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「おのれ、裏をかきおったな!」
時代劇で聞いたことのあるセリフですね。
裏をかくということは悪いことなのでしょうか?
いいえ、それは素晴らしいことです。一般の社会生活ではあまり良いイメージではないようですが、モータースポーツでは素晴らしい作戦なのです。
先週末のスーパーフォーミュラ第6戦、岡山国際サーキットで行われた決勝レースにおいて、タイヤの運用レギュレーションが一部変更されました。ご存知のように現在の同シリーズでは、2種類のタイヤ、ミディアムとソフトをレース中に必ず両方使わなくてはならないこととなっています。
そして、第6戦において新たに【タイヤ交換義務は、先頭車両が 10周回目の第1セーフティカーラインを交差した時点から、先頭車両が最終周回に入るまでに完了していなければなりません】 となっていました。
スタートして1周目が終わろうとしていた時に1台のマシンがピットロードへ滑り込んできた。カーナンバー18、9番手スタートの小林可夢偉選手。何かのトラブルなのか、それとも!?。そう、彼は、皆が注目する中でタイヤ交換をしたのです。えっ、10周までタイヤ交換はしてはいけないのでは!?そうです、いけません。しかし、彼が行ったのはタイヤ交換義務のアクションではなくて、単なるタイヤ交換。ミディアムタイヤでスタートしてソフトタイヤへ交換。この時点で彼はレギュレーション上、二種類のタイヤを使用したこととはなっていなかったのですが、ソフトタイヤで集団から離れた場所で快調なペースで走行できたのです。そして、もう一度彼は51周してピットイン。再度ソフトタイヤに交換して義務を果たした。これによって6位へ順位アップを果たし、なおも順位アップを狙ってと他車よりも周回数の少ないパフォーマスの高いタイヤで最終盤にペースアップして行った。
最終的に彼は他車と接触して、コース上にストップしてしまってゴールラインを切ることはできなかった。
小林選手は、2ピットストップ作戦を行って、新レギュレーションにあるタイヤ交換義務を10周以上経過してちゃんと行っていました。
実は、いくつかのチームは同じような2ピットストップ作戦を考えていました。しかし、実際に挙行したのは1台でした。変則的な2ピットしトップは、カーナンバー1の山本尚貴選手がセイフティカー導入中に10周してソフトからミディアムへ、そしてセイフティカーランがあけると同時に再びピットインしてソフトへという作戦で見事に16番手スタートから7位フィニッシュを果たしています。
小林選手とチームは、見事に裏をかいた。いやレギュレーションを読み込んで、その隙間を突いた作戦を考えたのでした。裏をかかれた相手は、恥をかいたのでしょうか?チャンチャン。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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