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プレスルームのタイミングモニターと映像モニターから目が離せなかった。
見事な追い上げをみせたニック・キャシディ。
カーナンバー38の石浦宏明選手がピットインしてカーナンバー1のニック・キャシディ選手がトップに立った。スタートディレイから1周マイナスされて、50周の決勝。キャシディは30周目にトップに立った。10番手のグリッドからスタートを決め、1周目の1コーナーで起きたアクシンデントをイン側のダートにタイヤを落しながらすり抜けて1周目に4番手に大きく順位を上げた。スーパーフォーミュラ第2戦の、戦略のキーは、どの段階でピットインしてタイヤ交換するかだ。タイヤ交換の解禁される10周目近辺でトップ10の大半がピットインしてタイヤ交換を済ませていた。だから、早めのピットインを行ったマシンたちは彼の後ろにいた。
と、その時頭の中で、ダダダン、ダダダン!
なぜかわからないけれどゴジラのテーマが鳴り始めた。知っていますよね?ゴジラのテーマ。でも1950年代のオリジナル中のオリジナルのやつ。ダダダン、ダダダン、ダダダダダダダン!
キャシディは、タイヤ交換義務をいつ消化するのか・・・。ダダダン、ダダダン、ダダダダダダダン!ゴジラのテーマがだんだんと大きくなってきた。キャシディの敵は。8番手スタートして彼と同じように2位へ大躍進した坪井 翔選手だ。坪井はまだタイヤ交換を済ませていない1台を挟んで3番手を走行、キャシディの後ろだけれど、ピットイン後の最大の敵。ピットロードを走行するロスタイムとタイヤ交換作業にかかる時間をトータルして36秒から38秒のギャプを坪井に対して築けていたらトップでレースに復帰できる。そのギャップを作れるか。快走するキャシディの前にスローカーが現れた。ゴジラ、いや、キャシディは吠えた!ギャーオー、ギャオー。と頭の中で聞こえたような気がした。痛恨のタイムロス。ギャップは32秒まで縮まってしまった。ダダダン、ダダダン、ダダダダダダダン!ダダダン、ダダダン、ダダダダダダダン!苦しい、苦しい、トップに立つのには苦しい状況となった。坪井のチームメイト、石浦も坪井のすぐ後ろにいて、2位も難しいかもしれない。『作戦変更!3位を狙う』地球防衛軍の司令官から指示が出た!これも、どこからともなく聞こえてきた。
キャシディは48周してピットイン、タイヤ交換を済ませてレース復帰。背後にはSUPER GTのチームメイト平川 亮選手が迫る。その差、0.8秒。しかし、キャシディは平川を突き放して3位ゴール!
自分でも、誰がゴジラで、地球防衛軍なのかシッチャカメッチャカな脳内音声だったけれど、第2戦のレースがすごく面白かったから良いかな。ギャーオー!
坪井翔は念願のスーパーフォーミュラ初優勝をチームメイトの石浦選手とのワンツーという最高の形で飾った。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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