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SUPER GTは鈴鹿サーキットが舞台の3戦目にして、ついにドライコンディションに恵まれることとなった。だが、やや恵まれすぎた感も……。5月とは思えぬ猛暑に見舞われ、特に予選の行われた土曜日は想定外だった、という声も多く聞かれた。それでも、決勝の行われた日曜日もそのままの暑さだったら、また違った展開になっていたかもしれない。上空には薄雲がかかるようになり、温度が下がってしまったのだ。それにより、選んでいたタイヤがレンジを外れてしまったとも。いい意味でドラマチックな一戦にもなっていた。
今いちばん勢いに乗る男、関口雄飛のau TOM’S LC500がPP獲得
GT500のQ1トップは、ARTA NSX-GTの野尻智紀。ここ2戦の調子であれば、Q2で伊沢拓也が逃げ切るかと思われたものの、そうも簡単には行かず。まずトップに立ったのはKeePer TOM’S LC500の平川亮で、これに続いたのが伊沢。だが、終了間際になってau TOM’S LC500の関口雄飛が逆転を果たし、2016年第7戦・タイ以来となる自身2回目のポールポジションを獲得する。ちなみにTOM’Sのフロントロー独占は、1999年の第5戦・富士以来となる。
自らは6番手でQ1を突破後、ピットで関口の走りを見守っていた中嶋一貴は、「しびれました!」とパートナーを手放しで絶賛。加えて、「僕の役割はQ1を通過することでしたが、ちょっと安全に行きすぎたので」とも語った。一方、関口は「先週スーパーフォーミュラでも勝てて、好調さを維持できて良かった。でも、GTでは開幕戦がハーフポイントになって僕は頑張れず、第2戦もトラブルでリタイアしているので、ランキングはほぼビリなんですね。スーパーフォーミュラと一緒で、ここで一発決めないと、チャンピオンシップが厳しくなるので。予選の走りは最後まで100%の状態で行けました!」と満面の笑みを浮かべ、そう語っていた。
ここまで2戦連続ポールで、決勝も連続2位。ランキングトップにつけるMOTUL AUTECH GT-Rは、さすがに49kgのウエイトハンデを背負っては、松田次生をしても10番手につけるのがやっと。確実にポイントを稼ぐ作戦に、早くも切り替えざるを得ず。
GT300では、ADVICSマッハ車検MC86マッハ号の坂口夏月がQ1のトップ。続くQ2では平木湧也がコンマ3秒の短縮を果たすも、佐藤公哉からバトンを託された、HOPPY 86 MCの松井孝允の逆転を許し、さらに終盤にはK-tune’s RC F GT300の阪口晴南にも割って入られてしまう。4番手にもSUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝がつけており、前評判どおりJAF-GT勢が上位を占め、さらに昨年も新田守男が優勝を飾っているK-tune’s RC F GT3が、変わらぬ速さを見せつけたといった感じだ。
「今回は大幅に持ち込みのセットを変えて、どちらかというと決勝に自信のあるセットだっただけに、ポールポジションが獲れて嬉しい。佐藤選手から計測2周目がいちばんタイム出ると伝えられ、僕は3周だと思っていたから、ズレをアドバイスで修正できたのも良かったですね」と松井。
au TOM’S LC500が一度もトップを譲らず、完全勝利を飾る!
今年初めて県警のパトカー、白バイによるパレードランが行われた決勝レース。というのも、前2戦はいずれも雨に見舞われ、セーフティカー(SC)スタートとなっていたからだ。上空には若干の雲が残るも、雨の心配はないという。ようやく終始ドライコンディションでの戦いとなりそうだ。
その決勝レースのスタートを決めたのは、au TOM’S LC500の中嶋で、続いたのはKeePer TOM’S LC500の平川。この2台がまずは逃げる格好でレースは開始された。その後方にはARTA NSX-GTの伊沢が、そしてカルソニックIMPUL GT-Rのジェームス・ロシターとWAKO’S 4CR LC500の山下健太が争いながら続いていく。
4番手が入れ替わったのは、6周目のストレート。シケインでのロシターのミスを、山下が見逃してはくれなかった。この2台はGT300車両の処理に手間取った伊沢を7周目にかわして、それぞれひとつずつポジションを上げてもいた。山下はやがてロシターとの差を広げるようになり、TOM’Sの2台にも迫っていくように。18周目に入ると、山下は平川の背後にまでつけるようになっていた。
19周目にSCがコースイン。10番手を走っていたMOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリが、130Rでクラッシュしていたからだ。幸い、クインタレッリに怪我はなく、「フロントの右タイヤがバーストして、コントロールを失ってしまった」ことが明らかになる。
一方、これで3秒以上あったリードを失った中嶋ながら、23周目のリスタートを完璧に決め、後続を寄せつけず。24周目にはトップのau TOM’S LC500と3番手のWAKO’S 4CR LC500が同時にピットイン。関口は大嶋和也の前でコースに戻ることとなる。「今まででいちばんいいアウトラップができた」と関口。
その1周後にKeePer TOM’S LC500がニック・キャシディに交代。関口の前でコースに戻ったものの、直後の2コーナーで姿勢を乱して先行を許し、S字では大嶋にも抜かれてしまう。タイヤが温まっていないと、それほど厳しいのかを改めて感じさせる一幕でもあった。だが、28周目には関口の背後に大嶋とキャシディが急接近。激しいトップ争いは、レースのハイライトともなった。まずは30周目のシケインで、キャシディが大嶋をかわして2番手に浮上。そのキャシディは続いて関口にも迫ったが、32周目にキャシディは大嶋に再び抜かれてしまう。130Rでオーバーランがあって、失速していたのが原因だ。
K-tune’s RC F GT3が鈴鹿で2連勝、新田が最多勝記録をまたも更新
GT300はHOPPY 86 MCの佐藤が1コーナーへのホールショットを決め、これにK-tune’s RC F GT3の新田が続いた一方で、ADVICSマッハ車検MC86マッハ号の平木は1周目だけで5番手に、そして次の周にはもう1台に抜かれていた。だが、これは想定の範ちゅう。「あらかじめタイヤ無交換の予定だったので、タイヤの内圧を低めにしていたのと、『無理しなくていいよ』と言われていたから」と平木。15周目のS字では、ひとつ順位を上げていた。
なんとか逃げたい佐藤に続いていたのは、K-tune’s RC F GT3の新田、そしてSUBARU BRZ R&D SPORTの山内だ。後続を引き離し、それぞれ見える距離でのバトルを繰り広げる。そんな中、GT300では18周目からSCランが。レースは1/3を過ぎており、本来ならばピットに戻っていいタイミングながら、規定により認められず。SCラン明けの21周目、HOPPY 86 MC、ADVICSマッハ車検MC86マッハ号が同時にピットイン。
それぞれ松井、坂口に交代し、タイヤは無交換。24周目にK-tune’s RC F GT3が阪口に交代し、タイヤを4本換えてなお、30周目にはこの2台の間に割って入ることに成功する。その前の25周目にはSUBARU BRZ R&D SPORTも井口卓人に交代し、こちらはリヤの2本だけを交換。
大量のリードを築いていたこともあり、難なく逃げ切りを果たすと思われていたHOPPY 86 MCながら、どうにも松井のペースが上がらない。徐々にK-tune’s RC F GT3の阪口が差を詰めていき、42周目の1コーナーでこそ逆転を許さなかった松井ながら、ついに堪えきれずデグナーの進入で逆転を許す。阪口が一時は20秒近くあった差を詰めた格好だ。
一方、44周目の2コーナーでADVICSマッハ車検MC86マッハ号の坂口が、GT500車両に追突されてスピン。その直後にSUBARU BRZ R&D SPORTの井口に交わされてしまう。だが、次の周の1コーナーで坂口は最逆転に成功。まだまだ余力は残していたようで、そのまま松井にも迫っていく。
最終ラップには松井と坂口、そして井口がついに縦一列に。実はHOPPY 86 MCは直前からガス欠症状に見舞われており、松井がだましだまし走っていたのだが、決定的な症状が最後の最後のシケインで発生してしまう。完全に失速した状態の中、脇を坂口と井口のみならず、グッドスマイル初音ミクAMGの谷口信輝にもかわされてしまう。なんとかARTA NSX-GTの高木真一には抜かれずに済んで5位でのフィニッシュとなったが、ゴールラインがあと数10cm先だったら、どうなっていたことか……。
その一方で、新田と阪口のK-tune’s RC F GT3は、難なく逃げ切り成功。23秒もの大差をつけ、開幕戦以来の勝利を獲得してランキングのトップにも浮上する。新田は自身の持つGT300の最多勝記録を、22勝にまで伸ばすこととなった。「岡山では僕ひとりで勝ったので、こうやって今回は晴南と一緒に走って勝てて本当に嬉しい」と新田。そして阪口は「今はいい疲労感と達成感を感じています。タイヤ戦術は正解じゃないかと。徐々に差は詰まっていったんですが、『追いついたらスパッと抜け』という(影山正彦)監督の教えを守って。トップに立ってからはクルマをゴールまで運ぶことに専念できました」と語っていた。
2位のADVICSマッハ車検MC86マッハ号の坂口と平木は、これが初めての表彰台。チームにとっても、久々の大量得点となっていた。
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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