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モーター スポーツ コラム 2019年11月7日

この人達が居なければ、レースはできない

今日も今日とてプッシュ&ルーズ by 高橋 二朗
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今シーズンのスーパーGTもドラマチックな展開の末に幕を閉じましたね。 GT500クラスではルマンチームが17年ぶりの栄冠。監督の脇阪寿一氏が自らチャンピオンを獲得した2002年以来というものでした。めでたし、めでたし。

シーズンエンドのセレモニーが行われているその裏でオフィシャルの皆さんが粛々と終業している様を見ました。

どんなに素晴らしいレーシングカーだったとしてもタイヤが無かったら走行することができないのと同じで、どんなに素晴らしいシリーズだって、どんなに素晴らしいドライバーとチームがいたって、どんなにきちんと規則が決められていても、オフィシャルさん達が居なかったらその規則に従ってレースをスタートさせることもできないし、ゴールまでレースを安全に運営することもできない。実はオフィシャルさんの存在が自動車レースでは一番重要なのですね。しかし、そのオフィシャルさん達の存在がクローズアップすることはごく稀です。コースサイドのオブザベーションポストに居るオフィシャルさんは、走行中のドライバーに対して、その先でアクシデントが起こっている場合、注意を喚起する黄色の旗を提示。速度の速い車両が追い越しをかける状況では青色の旗を、スロー走行車両や緊急車両がコース上にいる場合は白い旗を提示して知らせる。マシンがコースオフした際に迅速な車両排除やドライバーの救助、コースの安全確保などなどを行って、レースの運営にできる限り支障がないようにしてくれます。グリッドウォークやピットウォークのスケジュール管理は、予定の時間通りにスケジュールが進行できるようにとても重要です。テレビの、それもライブ中継では、スケジュールが予定通りに進んでくれないと大変なことになります。テレビの中継は、秒単位で進行してゆきます。オフィシャルさんの場内整理業務は、秒単位とは行かないまでも、分単位でスケジュールがずれないように管理していただいています。そしてコントロールタワー内の計時、スタートからゴールまで競技中に起こったアクシデントに対する判定、審議を審査委員会に提出する作業など、全く気を緩めることなど一瞬たりとも許されない状況が連続しているのですね。

最終戦でもGT500クラスの2位を争っていた2台が接触しながらコース外、グラベルベッドに出てしまい、そこで順位が入れ替わるという展開がありました。このような事が起きると、タイミングモニターに【判定中】という表示が出て、コースサイドにあるコース管制カメラや、中継映像も参考にしてどちらかがペナルティの対象となる行為をしていなかったかをチェック。今回チャンピオンの行方を決したその接触は、【レーシングアクシデント】。つまり、順位を争う中で他方を妨害するような行為ではなく、レース中に起こり得る状況だったと判定されたのです。その判定に対して異議を申し立てるものはありませんでした。正しい審判が行われたと誰もが納得したのです。多くの車両が走行するスーパーGTレースは、アクシデント処理のためにセイフティカーがコースインして、一旦競技を中断することが多いのですが、今年の最終戦は、一回もセイフティカーが導入されないクリーンなレースで幕を閉じました。その陰にはオフィシャルさん達の尽力があってこそなのです。そして、オフィシャルさん達はモータースポーツをこよなく愛する人達でもあります。

文:高橋 二朗

高橋 二朗

高橋 二朗

日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。

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