人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

モーター スポーツ コラム 2020年7月16日

超変則的な2020シーズン、試される“対応力“

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
  • Line

いよいよ2020シーズンの開幕を迎えるSUPER GT。新型コロナウイルスの蔓延により予定よりも3ヵ月遅れでの開幕となる。特に日本でも緊急事態宣言が発出された時はレース開催の見通しも立たず、国内モータースポーツ界も少し重たい雰囲気になりつつあった。それでもシリーズを運営するGTアソシエイションは安全かつ円滑にシーズンのスタートを切るべく感染防止のためのロードマップ 及びガイドラインを策定。関係者らの弛まぬ努力により、ついに7月18日~19日に開幕戦を迎えるところまでこぎつけた。

しかし、コロナ禍の影響は少なからず引きずりながらのシーズンスタートとなり、他のモータースポーツカテゴリーと同様に2020年は“超変則的なシーズン”となっていくことは明白。各メーカー、チーム、ドライバーともに例年にはない“対応力”が求められることになりそうだ。

まずは日程面。当初なら4月中旬に岡山国際サーキットで開幕し、11月上旬にツインリンクもてぎで最終戦を迎えるという、約7ヵ月をかけて8戦を戦うスケジュールだった。だが、新型コロナウイルスの影響でシーズンスケジュールは大幅に書き換えることとなり、7月中旬から11月下旬までの約4ヵ月半で全8戦をこなしていくという異例のタイトスケジュールとなった。

さらに大会関係者の移動時における感染リスクを低減するため、開催サーキットを富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎの国内の3ヵ所に限定され、その中でも富士スピードウェイは全8戦の半分にあたる4戦が予定されている。さらに全車がノーウェイトで戦うことになる開幕戦と最終戦の舞台にもなるため、ここ富士でどれだけのパフォーマンスを発揮できるかが、シーズンの行方を大きく左右する要素となりそうだ。

8戦中4戦が富士での開催となるだけに、富士への適応力が求められるシーズンとなりそうだ。

もちろん、シーズンオフの段階ではこのような展開になることは誰も予想していなかったはず。各チームともシーズンを通した戦略の修正を余儀なくされたことだろう。それだけでなく前述の通りたいとスケジュールということで、レースごとのマシンメンテナンスや次戦に向けた対策をとる時間も少なくなるだけでなく、各レースで持ち込む事前のタイヤ選びを検討する時間も限られる。

またGT500クラスは今季から車両が入れ替わる。特に2020年からSUPER GTでもClass1規定に準拠した車両になった。この新規定導入でシーズンオフに話題となったのはホンダNSX-GTのFR化なのだが、それ以外にも共通パーツが昨年までと比べても格段に増えたのが大きな特徴のひとつ。3メーカーの車両とも中身の部分では昨年までとは全くの別物なのだ。

富士テストで好調だったNSX陣営。アップデートされた2種類の新エアロは注目を集めた。

それだけに開幕までに少しでも走り込んでセッティングの煮詰めやデータ収集を行ないたいところだったが、新型コロナウイルスの影響で3月の段階からメーカーテストがキャンセルされるケースがあるなど、予定通りにテストをこなせてこなかった。6月末には富士公式テストが行なわれたものの、それまでブランクというのも少なからず影響しているかもしれない。

これらを総合すると、開幕に向けて満足のいく準備ができたというチームは、あまりいないだろう。その中で開幕戦を迎え、間髪入れずに第2戦、第3戦と戦っていかなくてはならない。ある意味で、これまでチームやドライバーたちが培ってきた経験やノウハウに加え“対応力”が例年以上に求められるシーズンとなりそうだ。

イレギュラーなことはこれだけではない。なんとかレース開催までたどり着いたものの、新型コロナウイルスの影響で外国人の入国規制が続いており、開幕戦の出走を断念する外国人ドライバーが続出している。GT500クラスのヘイキ・コバライネン(No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra)をはじめGT300クラスでも数名の外国人ドライバーが欠席を余儀なくされた。

GTAも外国人ドライバーの入国可否について関係省庁に働きかけをしているが、入国規制そのものが緩和されない限りは彼の入国の可能性を見出すのは難しい模様。実際にプロゴルフをはじめ他のスポーツ競技でも外国人選手が来日できない事態が発生しており、現段階では例外で対応は期待できないようだ。

これにより39号車はコバライネンに変わって山下健太が参戦することとなり、GT300クラスでも急きょ代役ドライバーを起用することとなった。

そして、各チームの現場体制もコロナ禍で大きく変化することになった。まずチームスタッフは1台あたり16名に制限されるほか、タイヤメーカー、エンジンメーカーの各関係者が各チームのピットを往来することに対しても厳しい制限が設けられる。このため、現場でのオペレーションも通常通りとはいかず、これまでと比べると不便な部分も出てきそうだ。この制限は富士公式テストから導入されているが、各チームとも十分に慣れることができないまま開幕戦を迎えることになりそう。ここでも“対応力”が問われることになる。

多くの制限が課される今シーズン。よりチームの総合力が問われるシーズンになることは間違いない。

こうして、現状で起きていることを列挙するだけでもイレギュラーだらけとなっている2020シーズンのSUPER GT。まさに何が起こるかわからない、何が起きてもおかしくない波乱の幕開けとなるかもしれない。それだけに例年以上に1戦たりとも見逃すことのできないシーズンになることは間違いないだろう。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
モーター スポーツを応援しよう!

モーター スポーツの放送・配信ページへ