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ルマン24時間レースから帰国。翌日にトヨタ自動車さんが開いてくれた「TOYOTA GAZOO Racing WEC 2018-2019年シーズン報告会」へ行ってきました。
テレビで観戦していただいた方は、ご存知でしょうが、7号車がスタートから23時間をトップで走行して、今年は7号車が勝つと思っていた方も多かったことでしょう。しかし、ルーティンではない度重なるピットインによってトップが入れ替わり、終わってみれば、17秒弱の差で8号車が連覇。WECのチャンピオンに輝いた。中嶋一貴選手は、日本人初のサーキットレースにおけるチャンピオンとなった。
取材メモによると、ルーティンのピットインを終えたばかりなのに、6月16日15:56に再び7号車がピットインして右のフロントタイヤを交換してレースに復帰。しかし、すぐにスロー走行となった。7号車に一体何が起こっていたのか?レース後に現地では、タイヤ内圧のセンサーのトラブルによって何度もピットインせざるを得なかったと知らされていました。しかし、それならなぜ最初は右のフロントタイヤ1本だけを交換し、翌周再びピットインさせて4本全てのタイヤを交換したのか。最初は、右フロントタイヤの内圧異常(内圧低下)を検知したので、そのタイヤを交換。しかし、交換したのに異常を知らせる状況は続いた。一体どこのタイヤ内圧の異常を示しているのかチームは分からず混乱。再度ピットインさせて4本を交換することで問題を打開することしかできなかった。14:02に4本のタイヤ交換を行うべくピットイン。レースに復帰したコース上でトップが入れ替わった。
レース後にチェックしてみると実は内圧異常だったのは、右のフロントタイヤではなくて右のリヤタイヤだったのでした。
7号車は、第1予選で他車と接触したことでモノコックを交換。通常は数日かかるモノコック交換の作業を20時間足らずで行い、作業が完全に終わってエンジンの暖気を行なったのは、なんと第2予選が始まる3分前だったのです。作業の中でホイール内の内圧センサからの信号を受ける車体側のセンサーの配線を差し込む位置を右のフロントとリヤで入れ間違っていたのでした。
報告会でGRパワートレイン推進部 加地雅哉部長が「今回のトラブルは偶然に起きたのではなく、必然的に起きたものです」とコメントした。たまたま。23時間を過ぎるまでタイヤの内圧は正常に推移したけれど、約1時間を残してコース上の破片か何かを踏んでしまい、空気が抜けてセンサーが異常を検知。配線ミスで実際は右リヤタイヤの内圧低下だったのに右フロントタイヤが表示された。これは、短時間にモノコック交換を行なったことで起きた人為的ミスだった。たった一つの配線ミスが世界中が注目するルマン24レースの優勝を逃すという代償はあまりにも大きかった。
文:高橋 二郎
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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