンはテレビ中継を通じてレースを楽しめるだけでもありがたいことなのかもしれません。
2019年以来2年ぶりの開催となるローマでのレースですが、ロケーションは郊外のビジネス街で変わらないのですが、コースは過去の約2.8kmのコースから変更され、1周は約3.4kmの新レイアウトで開催されます。コーナーは19あり、高速域からのブレーキング勝負でオーバーテイクがたくさん見られそうなレイアウトになっています。レースはかなり面白い内容になるでしょう。
さて、開幕ラウンドとなったディルイーヤでの第1戦、第2戦を終えて、シリーズランキング首位は第1戦の勝者、ニック・デ・ブリース(メルセデス)=32点、ランキング2位は第2戦の勝者、サム・バード(ジャガー)=27点と今季も勝者が変わるシーズン開幕となりました。
しかし、勢いは明らかに「メルセデス」にありましたね。F1では最強を誇るメルセデスですが、フォーミュラEでは本格参戦2シーズン目と後発です。にも関わらず、昨シーズンは最終戦でストフェル・バンドーン(メルセデス)が初優勝。今シーズンは開幕からいきなりニック・デ・ブリース(メルセデス)が圧倒的な速さを見せ、2位以下を4秒以上引き離すリードで優勝しましたから、戦力アップは誰の目にも明らかです。
ディルイーヤで行われた開幕戦
ただ、翌日の第2戦では同じメルセデスのパワートレインを使うエドワルド・モルタラ(ヴェンチュリ)にシステム上のトラブルが発生し、メルセデスのパワートレインを使う「ヴェンチュリ」と「メルセデス」の4台は予選出走を控えるというハプニング。後方からのスタートを強いられ、ニック・デ・ブリース(メルセデス)が9位まで追い上げるのがやっとでした。不運なトラブルはありましたが、今季は巨人「メルセデス」がいよいよ本格的に牙を見せ始めた印象です。
そして、同じドイツのワークス勢としては「ポルシェ」が予選でメルセデス勢に次ぐ速さを見せていました。ポルシェには今季からパスカル・ウェーレイン(ポルシェ)が移籍。彼はメルセデスの秘蔵っ子として育てられましたが、フォーミュラEに転向し、シーズン5に「マヒンドラ」から参戦しました。今季はベテラン2人体制だったポルシェに期待の若手として加入。早速、アンドレ・ロッテラー(ポルシェ)を上回るスピードを見せています。ディルイーヤでは表彰台に登ることはできませんでしたが、ポルシェはウェーレインが躍進の鍵を握っていると言えるでしょう。
ドイツ勢ワークスチームの進化が見えた一方で、開幕ラウンドを非常に良い形で終えたのが「ジャガー」です。フォーミュラE参戦初年度からジャガーのエースとして活躍するミッチ・エバンス(ジャガー)に加え、今季は「ヴァージン」からサム・バード(ジャガー)が加入。大混戦のフォーミュラEで毎年優勝しているバードがチームに加わったことで、ジャガーは今までと一味違う存在感になっています。エバンスが第1戦で3位、バードが第2戦で早くも優勝とポイントを重ね、チームランキングでは堂々の首位となっています。
近年のフォーミュラEはメーカーワークスチームが多数参戦し、どんどんとチーム体制が強化されてきている印象です。いくら開発競争の余地が限られていても様々な解析を行い、レースで勝てる要素を少しずつ揃えて強くなっていくのがワークスチーム。ドライバーの起用方法も面白く、他のカテゴリーで実績を残したメジャードライバーを起用し、コース上での速さで勝負に来るメーカーもあれば、フォーミュラEでの実績を重視してコンスタントにポイントを稼いでいく手法のメーカーもあり、どちらが正解なのか非常に興味深いところであります。
今季は今のところ6月のサンティアゴ(チリ)まで10戦がスケジュールされていますが、コロナ禍の状況次第では実際のところ何戦、どのコースでレースができるのか不透明な状況。そういう意味では新レイアウトになり高速化したローマ市街地のレースではバトルによる接触リタイアは絶対に避けたい要素。開幕戦から速さを証明した「メルセデス」が独走劇を見せるのか、それとも新たな刺客登場か?今季の流れの中で非常に重要な意味を持つローマ市街地の戦いは必見です。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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