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ニッポンのモータースポーツのこれから 脇阪寿一×高橋二朗×ピエール北川 困難突破トーク 今スポーツは!モータースポーツ編
J SPORTSプロデューサーコラム by 杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)こんなにもサーキットに行かないなんていうことが…
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、開幕が延期となってしまっているモータースポーツ界。
モータースポーツとの出会いから現在直面している困難まで、モータースポーツ界ではおなじみの3人が今の状況から、アフターコロナに向けた想いを語ります!(収録は5月8日に行われました)
ピエール北川(以下 ピエール):困難突破トーク、モータースポーツ編。
今回進行役を務めさせていただくのは私、SUPER GTやスーパーフォーミュラでオフィシャルアナウンサーをしておりますピエール北川です。よろしくお願いします。
高橋二朗(以下 高橋):。皆さんお元気でしょうか。お元気でいてくださるとよいのですが…。
40年ほどお仕事をさせていただき、シーズンインしてからこんなにもサーキットに行かないなんていうことはなかったです。いつかは打開できると思うので皆さん頑張って乗り越えましょう!
脇阪寿一(以下 脇阪):今シーズンTGR TEAM SARDに電撃移籍しました脇阪寿一です。心機一転、SARDでチャンピオン獲得を目指して頑張ろう!と思っていた矢先に、こういう状況になりましたが、今日は二朗さんと様々なモータースポーツ情報をお届けして、皆さんに元気をお届けしていきたいと思います!
それぞれのモータースポーツとの出会い
高橋:4歳離れた兄貴が車好きで、その影響はありますね。子供の時はヘルメット被っていたころもありましたが、後にどうすればモータースポーツと近いところにいられるかを考えて、そうだ!こういう職業に就けば近くにいられるぞ!ということで今に至ります。12歳でゴーカート、JAFのジュニアカートライセンスを取りました。
脇阪:奈良の地元で道上龍と、幼馴染だったんです。彼は子供の頃から、エンジン壊れて予選ビリになって、そこから追い上げていくようなカッコイイレースばかりしていて、その影響がありました。それと、父親がモータースポーツ好きで、その父親に認められたいという思いもありました。カートから始めましたね。二輪も少しだけやっていました。
高橋:寿一の時代は、エンジンがシートの横にあったでしょ、俺の時代は、背中にあったんですよ。それもロビンエンジンね。
ピエール:富士重工のですね!
高橋:レースの後半は、背中が熱くなるんだよ! 2ストロークでね。
ピエール:私のきっかけは三重県出身で、鈴鹿サーキットが近かったのと、小学校の頃のサファリラリーの小説「栄光の5000キロ」を読んでそれがきっかけですね。
イベントも、レースも開催されない日々
渋谷でのモータースポーツJAPANを予定していたが、2月に中止を決定した
ピエール:さてモータースポーツとして、現状直面している困難とは?
高橋:私のことで言いますと、大変なのは事務所の家賃、売上。うちの事務所は32期目に入るのですが、シーズンオフから3月までは、イベントがないので売り上げがないんです。そして、4月からは順調に売り上げを伸ばさなくてはならないのですが、帳簿を見たら右肩下がりですね。でもいい意味では、今すぐ改善ではなく、将来的に改善しなくてはならないことも見えてきました。4月に開催を予定していたNPO法人のイベント「モータースポーツJAPAN」は、東京五輪の関係でこれまで利用してきたお台場が使えないので、渋谷をジャックする形で開催を考えていたのですが、2月中止を決定しました。直後に、政府が自粛を呼び掛けてくれたので、キャンセル料が半分くらいになったかな。それが今の所、困難ですね
ピエール:脇阪さんは、今年から引き受ける監督もそうですけれど、どんな状況でしょうか。
脇阪:TGR TEAM SARDは、新たなチームで人も入れ替わり、テストにしてもレースにしても共に過ごしてコミュニケーションを密に取りたい時期ではあったけど、今はそれが叶わない。我々はファンの前で戦って、ワクワクドキドキしてもらってという、レースはたくさんの方に支えてもらっているんですよね。それだけでなく、グランドスタンド裏にいる、みんなも困難に立ち向かっている。どうしたらいいかを、みんなが考えに考えているからこそ、ネガティブはだめです。ポジティブに考えたら、時間が出来たと思うんです。この期間に、モータースポーツが皆さんに忘れられないようにして、どう熱量をキープできるか。またコロナが終息して再開したときには、そのエネルギーをドカンと出して、たくさんのファンが集まってくれるよう準備をしておきたいと思っています。
「どうやったらレーサーになれますか?」に答えを見出した「この時期」
ピエール:お二人がこの時期に取り組んでいることを教えてください。脇阪さんはチームのメンバーとテレワークでミーティングをしたりしてますか?
脇阪:自宅待機になった最初の頃にオンラインミーティングはやりましたが、自粛期間が長いこともあり、やりきったんですよね。やはり車は走ったデータがないと先に進めないんです。さらにこれまでのビジネスをじっくり見直したりもしたけど、それでもまだまだ時間が余るので、未来に向けてeスポーツを立ち上げたら、その関係者がぐわーっと集まってくれて、YoutubeでLIVE配信をしています。たまに、イベントでハンドル持つと今でも反響が多く、48のおじさんでも「もう一回世界狙えるのかな」と。eスポーツでは凄い選手がたくさんいるので、モータースポーツファンがeスポーツの世界にも興味をもってくれたらいいですね。
ピエール:二朗さんはどうですか?
高橋:まずは規則正しい生活をする。曜日を忘れないですね(笑)。
eスポーツでいうと、昨年の茨城国体で競技として取り上げられました。国体で取り上げられたのは初めてのケースで中学生グループ、高校生グループに分かれてやっていましたね。ドイツ車種だったかな。JAFのマニファクチャライズ委員会 競技規則車両研究会の懇談会で委員会の担当者の視察報告を受けました。個人的にはeスポーツは才能ないのよ、グランツ―リスモやって、気持ち悪くなっちゃった。ミハエル・シューマッハもeスポーツはダメですね、レベルが一緒ですよ(笑)。
脇阪:酔うのは、目が付いていっていないだけです。私が頑張るので、それを二朗さんがメディアで取り上げていってください。
高橋:だけど、みんな設備投資してるよね?
ピエール:ハンドルコントローラーやディスプレイとか、凄いセット組んでる人いますよね。コロナの影響で動けなくなったけど、ポジティブにとらえれば、こういう状況だからこそ、新たな未来に繋がるeスポーツに巡り合えたのではないでしょうか?
脇阪:すごく感謝していることがあって、どうしたらレーサーになれますかという親御さんの質問に「グランツーリスモをやってください」と言えるようになったんです。それまではカートを勧めていたけど、カートも数百万かかってしまう。しかも、カートを買い与えても、気が変わることもあるかもしれない。僕はeスポーツのために部屋を借りたんですけど、すべての機材があって、ゆくゆくはそこに機材持っていない子供が来て、トレーニングして、いずれその世界に進んでいく環境を整えたいと思ってます。
ピエール:これからeスポーツの部活が出来て、そこからプロが生まれる時代が来るんじゃないかと思ってました!
脇阪:今でこそ脇阪寿一を知ってもらえて、「チーム持たれないんですか」と聞かれることがあるんです。でも、僕は鈴木亜久里さんに育ててもらったんですけど、亜久里さんのところで何度クラッシュしたかを考えると…。
亜久里さんの口癖は「お前さえいなければ、俺は一番高いベンツがあと10数台あったんだぞ」でした。僕レベルがリアルレーシングチームのオーナーになるのは難しいと思うので、リアルのクラッシュ費用かかるほうは亜久里さんにお任せして、僕はeスポーツでレーシングチームをつくって若手育成をしていきたいです。
eスポーツならば、クラッシュしてもボタンひとつで車が直りますのでね(笑)。
高橋:F1チームはみんな、eスポーツのチームを傘下に収めてますよね。日本人でも、何人か雇いたいといわれているレベルのeスポーツプレーヤーがいるんですよね。
これからのモータースポーツ
子供たちの未来のためにもモータースポーツを発展させたいと話す脇阪氏
ピエール:昨年SUPER GTとDTM(ドイツツーリングカー選手権)の特別交流戦で、すごいレースを見させてもらいましたけど、そのDTMで残念なニュースがあって、2020年シーズンでアウディが撤退するという発表がありました。今後DTMとかクラス1の規定になったSUPER GTはどうなりますか?
※クラス1規定とは、2020年シーズンからSUPER GT運営サイドが、アジアとヨーロッパでマシンを同一仕様にして、参戦機会の増加や部品の共有化などを進め、グローバル化促進につなげようとする規定。
高橋:やっぱりなと思いました。現実問題、SUPER GTは日本国内では人気があるけど、DTMはどんどん人気が下がっていました。ドイツは特にガソリンエンジンが使えなくなってきていて、ガソリンエンジンからディーゼル、そのディーセルもダメになったときにEV。クラス1は長年かかってやっとレギュレーションができて、交流戦でDTMが日本にもきてくれたけど、やはり現実問題クラス1のイベントができたのは遅かった。
今でこそ、日本の自動車メーカーではGT500クラスの3社ががんばってるけど、この新型コロナの影響は大きいし、これからずっと続けられない部分は出てくると思う。そうなったときに自動車メーカーも商売があるから、撤退するときはするでしょうね。過去にそういう歴史もありましたけど、僕の年代でいうとオイルショックのときは大変だった。リーマンショックのときも影響はあったけど、オイルショックほどではなかった。オイルショックのときはプライベートチームががんばって、今の礎となるツーリングカーレースやグランチャンピオンシリーズをやった。グローバルなシリーズも必要だけども、今後、日本独自のシリーズを誕生させることはできるだろうと考えています。
ピエール:以前の全日本GT選手権やSUPER GTも、最初の頃は日本独自のルールで企画してましたよね。
可能性としては、帰化する方向もありますよね。
高橋:寿一がいったように、ネガティブに考えるのではなくポジティブに考えると、最初のスタートは隆盛を誇った、今のSUPER GTやスーパーフォーミュラみたいにはならないかもしれないけど、その中で産業として生き延びていくために、そしてそこに従事している人たちのために、仕事を広げていくことは必要だと思う。
脇阪:ヨーロッパとの違いで僕が感じていることですが、ヨーロッパにおいてレースは車を売るためのもので、車を売ることでその自動車産業が盛んになって、国を支えるんですよね。ドイツにおいても日本と同じように、自動車産業はすごく大きな産業。国の方針とともに自動車産業の方針が決まって、車を売るためのPRや技術開発のひとつとして「レース」がある。
日本のレースは趣味だったり、国の基盤であるような決め事とは離れたところでの「娯楽」としての位置づけなんですよね。DTMの撤退に関して、ヨーロッパにおける自動車産業のEV化など考えたら当然の流れだと思う。モータースポーツは他のメジャースポーツと肩を並べるレベルだと思うし、国の方針を理解しあって進むべく方向を決めていけたらいいのではないでしょうか。漠然とした思いだけでなく、きちんとビジョンをもってファンの皆さんと共に子供たちの未来のためにやって、そして、人々の生活になじむモータースポーツにしていきたいです。
WRCラリージャパンの開催は?
ピエール:愛知県からリモート出演しているんですが、愛知県に2020年WRC世界ラリー選手権 ラリージャパンがくるんです!言える範囲で寿一さんは開催をどう考えますか?
脇阪:コロナに関しては、未来のことは誰もわからないですよね。まずは終息させることです。でもやりたいですよね!勝田貴元を走らせたいですよ! ヨーロッパで参戦しながら、昨年はスポットで出てよい成績を出してるし。WRCってラリーの世界の頂点ですから、日本のメーカーと選手が世界に挑む姿は見たいですよね。
※勝田貴元:WRCにスポット参戦する将来有望な日本人ドライバー
高橋:WRCが日本にやってくるとしたら、北海道で開催されて以来です。
ピエール:新しいコアファンがくるのは、大きなチャンスですよね!
脇阪:WRCに関係ない人の家の前を、ラリーカーがあの迫力で走ったら、そこの家族全員モータースポーツを好きになりますよ。新たなファンを獲得するということを考えたら、本来サーキットに来なきゃいけないけど、その意味では、WRCを開催していただいて、どんどんモータースポーツファンになってもらいたい。
高橋:ラリージャパンのあとに、帯広に釣りに言った時、帯広の中心街の駐車場でラリージャパンのバッグを見た地元の人が「あんた、またラリーをやってくれ」といわれたんです。「帯広に還元できましたか?」と聞いたら「帯広は儲かった」と言っていました。地元に対する貢献と応援を、しているということだよね。日本のプロモーターに聞くと、コロナに関してはやはり心配しているよね。あとは現場でのインフラをどうするかと。地元の理解がもっと必要。昨年テストイベントやったら、問題がなかったわけではないようです。パン屋の方が「これからラリー車が来るから渡れません」といわれて、道路を渡れなかったことに怒っていた。細かいこともやってみないと、分からないですからね。
ピエール:おしまいにモータースポーツファンに向けてメッセージを!
高橋:日本は規制があるけど、まだ通常生活が出来ています。まずは医療関係者に感謝申し上げます。
近代モータースポーツが成り立って半世紀以上経ちましたが、文化としてどれだけ根付いたかという議論はあるけど、日本のモータースポーツは成り立っています。絶対復活、リスタートできますから、もう少し頑張っていきましょう。コロナウィルスを拡散しない努力をしながら、明るい未来を信じて、よりよい日本のモータースポーツモデルを考えていきましょう。
脇阪:まずは皆さんの命あってです。しっかり健康管理していただいて、コロナに勝ちましょう。
そして、医療従事者の方々と私たちの生活を支えていただくために、働いてくださっている方に感謝申し上げます。ファンの皆様には、終息したらもっともっと喜んでいただけるように頑張ります!
そして、モータースポーツ関係者の皆様、明けない夜は無いと思いますので、頑張りましょう!
大変な時はそれぞれ連絡しあって、乗り越えましょう!
文:J SPORTS 杉山友輝
杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)
若手のADを見るとすぐに「メシくってるか?」という昭和臭いプロデューサー。担当競技は卓球・ラリー・ゴルフ。毎日自らで作ったカスピ海ヨーグルトを食べるのが健康法。ニックネームはスギP。
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