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モーター スポーツ コラム 2020年9月8日

2020SF第1戦レビュー|5ヵ月遅れの開幕でみた様々な“力強さ”

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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2020SF第1戦レビュー

国内最高峰のフォーミュラカーレース「全日本スーパーフォーミュラ選手権」が5ヵ月遅れで開幕。8月30日にツインリンクもてぎでシリーズ第1戦が行なわれた。今年は新型コロナウイルスの影響でシーズンのスケジュールが大幅に変更されたほか、サーキット内でもチーム間での接触を避けるために“ソーシャルバブル”を作り、関係者の人数も制限。さらにサーキットに多くの人が集まる時間を少なくするために予選と決勝を日曜日に開催する“ワンデー開催”となり、決勝レースは途中の給油を禁止し通常よりもレース距離を短くするフォーマットが採用された。

今年の夏は異常なまでに暑いとマスコミでも話題になったが、ツインリンクもてぎでの開幕戦も例外でなく、決勝時には気温40度まで上昇した。

その灼熱のレースで予選から他を圧倒したのが、昨年のもてぎ大会で同シリーズ初優勝を飾った平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)だった。予選ではライバルに0.3秒の差をつけると、決勝でも山下健太(KONDO RACING)を相手にスタートからトップを死守。レース中も全く隙を見せない走りで2020シーズンの開幕戦を制した。

優勝後の会見で星野監督は「マシンが完璧じゃない中、35周、集中を切らさずにできて精神が成長したと思う」と平川を高く評価した。

予選・決勝と完璧なレース運びだった平川だが、今回の原動力となったのは昨年経験した“悔しさ”がきっかけになっていたという。

「昨年もてぎで調子が良かったので、それをもとに持ち込んできました。ただ、昨年は予選アタックも自信があったのですが、パロウ選手に負けたのが悔しかった。そこで良くなかったことが、昨シーズンの後半で分かったことがあるので、それを今回はうまくはめ込むことができました」

「あとは自信を持って自分の力を出し切ることに集中しました。チームもミスなくやってくれたので感謝しています」

昨年は決勝での力強さが目立った平川だが、予選ではアレックス・パロウに0.2秒負けてしまったことが、本人の中ではかなりの悔しさとして残っていたとのこと。今回の予選では彼が記録したコースレコードを0.4秒近く更新する速さをみせ、1年越しでのリベンジを果たした週末となった。

今年からポイントシステムが変更となり、予選ポールポジションには3ポイントが与えられる。さらに午後の決勝レースでも優勝したことで平川が合計で23ポイントをもてぎ大会で獲得。今季のタイトル獲得にむけて、大きな一歩を踏み出した。

この他にも開幕戦では力強い走りを見せたドライバーはたくさんいたのだが、その中で最も印象的だったのがタチアナ・カルデロン(ThreeBonda DragoCORSE)だ。

新型コロナウイルスの影響で来日が難しい状況にあったが、なんとか8月13日に入国を果たし、2週間の自主待機を経てサーキット入り。金曜日の公式テストから誰よりも多く周回を重ね、マシンとタイヤの習熟に努めた。

国内トップフォーミュラにおける女性ドライバーの参戦は23年ぶり。金曜のテストでは積極的に周回を重ねる姿が印象的だった。

まだまだヨコハマタイヤへの理解度が不足していることもあってか、予選ではライバルから遅れをとったカルデロンだが、決勝では安定したペースで走り、一時はほかのドライバーよりも速いラップタイムを刻んでいた。そして、最終ラップには、レース中の接触で後退した山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が背後に迫り90度コーナーでインを突かれた。おそらく多くの人が“さすがにこれは抜かれるな”と思ったかもしれないが、カルデロンは一歩も引くことなく自分のラインを主張する走りを見せ、山本のオーバーテイクを阻止した。

おそらく、あそこまで並ばれていたら諦めるドライバーも多いかもしれないが、カルデロンは違った。

「(山本とのバトルについては)最終ラップで背後につかれてからは、とにかくプッシュして逃げることに集中した。温存しておいたオーバーテイクボタンも使用して、最後までバトルを諦めつもりはなかった」

「決勝レースはキャリアの中で最もタフなレースだったけど、たくさんのことを学ぶことができたし、すごく良い経験ができたレースだった」

普段は笑顔が絶えず、メディアの取材に対しても優しく接してくれるカルデロンだが、いざヘルメットを被ってマシンに乗り込むと、他のドライバーにも負けない強いハートを持っている。そのことを強く感じた瞬間だった。

カルデロンは終始安定した走りをみせ12位完走。ル・マン24時間ではリシャール・ミル・レーシングからLMP2クラスに参戦する。

彼女の活躍に道上龍監督も「予選一発の部分ではまだ課題はあるけど、決勝での彼女のペースは悪くなかったですし、何よりこの気温が高いコンディションで最後までしっかり走れるフィジカルを持っているというのは高く評価したいと思います。まずは最後までしっかり走れたことにホッとしています」と安堵の様子をみせていた。

カルデロンはル・マン24時間参戦のため一旦ヨーロッパに戻ったが、第2戦岡山にも参戦するつもりでいる。もちろん、入国規制がかかっており、来日が100%保証されている状態ではないが、スーパーフォーミュラのレースはかなり気に入った様子で、第2戦の参戦に向けても努力すると語り、日本を後にした。

実際にレース後のパドックではカルデロンの戦い振りを高く評価する人も多く、これからの彼女が日本の舞台でどう活躍してくれるのか。楽しみで仕方がない。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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