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コロナ対策で変則的なシーズンがいよいよスタート
国内最高峰のフォーミュラカーレースである全日本スーパーフォーミュラ選手権。その2020シーズンが、ついに8月29日~30日にツインリンクもてぎで開幕を迎える。今年は新型コロナウイルス感染防止のため世界中の各モータースポーツカテゴリーが対策に追われているが、スーパーフォーミュラでもサーキット内でクラスター感染を起こさないような様々な対策と工夫が施されている。
まず大会前のドライバー、チームスタッフに対しては事前に健康チェックの実施を徹底し、パドックへの入場予定者は全て事前に告知するほかオンラインでの問診票提出も義務付けられる。もちろん入場ゲートでの検温も行ない、万一にも発熱症状がある者がいた場合はサーキットドクターの判断で入場を断るケースもあるという。
通常とは様相がことなるもてぎのパドック。
特にスーパーフォーミュラのパドックで徹底されるのが、各チーム間のピットやパドックの移動がかなり制限され、チームごとの区画“ソーシャルバブル”が作られている。これにより異なるチームの関係者が接触する機会を減らしていく方針だ。実際に開幕戦が行なわれるツインリンクもてぎのパドックでは想像以上に厳重なソーシャルバブルの作りとなっており、通常ならピット裏のテントとトランスポーターの間に通路が設けられるのだが、今回はそれが全面的に封鎖され、チームによってはトランスポーターやパーテーションをうまく配置しており、実際に取材するメディアもお目当てのチームエリアにたどり着くのに一苦労するほど。これにより不要不急の接触を避ける効果につながっている。
通常は通路になっているがパーテーションなどで封鎖。チーム間の接触機会を減らす対策をとっている。
また開幕戦では8月15日にベルギーで行なわれたWECスパ6時間に参戦していた中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)、山下健太(KONDO RACING)も帰国後14日間の自己隔離期間中ではあるが今回のレースに参戦する。
これについては日本レースプロモーション(JRP)が以前から関係するあらゆる機関・組織と度重なる協議を続け、そこから出てきた様々なアドバイス等も参考にして自己隔離と同じような環境を用意。徹底した行動制限などの管理下のもとでレースに臨むこととなる。
具体的な例としてはソーシャルディスタンスの確保やマスクを着用、手指の消毒または手洗いを実施はもちろんのこと走行セッション以外の時間は専用に用意した車両施設で個別に待機する。今回も3人ぞれぞれにキャンピングカーが用意され、セッションが終わったら速やかにそこへ移動することとなっている。また表彰台や記者会見等への参加も控えることとなりメディアが直接取材することも基本的にはできない。
中嶋一貴に用意されたキャンピングカー。WEC組の参戦に際して様々な対策がなされている。
ある意味で他のスポーツでも前例のない試みとなるのだが、その分パドックでは行動制限を徹底しなければならないという緊迫感が伝わっている。
さらに今年はコロナ禍の影響でレースフォーマットも変更された。昨年までは予選を土曜日、決勝レースを日曜日に行なっていたが、今年は全戦で予選と決勝を同日開催し、フリー走行などの走行セッションは土曜日からとなる(開幕戦もてぎ直前の公式テストと2レース開催となる鈴鹿大会は金曜日にも走行がある)。また“密”のリスクを少しでも減らすため、現場で活動するスタッフの数を減らす目的としてレース中の給油は禁止される。これによりレース距離も大幅に短縮され開幕戦のもてぎは35周(168.035km)で争われる。途中のピットストップがない分、レース戦略も大幅に変わってくることになるのだが、今季は予選がかなり重要になってくるのは間違いなさそうだ。
そして今季の一番の変更点が“有効ポイント制”が導入されることだ。新型コロナウイルスによる日本への入国規制に伴いユーリ・ビップス(TEAM MUGEN)、セルジオ・セッテカマラ(Buzz Racing with B-Max)、シャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)の来日が叶わず開幕戦は欠場することなった。今後同じような形でコロナ禍の影響で参戦ができなくなるドライバーが出てくる可能性もあるため、JRPは急きょシーズン中に結果が良かった上位5大会分の得点のみを採用する有効ポイント制度を導入することになった。つまり、最大2レースまで欠場が余儀なくされても、チャンピオン争いに加わるチャンスが残されることになるのだ。
急遽代役参戦が決まった名取 鉄平(Buzz Racing with B-Max)。スーパーフォーミュラ・ライツ選手権とのダブルエントリーとなるが、飛躍の切っ掛けになるはずだ
この他にも、想定外の事態が起こりうる可能性は十分にあるのだが、その際に迅速に対応できるようにJRPや各エントラント、オーガナイザー等で構成する「コロナ対策コミッティ」という諮問機関を設け、不測の事態が発生した時に臨機応変な対応に努めていくという。
スーパーフォーミュラでは開幕戦から5000人を上限として観客を動員するが、ピットウォークやグリッドウォークは実施せずパドックへの入場も禁止。さらに関係者とファンの入場ゲートを別々に分けるという徹底した対策ぶりだ。“コロナ対策”という部分に関してはJRPをはじめ競技運営側はかなり神経を尖らせているなか、いよいよ2020シーズンのスーパーフォーミュラが始まろうとしている。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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