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精密に創られた機械。レーシングマシンがそのひとつの例だと思う。
そして、高度なエンジニアリングが、走りとレースの展開をシミュレートしてスタートからゴールまでをできるだけデータ通りに走らせる。勝利に向かって。しかし、無機質な機械、レースングマシンを操るのは、ドライバーであり、往々にして、有機的なファクターであるドライバーがシミュレートデータから外れて、ネガティブな結果となることが少なくない。
時として、有機物のドライバーがデータを超えたパフォーマンスを発揮する。それこそ、モータースポーツの醍醐味! モータースポーツの面白さ! 感動させられる凄さ!
データをドライバーのパフォーマンスが超えた。速過ぎた。その結果起きたことは…。
中嶋一貴選手が10番手グリッドから猛追し、5位までアップ。ドライバー交代した後、セカンドスティントでトップを走行する小林可夢偉選手のテールを捕らえた関口雄飛選手。最終ラップ直前、最終コーナーを走行していた時、燃料がエンジンに来なくなってミスファイヤーが発生した。ガソリンが底をついたのだ。タンクに残っている僅かなガソリンを燃料パイプに送り込もうとマシンを左右にウエイビングさせたが、どんどんとスピードが落ちて行った。そして、完全にエンジンが止まってしまい、全く勢いをなくしたLEXUS LC500をコースサイドに止めた。コクピットを降りて、グリーン上に座り込んで頭を抱えた。
レース後au TOM'Sのピットへ行き、ストップの原因を確認。「燃料が足りませんでした」とエンジニアが語る。勝てたかもしれない。走り切ったら少なくとも2位を得ていた。それに対する悔しさを表しながらも、氏の表情には、何か嬉しさも漂ってもいた。「だって、凄いんですよ。雄飛が本当に速かったんです。決して給油量を攻めて、ギリギリにしていたわけでは無いです」
それを示すように66周レースの50周目あたりで、関口選手がトップ2台のマシンをほぼ射程内捕らえた時、ラップタイムは前を行くマシン達よりも約1秒速かったのを確認している。これが無機質の機械とデータシミュレーションを人間が超えた結果、起きたことだった。
走りきれなかったのはネガティブな結果だった。しかし、1周遅れ、10位という結果以上にモータースポーツのエンターテイメントを大いに満喫させてくれた。関口選手の走りだった。その凄さは、リピート番組の映像で…。
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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