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山本尚貴とともに、ジェンソン・バトンがSUPER GTで初優勝飾る!
SUPER GT第6戦が9月15~16日に、スポーツランドSUGOで開催された。そのSUGOでのレースは、例年ほとんどがシリーズ第4戦として初夏に行われており、コンディションの違いもさることながら、積んでいるウエイトハンデが圧倒的に違うため、ランキング上位陣には苦戦が強いられるものと予想された。GT300では、まさにそのような展開となったものの、GT500に関しては予想が完全に覆された。まさか80kg相当のウエイトハンデを課せられた、RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組が、ポール・トゥ・ウィンを達成しようとは!
ウエイトハンデの厳しさはねのけ、RAYBRIG NSX-GTがポールポジションを獲得
最初の走行となった公式練習は、スタートからしばらくはドライコンディションが保たれていたが、1時間近く経過したところから雨が降り出し、路面を瞬く間に濡らしてしまう。そのため、一度もドライタイヤで走らぬまま、予選に挑まざるを得なかったドライバーも少なくなかった。
RAYBRIG NSX-GTをドライブするジェンソン・バトンも、そのひとり。まして彼にはテストでのSUGO走行経験はあったものの、レース経験は皆無。その上、80kg相当のウエイトハンデを課せられ、実際には燃料リストリクターを2ランク絞られ、46kgもウエイトを積んでいるのだ。さらに直前にはNSX-GT全車に性能調整として10kg追加が通告されていたから、むしろ絶望的な気分で臨んでいたはずだ。
しかし、そんな状況をバトンは、一切打破していた。Q1で3番手につけたからだ。これにはパートナーの山本尚貴も驚きを隠せず。「僕らより軽いクルマは何台もいるし、Q1を通れないんじゃないかと思っていたぐらい。しかも、予選までJB(バトン)は、一度もドライでニュータイヤを履いていないのに、Q1を突破してくれたから、良くも悪くもすごいプレッシャーで。絶対に3番手以上でなくては!」と後に語る。そして、そのプレッシャーをはねのけ、山本はトップタイムをマークし、ポールポジションを獲得する。
「ナオキなら、やってくれると信じていたよ! 僕自身の走りには満足しているけれど、それ以上にナオキには『おめでとう』と言いたいし、感謝している。確かにクルマは重たくなっていたが、クルマとコースの相性はすごくいいんだろうね」とバトン。ただ、こうもつけ加えていた。「予選一発のアタックは、ふたりともすごく良かった。けれど、明日のレースとは話が別だ。もちろん、この順位をキープしたいけどね」と。
2番手にはカルソニックIMPUL GT-Rの佐々木大樹/ヤン・マーデンボロー組がつけ、そして3番手のARTA NSX-GTの野尻智紀/伊沢拓也組を筆頭に、NSX-GT勢が5番手までを占める中、LC500勢はWedsSport ADVAN LC500の国本雄資/山下健太組の6番手が最上位。燃料リストリクターが唯一3ランク絞られている、ポイントリーダーでもあるKeePer TOM’S LC500の平川亮/ニック・キャシディ組は、あと一歩のところでQ1突破を許されず、9番手に甘んじていた。
GT300ではSUBARU BRZ R&D SPORTがポールを奪う
GT300の予選Q1は、初めて2組に分けられて行われた。A組のトップはSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人が獲得し、2番手はGULF NAC PORSCHE 911の石川京侍。このあたりはウエイトハンデに苦しんでおらず、順当なところ。B組トップである、Hitotsuyama Audi R8 LMSのリチャード・ライアンもそう。3番手につけたGAINER TANAX triple a GT-Rの星野一樹も、また然りであった。ところが、2番手は90kgを積んでいる、TOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨宏紀だったことには驚きを隠せず。GT500のNSX-GT同様、このコースにはよほどミッドシップが合うのだろう……という結論しか出し得ない。
続くQ2でもSUBARU BRZ R&D SPORTは、山内英輝がトップタイムをマークしてポールポジションを獲得。しかも、2番手にコンマ7秒の差をつけた。「スバルに入って4年目、やっとポールポジションが獲れました。SUGOはF3の頃から自信を持って走れるサーキット。僕も頑張りましたが、つないでくれた井口選手、素晴らしいクルマに仕上げてくれたチーム、ダンロップのタイヤ、そして懲りずに応援してくれているスバルファンみんなのおかげです!」と山内。
2番手は70kgを積み、坪井翔とともにHOPPY 86 MCを駆る、松井孝允が獲得。定評のある一発の速さが、重さを上回った格好だ。なお、ランキング上位陣ではGAINER TANAX GT-Rの平中克幸が7番手、グッドスマイル初音ミクAMGの片岡龍也が8番手、そしてTOYOTA PRIUS apr GTの平手晃平が12番手で、LEON CVSTOS AMGの黒澤治樹が14番手。このあたりは少しでも多くのポイントを稼ぎたいところだ。
3番手はGULF NAC PORSCHE 911の久保凛太郎が、4番手は坂口夏月とともにマッハ車検MC86 Y’s distractionを駆る平木湧也が、そして5番手はGAINER TANAX triple a GT-Rの吉田広樹が獲得。また、優勝候補の一台とされた、Hitotsuyama Audi R8 LMSの富田竜一郎が6番手につけ、ウエイトハンデに苦しんでいない、このあたりのチームがレースを面白くしてくれそうだ。
一時はトップにも立ったカルソニックIMPUL GT-Rだったものの……
予選の行われた土曜日は、気まぐれな天候に少々翻弄された感もあったが、日曜日のSUGOはまさに秋晴れ。爽やかなコンディションとも相まって、スタンドには28,500人もの観衆が詰め寄せていた。
81周で争われる決勝レースで、1コーナーへのホールショットを決めたのは、RAYBRIG NSX-GTの山本。カルソニックIMPUL GT-Rのマーデンボローを寄せつけず、きれいなスタートを切る。3番手につけたのはARTA NSX-GTの伊沢だ。その3台に続いてスタートした、KEIHIN NSX-GTの小暮卓史は、5周目のSPコーナーでコースアウト。すぐに復帰はなったが、7番手にまで順位を落としていた。
9周目の1コーナーで、伊沢がマーデンボローをパス。GT300をうまく使った格好だ。その頃、トップの山本は約4秒先行。序盤のうちに、できるだけ逃げておこうとしているのは明らかだ。一方、伊沢とマーデンボローのバトルは、その後も続く。19周目のハイポイントコーナーで、マーデンボローは再逆転に成功。
視界の開けたマーデンボローは、一気にペースを上げて、トップの山本にも近づいていく。そして23周目の1コーナーでカルソニックIMPUL GT-Rは、待望のトップに浮上! だが、RAYBRIG NSX-GTも負けてはいない。いったんは引き離されそうになったものの、再び近づいてバトルを繰り広げることに。
一方、この頃、負けず劣らず激しいバトルを演じていたのが、4番手を争うMOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀と、ZENT CERUMO LC500の立川祐路。7番手スタートだった立川ながら、着実に追い上げて、さらなるポジションアップを狙っていた。先にピットに入ったのは、MOTUL MUGEN NSX-GTで、33周目に中嶋大祐に交代。
35周目、2番手を行くRAYBRIG NSX-GTがピットに滑り込んでくる。わずか40秒でバトンをコースに送り出し、まずは8番手でレースを折り返すことに。そして、37周目にはZENT CERUMO LC500もピットイン。石浦宏明がコースに戻ると、中嶋大祐の前につけていた。
トップのカルソニックIMPUL GT-Rは、39周目にピットイン。ARTA NSX-GTもこれに続く。佐々木はバトンの前! しかし、冷えているタイヤでは踏ん張りが効かず、ハイポイントコーナーでKENWOOD NSX-GTが逆転を果たす。これで事実上のトップに返り咲き、佐々木、野尻、石浦、そして中嶋大祐という順となる。ギリギリまで交代を遅らせたのは、DENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンだったが、小林可夢偉と交代した46周目には13番手に後退。今回は早めの交代が正解だったようだ。
何度もバトンを襲った試練。しかし、そのつど耐え抜いて勝利を得る!
トップに返り咲いた、RAYBRIG NSX-GTのバトンは好調そのもの。45周目の最終コーナーでカルソニックIMPUL GT-Rの佐々木はアウトにはらみ、クラッシュは免れていたものの、6秒ほどロスしていたからなおのこと。さらに佐々木には試練が続く。53周目あたりからペースが鈍り始めたのだ。原因はアクセル系のトラブル。一気にARTA NSX-GTの野尻が近づき、57周目の1コーナーで逆転を果たす。続いてZENT CERUMO LC500の石浦も迫ってきたが、これは何とかしのぎ抜く。
そんな中、トップを行くバトンにも、一瞬ひやりとする光景が。バトンが最終コーナーでオーバーラン。GT300車両をかわそうとして、アウト側に溜まったマーブルに乗ってしまったためだ。しかし、ロスを最小限にしてトップはキープ。後にバトンは語る。「いい勉強をさせてもらったよ!」と。
70周目からはセーフティカーが。GT300にクラッシュがあったためだ。これでRAYBRIG NSX-GTは、19秒にも達していたマージンを失ってしまう。だが、不幸中の幸いというか、ARTA NSX-GTとの間にはバックマーカーが。チェッカーまで残り6周のリスタートでは、急接近を許さなかったものの、最終ラップのバトンにはまたも試練の時が訪れる。突然現れたマーシャルカーに行く手を阻まれ、あわや接触のシーンがあったためだ。しかし、辛くも逃げ切りを果たしてRAYBRIG NSX-GTが優勝。元F1チャンピオンが、SUPER GTでの初優勝を飾ることとなった。2位はARTA NSX-GTで、3位はカルソニックIMPUL GT-Rが獲得。
「JBと組んで6戦目の初優勝はすごく嬉しい。最後にSUGOらしいレースになって、SCやコースアウトもあって、すんなり勝たせてもらえませんでしたけど。それでも、うまくレースを組み立てて、JBがいいレースをしてくれましたし、メカやチームはいい仕事をしてくれました。これは自分だけの勝利ではなく、たくさんの人たちの責任を抱えて戦っていたんだと、改めて感じました」と山本。そして、バトンは「いろいろ聞いていたけど、SUGOのレースは本当にクレージーだったよ。いろいろあったからね。でも、勝てて嬉しい。本当に感動的なレースだったと思う。僕にとっては6年ぶりの優勝。タフなレースだったけど、楽しめたよ」と語っていた。また、今回のレースでKeePer TOM’S LC500はラスト4周でクラッシュし、ノーポイントに終わったため、山本とバトンはランキングトップに返り咲くこととなった。
スタートからSUBARU BRZ R&D SPORTは、後続を寄せつけず
GT300では、ポールポジションからスタートを切った、SUBARU BRZ R&D SPORTの山内こそトップをキープしていたものの、その後方では順位がめまぐるしく変わっていた。坪井のHOPPY 86 MCはウエイトハンデが効いている上に、予選とは異なり燃料は満タン。さらにエンジンパフォーマンスに優れるFIA-GT3勢に、抗うすべもなく相次いでかわされてしまう。
代わって1周目を終えた時点での2番手には、GULF NAC PORSCHE 911の石川が浮上するも、ピタリと背後についていたGAINER TANAX triple a GT-Rの吉田に、3周目のホームストレートで抜かれてしまう。もちろん、その間に早くも山内は独走態勢に。4番手を行くのはHitotsuyama Audi R8 LMSのライアンだ。そのライアンは12周目のレインボーコーナーで、久保をパス。さらに順位を上げていくことも期待されたのだが……。
17周目、Hitotsuyama Audi R8 LMSから白煙が! またしてもタイヤにトラブルが発生、ピットでの交換を強いられ、優勝争いの権利を失ってしまう。これで石川が3番手に返り咲き、GAINER TANAX GT-Rの安田浩信が4番手に繰り上がる。
レースが1/3を過ぎた23周目あたりから、早くもドライバー交代を行うチームが現れる。6番手を走っていたグッドスマイル初音ミクAMGも、その1台。左側のタイヤのみ交換して、谷口をコースに送り出す。一方、それまで7番手を走行していたマッハ車検MC86も24周目に坂口から平木に代わるも、エンジンがかからずガレージの中に運ばれることに。セルモーターにトラブルが発生、予選まで好調だったのに入賞の夢は潰えてしまう。
22周目、トップを快走するSUBARU BRZ R&D SPORTのリードが、ついに10秒に達する。そして、31周目にはピットイン。タイヤをしっかり4本換えて井口をコースに送り出す。その間、43秒。すでにドライバー交代を終えているチームの中では、いちばん前につけていた。それからしばらくトップを走ったのは、もちろんGAINER TANAX triple a GT-R。36周目に星野がコースに送り出されるも、山内の前には出られず。一方、その後ろにつけていたのは、グッドスマイル初音ミクAMGの谷口だった。51周目、全車がドライバー交代を済ませると、もちろんトップに立っていたのは、SUBARU BRZ R&D SPORTだ。
終盤のSCランで起こったドラマ。予選11番手からModulo KENWOOD NSX GT3が3位に
55周目、それまで6番手を走っていた、HOPPY 86 MCが突然スローダウン。足まわりのパーツが想定外の重さに音を上げ、損傷してしまったためだ。ピットで修復が行われるが、入賞は果たせずに終わる……。さらに60周目には9番手を走行していた、TOYOTA PRIUS apr GTの平手がクラッシュ。後続車両の追突を食らい、SPコーナーのスポンジバリアに、囚われの身となってしまう。90 kg積んで入賞なら御の字、そんな展開だったのだが。
これでSCが入り、SUBARU BRZ R&D SPORTは18秒にも達していたリードを失うも、2番手のGAINER TANAX triple a GT-Rとの間に、バックマーカー3台を挟んでいたことから、リスタート後は接近を許さず。それどころかゴールまでにまた差を広げて、完全勝利を果たすこととなる。2位はGAINER TANAX triple a GT-Rで、星野とともに表彰台に上がった吉田は「自分で走って、初めての表彰台です」と喜びを爆発させていた。
3位はグッドスマイル初音ミクAMGが獲得したが、ゴールシーンには衝撃的な光景が。谷口の背後にはマネパ ランボルギーニGT3のマルコ・マペッリがつけていたが、何とかしのぎ切った……と思ったその脇を、Modulo KENWOOD NSX GT3が駆け抜けていったからだ。辛くも逃げ切りなったが、その差はコンマ05秒。SCラン前は11番手だったが、ストレートパフォーマンスに優れることで、再開後にはごぼう抜きを果たし、4位まで追い上げていた。
「車のパフォーマンスは最初から最後まで高かったんですが、一時タイヤからちょっと振動もあって、またトラブルか……と思った時もあったんですが、最後まで走りきることを信じていました」と山内。そして井口は「今年はいろいろ苦労した分、この勝利で恩返しできて良かったです」と語っていた。
ランキングのトップは、ARTA BMW M6 GT3の高木真一/ショーン・ウォーキンショー組がキープ。予選は23番手で、決勝でも11位でフィニッシュし、ノーポイントに終わったはずが、レース後に1台の降格があって、1ポイントを獲得。グッドスマイル初音ミクAMG以外の上位陣が、揃って低迷したこともあって、リードまで広げることとなっていた。
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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