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ジョナサン・レイ(カワサキ)
コロナ禍でスケジュールに大幅な変更が生じた「FIMスーパーバイク世界選手権」の2020年シーズンもいよいよグランドフィナーレ。ポルトガルのエストリルサーキットで10月17日〜18日に開催される第8戦(最終戦)の模様を「J SPORTS」でオンエアします。
すでに冬の足音が聞こえてきているヨーロッパ。ドイツやフランスなど大陸の北部はレースには適さない寒さの季節を迎えています。そんな中、今年のグランドフィナーレの舞台はいつもの中東ではなくヨーロッパ南部のポルトガル。アフリカ大陸もすぐ先に見えるリゾート地、エストリルにある1周およそ4.2kmのサーキットが最終戦の舞台です。
エストリルといえば、2012年まではMotoGP・ポルトガルGPの舞台でしたから2輪レースファンの人には割とおなじみのコースではありますが、もうグランプリを開催しなくなって8年も経つというのも驚きです。スペインのカタロニアと距離もレイアウトも非常によく似ており、1kmのストレートを持つことからオーバーテイク合戦も期待できるコースです。
「FIMスーパーバイク世界選手権」はポルトガルラウンドがシリーズの中にありますが、普段使用するコースは今季の第3戦の舞台でもあったポルティマオのアルガルヴェサーキット。エストリルでのスーパーバイク開催は1993年以来27年ぶりです。その時も最終戦として開催され、ファブリィツィオ・ピロヴァロとカール・フォガティが優勝を飾っています。もう随分昔の話ですね。
さて、そんなコースで開催される最終戦ですが、第7戦・マニクールではレース2でスコット・レディング(ドゥカティ)が優勝し、チームメイトのチャズ・デイビス(ドゥカティ)が3位に入ったことで、ランキング首位のジョナサン・レイ(カワサキ)が4位フィニッシュとなり、なんとギリギリの条件で最終戦・エストリルまでチャンピオン争いが持ち越しになりました。
ジョナサン・レイがレース1とスーパーポールレースを制した時点で、マニクールでチャンピオンが決まりそうな流れでしたが、レイの6連覇達成は最終戦の結果次第ということになりました。
ライダーのチャンピオン争いはジョナサン・レイ(カワサキ)が340点で首位。そして、ランキング2位のスコット・レディング(ドゥカティ)が281点となり、両者の得点差は59点。最終戦のレース1終了時点で37点差でレイのチャンピオン決定ということになります。レディングは優勝が絶対条件であることは当然なのですが、勝った上でなおかつレイが14位以下でないとチャンピオンが決まるという非常に厳しい条件です。
ただ、マニュファクチャラーズ選手権はカワサキが366点、ドゥカティが340点と26点差ですから、こちらはドゥカティに逆転のチャンスが十分にあります。2015年以来カワサキが5年連続で獲得し続けている同選手権の王座をドゥカティは奪うことができるでしょうか? もし仮にドゥカティがチャンピオンになれば2011年以来9年ぶりということになります。そう、スーパーバイク世界選手権の顔とも言えるドゥカティですが、これほど長くタイトルから遠ざかっているのですね。
やはり見所はチャンピオン争いの行方ということになりますが、来季の体制がまだ決まっていないところもあるので、最終戦は各ライダーがレースでアピールをする舞台。そういった部分も注目していきましょう。
まず、残留が決まっているのはジョナサン・レイ(カワサキ)とアレックス・ロウズ(カワサキ)のカワサキワークスライダー2人。一方でドゥカティはチャズ・デイビス(ドゥカティ)の行方がまだ不透明。デイビスの今季の優勝は僅か1回だけで、5勝を飾っているスコット・レディング(ドゥカティ)に比べると少ないですが、コンスタントにポイントを重ねてランキングでは3位につけています。
最終戦までチャンピオン争いが持ち越したのもデイビスが3位に入ったからこそ。在籍7年目のデイビスですが、最終戦でさらなる活躍をすることが8年目への切符ということになりそうです。シート争いの最大のライバルと噂されていたダニロ・ペトルッチはMotoGPのKTM移籍が決まりましたから、デイビス残留の可能性は高いでしょう。
また、ヤマハはトプラック・ラズガットリオーグル(ヤマハ)が残留。しかし、マイケル・ファン・デル・マーク(ヤマハ)が来季からBMWワークスへと移籍することになっているので、ヤマハのファクトリーシートは一つ空きがあります。
日本のファン嬉しいニュースとしては来季からヤマハのジュニアチーム「GRT Yamaha」から全日本ロードレースJSB1000で今季2連勝中の野左根航汰がフル参戦することになりました。チームメイトは今季3位表彰台にも上がったギャレット・ゲルロフ(ヤマハ)というのも楽しみですね。
来季に向けて噂はつきませんが、それぞれのメーカーのファクトリーライダーだけでなく、プライベーターライダーたちの活躍も期待したい最終戦がいよいよ始まります。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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