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モーター スポーツ コラム 2019年8月8日

SUPER GT第5戦レビュー

SUPER GT by 秦 直之
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展開にも恵まれたWAKO’S 4CR LC500が、富士で連勝飾る

SUPER GT第5戦

SUPER GTはタイから再び舞台を日本に戻し、富士スピードウェイでシリーズ第5戦が開催された。今大会の特徴は500マイル、約800kmと現在のSUPER GTでは最長のレースであること。ドライバー交代を伴うピットストップも4回義務づけられ、高得点が可能なレースともあって、シリーズ最大の山場となることは間違いない。
予選、決勝ともタイに勝るとも劣らぬ猛暑の中での走行となり、そこにはさまざまなドラマが……。そして、セーフティカーとともに現れた「勝利の女神」を味方につけて、2連勝を遂げたのはWAKO’S 4CR LC500の大嶋和也/山下健太組! ランキングトップをキープしたばかりか、マージンを16ポイントにまで広げることとなった。

49kgものハンデ背負ってなお、MOTUL AUTECH GT-Rが今季3度目のPP奪う

SUPER GT第5戦

前回のタイに引き続き、暑い戦いとなるのは容易に想像できた富士での第5戦。500マイルもの長さもあって、決勝レースは波乱の展開になることが多く、たとえウエイトハンデに苦しんでいても、強いチームが底力を見せる可能性は、十分にあると予想されたが、こと予選に関しては重さを苦にしないチームが上位に来ると思われていた。だが、そんな予想は完全に覆された。

ポールポジションを獲得したのは、49kgものウエイトハンデを背負っていたMOTUL AUTECH GT-Rの松田次生/ロニー・クインタレッリ組だった。Q1で松田がトップを奪い、続けて挑んだQ2でもクインタレッリはトップを譲らなかった。「走り出しからクルマのバランスは良く、Q1では次生がポテンシャルを引き出して、いいタイムをマークしてくれた。僕も完璧なラップを決めなければ、と。1コーナーから攻めていくことができ、ミスなく最後まで走れた。いいアタックだったと思う。シーズンで3回ポールは記録だと思うし、すごく嬉しい」とクインタレッリ。

2番手にはCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平/フレデリック・マコヴィッキィ組が、そしてWedsSport ADVAN LC500の国本雄資/坪井翔組が3番手につけ、このあたりはまさに軽さが活きた格好ではあった。しかしながら、61kg相当のハンデを背負って、ZENT CERUMO LC500の立川祐路/石浦宏明組が4番手につけたのは、さすが「富士の獣道」を知る立川たるゆえんか。

その一方で、70kg相当のハンデを背負った、WAKO’S 4CR LC500の大嶋和也/山下健太組は、Q1突破も許されず11番手に。が、これが順当といったところだろう。  GT300では佐藤公哉とともにHOPPY 86 MCを駆る、松井孝允の3戦連続ポールポジションに期待がかかったものの、100分の8秒差で快挙を逃す。が、松井はアタック中にブレーキラインに亀裂が入るというアクシデントにも見舞われていたから、大事に至らず……というのが悔しさ以上の思いだったはずだ。

初めてのポールを奪ったのは、埼玉トヨペットGBマークX MCの脇阪薫一/吉田広樹組。脇阪が担当したQ1でメーターディスプレイが機能せず、一切の情報から遮断された状態だったため16番手でのギリギリ通過から、吉田が奮起した。「正直、同じトラブルが僕の時、発生していたら、まともに走ることさえできなかったと思います。Q1を突破してくれた薫一さんには感謝の思いしかないし、本来富士は苦手なはずのクルマを、チームが細かく詰めてくれた結果、ポールポジションにつながったんだと思います」と吉田。

HOPPY 86 MCに続く3番手は、RUNUP RIVAUX GT-Rの青木孝行/田中篤/柴田優作組。ノーハンデで挑むことから、今回の台風の目となりそうな予感。一方、ランキングトップにつけるARTA NSX GT3の高木真一/福住仁嶺組は、11番手から決勝に挑むこととなった。

序盤は安定の速さを見せたMOTUL AUTECH GT-Rだったが……

SUPER GT第5戦

決勝レースの行われる日曜日は、より暑さが厳しくなって、スタート直前の気温は33度に、そして路面温度に至っては51度にまで到達。つまり前回よりも厳しい条件となっていたわけだ。長い戦いは、まずはMOTUL AUTECH GT-Rのクインタレッリのホールショットから始まった。これを追いかけたのは、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rのマコヴィッキィ。ミシュランを履く2台のGT-Rが予選どおりの速さを、まずは見せる。

3番手につけていたWedsSport ADVAN LC500が26周目に、早くもピットイン。4ピットの義務づけということは5スティントを要するということで、本来なら30数周は走りたいところ。しかし、タイヤは4本とも交換されたが、ドライバーは坪井のままということで、これはあらかじめ想定された作戦のよう。厳しい戦いであることが、これで改めて明らかになる。

トップを行くMOTUL AUTECH GT-Rの、最初のピットストップは35周目。松田に交代するも、ピットでは準備が整っておらず。ここでややロスを抱えてしまった感も。それから2周後にCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rがピットに入り、平手に交代。それでもMOTUL AUTECH GT-Rの前に出ることはできなかった。その後も引き続き松田はトップを走行。

トップが入れ替わったのは63周目。ダンロップコーナーで松田がGT300車両と軽く接触し、失速したところを平手が見逃さなかったのだ。ハンデの違いからか、タイヤが厳しくなっているのは明らかで、徐々に差は広がっていく。たまらずMOTUL AUTECH GT-Rは70周目にピットイン。

そんな中、3番手を走行していたZENT CERUMO LC500が、石浦から立川に代わったばかりの72周目、100Rでクラッシュ! 立川に怪我がなかったのは何よりだった。その次の周、CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rはピットインし、マコヴィッキィに代わるも、クインタレッリは真後ろ。300Rで再逆転に成功する。74周目からはセーフティカー(SC)がコースイン。80周目にバトル再開するが、その直後のダンロップコーナーでマコヴィッキィには接触があり、大きく順位を落とすこととなる。

なおもトップを行くMOTUL AUTECH GT-Rは、まさに好調そのもの。その後ろではau TOM’S LC500の中嶋一貴とWAKO’S 4CR LC500の山下が、激しいバトルを繰り広げていたこともあって、より安泰なものとしていた。その2番手争いだが、102周目の13コーナーで中嶋はGT300車両と接触し、左フロントの足回りにダメージを負ってしまう。なんとかピットには戻れたものの、修復不可能ということでリタイアを余儀なくされる。

2回目のSCランで展開が一気に動く! そしてトップに立ったのは……

SUPER GT第5戦

それから間もなくの106周目、3番手に上がったばかりのリアライズコーポレーションADVAN GT-Rが白煙を吹き上げ、ピットロード入口脇でストップ。ヤン・マーデンボロー選手が降りた直後に出火し、2度目のSCが導入されることに。そのSCボードの提示とほぼタイミングを同じくして、WAKO’S 4CR LC500がピットイン。本来ならSCラン中はピットロードが閉鎖されるため、タイミングがタイミングならペナルティの対象になる。入ってきた山下は予定どおりだったというが、「審議中ということで、一瞬やばいかも」と思ったとか。だが、後にギリギリセーフとの裁定が。これでWAKO’S 4CR LC500が、一気に有利になった。

実際、112周目にSCラン終了となり、MOTUL AUTECH GT-Rを含みライバルのほとんどがピットに入ってくるが、混乱を避けて1周ステイしたのがRAYBRIG NSX GT。ロスを最小限にできたことが功を奏して2番手に浮上するが、WAKO’S 4CR LC500の大嶋とジェンソン・バトンの差は、実に1分18秒にも広がっていた。

一方、いったんはWedsSport ADVAN LC500の先行を許していた、MOTUL AUTECH GT-Rだったが、126周目のWedsSport ADVAN LC500のピットで3番手に返り咲くことに。トップ浮上は難しいにせよ、そのトップがWAKO’S LC500であること、そしてチャンピオンシップを考えると、もうひとつ順位を上げたいところ。

144周目、WAKO’S 4CR LC500は最後のピットストップを行い、MOTUL AUTECH GT-Rのピットストップはその次の周。2周後の146周目にはRAYBRIG NSX-GTも。WAKO’S 4CR LC500のメカニックたちは慎重に作業を行っても、わずかに差を詰められただけ。一方で山下の走りも慎重そのもの。むしろ詰まっていたのは、山本尚貴とクインタレッリとの差。何度も揺さぶりをかけていたクインタレッリだったが、山本のガードも鉄壁。ストレートスピードに勝ることもあって、ゴール間際にはむしろ引き離すこととなっていた。

2回のSCランがあったことで、レース全体のアベレージが下がったこともあり、規定時間を超えてしまったことから、当初予定の177周まで達せず、175周目でチェッカーが振られることとなったが、それでもWAKO’S 4CR LC500は31秒差の圧勝で2連勝を飾った。

「前回勝ったことでウエイトハンデがきつくなり、『予選はビリかな』ぐらいの気持ちで富士には入ってきて、とにかく1ポイントでも多く取って終わろうと。いざ走り出してみたら、思いの外クルマは速くて、フィーリングは悪くなかったんで上位も行けるかなと思っていました。無理しすぎず、淡々と走っていたら、いつの間にか上位に来ていて、ピットに入ろうとした周にSCが入るというタイミングの良さもあって、連勝することができました」と大嶋。「次ももっと厳しくなると思いますが、できるだけポイントを獲ってチャンピオンを目指したいと思います」と山下。

奇襲作戦大成功! GT300はT-DASHランボルギーニGT3が優勝飾る

SUPER GT第5戦

GT300でオープニングラップのうちにトップに立ったのは、RUNUP RIVAUX NSX GT3の青木。エンジンパフォーマンスに優れることを武器に、1コーナーでまずHOPPY 86 MCの松井をかわし、ダンロップコーナーでは埼玉トヨペットGBマークX MCの吉田をかわす。青木についていけたのは松井だけで、しばらくの間は激しい一騎討ちを演じていた。だが、青木は柔らかめのタイヤを選んでいたこともあり、やがてペースが鈍り始め、12周目の1コーナーで松井がトップに浮上。18周目には吉田も青木を抜いて2番手に浮上する。

いったんは4秒近い差をつけられていた埼玉トヨペットGBマークX MCながら、徐々に差を詰めていき、34周目のダンロップコーナーで逆転。その次の周にHOPPY 86 MCはピットに入り、佐藤に交代するとともに左側2本のタイヤのみ交換。35周目には吉田と脇阪が交代するが、こちらは無交換とあって、埼玉トヨペットGBマークX MCは前に出ることに成功する。

その2台がピットに入った後、代わってトップを走っていたのは予選13番手だったT-DASHランボルギーニGT3のアンドレ・クート。このチームはいきなり奇襲作戦に討って出る。39周目に藤波清斗と変わるのだが、次のピットはなんと次の周の40周目! もちろん高橋翼に交代して、早々と規定のピットストップを2回も終えてしまったのだ。これもタイヤのライフと燃費に自信があるからで、しかもロスを最小限とすることとなった。これで大きく順位を落とすも、この後じわりじわりと順位を上げていく。

SUPER GT第5戦

一方、トップには埼玉トヨペットGBマークX MCの脇阪が立ち、HOPPY 86 MCの佐藤は追いかけていくも、接近するまでには至らず。66周目に吉田と代わり、ここでようやくタイヤを交換した埼玉トヨペットGBマークX MC。その直後に最初のSCランがあり、終了直後の74周目にHOPPY 86 MCもピットに入り、右側2本のタイヤのみ並べられていたが、なんとエアジャッキのノズルが損傷する不運が。これで埼玉トヨペットGBマークX MCが、大幅に有利になったと思われた。

2番手にまで浮上していたT-DASHランボルギーニGT3の、3回目のピットは84周目で藤波が再び乗り込むことに。98周目から5周にわたり、2回目のSCランがあって間隔が詰まったことも、彼らにとっての福音となる。108周目、埼玉トヨペットGBマークX MCは、再び脇阪が乗りこみ、その直前に接触があったことから左リヤのタイヤのみ交換してコースに戻ると、T-DASHランボルギーニGT3は、ほぼ1分先行。それぞれ最後のピットストップ後の動向に注目された。

T-DASHランボルギーニGT3は125周目にクートに交代するとともに、タイヤは4本ともに交換。対して埼玉トヨペットGBマークX MCは、またも無交換で吉田を129周目にコースへと、送り出すも差は40秒ほど詰まるに留まる。もちろん、その後のT-DASHランボルギーニGT3はまったく危なげない走りで逃げ切ったのに対し、埼玉トヨペットGBマークX MCにはゴール間際になって、Modulo KENWOOD NSX GT3が迫ってくる。

予選は8番手で、序盤は控えめのペースで走行していたものの、中盤になって路面温度が下がり始めると一気にペースを上げてきたのだ。145周目には大津弘樹がUPGARAGE NSX GT3の小林崇志を抜いて3番手に上がり、最後は2秒差にまで接近。だが、時間フィニッシュとなったため、Modulo KENWOOD NSX GT3はあと一歩のところで逆転は果たせず。それでも大津は、道上龍とともに久々の表彰台に立つこととなった。

T-DASHランボルギーニGT3ことJLOCの87号車にとっては、これが嬉しい初優勝。若手の高橋、藤波にとっても初めての優勝となった。「まずチームにおめでとうと言いたい。パーフェクトな戦略だったと思う。ロングランでもバランスが良く、いいペースで走れることが分かっていたけど、ドライバーのみんなでいいマネージメントができたと思う。全員でベストを尽くせたんじゃないかな」とクート。

なお、レース序盤を盛り上げたRUNUP RIVAUX GT-Rは、ピット作業違反のペナルティで遅れを取り、さらに駆動系のトラブルに見舞われたこともあって、完走を果たすのみに。また、HOPPY 86 MCも必死に粘りの走りを見せていたが、終盤にバックマーカーのスピンに巻き込まれ、足回りにダメージを負ってリタイアを喫している。ランキングトップはARTA NSX GT3の高木と福住が6位でフィニッシュしたこともあり、引き続きキープしている。

文:秦 直之

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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