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「スーパースポーツ世界選手権」の第8戦がイタリアのミサノで7月6日(金)~8日(日)に開催されます。J SPORTSでは日本人ライダーの大久保光(おおくぼ・ひかり)が出場するこのレースを7月8日(日)に生放送でお送りします。また、J SPORTSオンデマンドでもLIVE配信します。
さて、今年もラグナセカのレースが無かった「スーパースポーツ世界選手権」は約1ヶ月ぶりのレース開催です。シリーズの主導権争いは前戦・ブルノのレースでサンドロ・コルテセ(ヤマハ)とジュール・クルーゼル(ヤマハ)が大接戦を演じ、クルーゼルが僅差で3勝目をマーク。2位にコルテセとなり、クルーゼルは7点あったランキング首位(コルテセ)との差を2ポイントに縮めることに成功しました。ファイナルラップまで息もつかせぬ名勝負は「スーパースポーツ世界選手権」の魅力ではありますが、グランプリライダーとしても実績のあるトップライダー2人がグランプリコースでビッグバトルを展開している今季は見応えが例年以上に増しています。
これまで「スーパースポーツ世界選手権」にはケナン・ソフォーグルという絶対無二のマイスターが存在し、彼に対してどれだけ差を詰められるか、あるいは彼とどう駆け引きして前に出るかがライバルたちのテーマでしたが、ソフォーグルが引退したこととバイクの勢力図が変わったこと、そしてコルテセなど新しいメンバーの参戦により、雰囲気はガラリと一変しました。
そんな中、今季も残すところあと5レースになり、首位のコルテセ(ヤマハ)が122点、2位のクルーゼル(ヤマハ)が120点、3位のクルメナッハー(ヤマハ)が105点、4位のマヒアス(ヤマハ)が102点。ここまでが実質的にチャンピオン争いを展開するライダーになってきています。ランキング5位のラファエル・デ・ローサ(MVアグスタ)が4戦連続の3位表彰台という素晴らしいパフォーマンスを見せていますが、獲得ポイント83点でトップからは39点差。自力での逆転は難しい状況でしょう。
今回のレースはイタリアのミサノサーキット。ここはMotoGPサンマリノGPが開催されるサーキットであるわけですが、今季から「スーパースポーツ世界選手権」にスイッチしてきたサンドロ・コルテセ(ヤマハ)はMoto2に参戦した昨年のベストリザルト5位を獲得しています。さらにコルテセはMoto3のチャンピオンを獲得した2012年に優勝しています。
そして大久保光(カワサキ)は予選5番手を獲得するなど好調でしたが、残念ながら転倒によりリタイア。アンソニー・ウエスト(カワサキ)も右手首の怪我でまだ本調子とは言えず、カワサキ陣営の苦しい戦況は変わっていません。
さて、そんな中で迎える第7戦はチェコのブルノサーキット。MotoGPも開催している1周5.4kmのお馴染みのグランプリコースです。実はスーパースポーツ世界選手権の開催は2012年以来6年ぶりで、現役ライダーでこのクラスの優勝経験があるライダーはケナン・ソフォーグルが引退したために誰もいない状況です。
しかしながら、グランプリが毎年開催されているコースであり、グランプリからスーパーバイクに転向してきたライダーにとってみれば経験豊富なコースと言えますから、中には良いイメージでレースができるライダーもいるかもしれません。
その中で最もブルノを得意とするライダーと言えば、ランキング首位のサンドロ・コルテセ(ヤマハ)でしょう。彼は13シーズンに渡ってグランプリサーカスに身を置いてきたライダーですからブルノの走行経験は豊富です。そしてコルテセは2011年(125ccクラス)にグランプリ参戦7シーズン目にしてようやく初優勝を飾っていますが、実はそのコースがブルノなんです。
コルテセはブルノでの初優勝で勢いに乗り、翌2012年に4ストローク化したMoto3クラスで見事チャンピオンを獲得。その年もブルノで3位表彰台に登っています。600ccのMoto2にステップアップしてからも3位表彰台を初めて獲得したのがこれまたブルノ。今季2勝目を飾り波に乗るコルテセにとって非常に相性が良いコースでのレースがやってくるわけです。グランプリ仕込みの走りを見たいですね。
そして、ジュール・クルーゼル(ヤマハ)は2010年(Moto2クラス)で表彰台まであと一歩の4位フィニッシュをしましたが、逆にスーパースポーツ世界選手権に初めて参戦した2012年はここブルノでは表彰台に立てませんでした。
また、ランディ・クルメナッハー(ヤマハ)も長くグランプリを戦ってきたライダーの一人です。しかしながら、チェコでの最高位は2007年(125ccクラス)の9位とあまり芳しくない結果です。そして、ルーカス・マヒアスはグランプリ経験がワイルドカードによる5戦のみですが、そのうちの2戦がブルノでのMoto2参戦。こちらもスポット参戦ということで成績はイマイチな感じ。
他にブルノを得意とする元グランプリライダーはいないのか?というところでしたが、伏兵が居ました。アンソニー・ウエスト(カワサキ)です。ウエストは2007年途中から最高峰MotoGPクラスにカワサキワークスのライダーとして参戦し、2008年はフル参戦をしていますが、彼のMotoGPでの最高位となる5位フィニッシュを飾ったのが実は2008年のブルノです。
ウエストはMotoGPからカワサキが撤退したことで、シートを喪失した2009年にスーパースポーツ世界選手権にフル参戦。ブルノでは2位表彰台に上がりました。優勝こそ無いものの、ウエストにとってみれば良いイメージで挑めるサーキットでしょう。そんな彼は先週、鈴鹿サーキットで開催されたアジアロードレース選手権にヤマハのチームから参戦。
レース2ではプライベーターのマシンで厳しい状況ながら素晴らしいレース運びと衰え知らぬ走りで優勝を飾りました。カワサキからヤマハ、ヤマハからカワサキの乗り換えは大変だと語っていましたが、怪我をしていようがマシンを変えようが御構い無しのアンソニー・ウエスト。その勢いでカワサキに今季初の表彰台をもたらすことはできるでしょうか。
お馴染みのコースでも、6年ぶりだからこそ分からないその戦況。グランプリライダーたちの走りはレースの軸になって行くでしょう。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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