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電気自動車の「FIAフォーミュラE選手権」のシーズン4(2017年~18年)はいよいよクライマックスとなる残り2ラウンドになりました。今回は初開催となるスイスのチューリッヒでの戦い。チャンピオン決定の可能性もあるスイスでの戦いは6月10日(日)に決勝レースが開催。J SPORTSでは「Zurich ePrix」の予選、決勝の模様を生放送でお送りします。
「フォーミュラE」を初開催するスイスのチューリッヒですが、今回のレースは歴史的なレース開催です。というのもスイスでモータースポーツ競技が開催されるのは実は64年ぶりのこと。スイスは1955年のル・マン24時間レースで発生した観客を巻き込む大惨事を受けて、長らくモータースポーツ競技の開催を禁止していたのです。そのため、永世中立国としてヨーロッパの文化的交差点でもあるスイスですが、国内にはサーキットが存在しません。
そんな法律上、モータースポーツと無縁だったスイスですが、ドイツやフランス、イタリアと接する国ですから、スイスのチームやドライバーたちはモータースポーツに積極的に参加してきました。F1の「ザウバー」チームはその代表的存在と言えますし、スイス人ドライバーとしては1970年代に活躍したクレイ・レガッツォーニが有名です。
そしてF1まで登りつめたスイスドライバーとしては現在、「フォーミュラE」のドライバーとして活躍するセバスチャン・ブエミ(ルノー・edams)の存在も忘れてはいけません。2014年にはWECでトヨタのドライバーとしてワールドチャンピオンに輝き、「フォーミュラE」シーズン2(2015-16年)でもチャンピオンを獲得したブエミにとって、念願の母国開催レースが実現します。WECル・マン24時間を翌週に控えた母国開催のレースでブエミは今季初優勝を飾ることができるでしょうか?
初開催の「Zurich ePrix」は美しい光景のチューリッヒ湖に面した港付近にピットレーンやイベント会場が作られる約2.46kmのコースで、長い直線が2本存在するので、激しいブレーキング競争が楽しめそうなレイアウトになっています。
さて、今回のチューリッヒを前に5月のドイツ・ベルリン戦では地元ドイツのダニエル・アプト(アウディ・スポート)が今季2勝目をマーク。ルーカス・ディグラッシ(アウディ・スポート)と共にアウディが1-2フィニッシュを果たしました。アウディの母国での上位フィニッシュは素晴らしい出来事でしたが、共に序盤戦で苦戦したこともあり、チャンピオン争いという意味では逆転は望めない中での快勝でした。
今季最も印象的な走りを展開してきたのがフェリックス・ローゼンクビスト(マヒンドラ)ですが、前戦・ベルリンではスタート直後にタイヤをロックアップさせてしまい順位を後退させてしまい、その後も追い上げならずで11位フィニッシュ。残念ながらポイントを獲得できずに終わってしまいました。
一方でランキング首位のジャン・エリック・ヴェルニュ(テチータ)は3位表彰台を獲得。ヴェルニュはランキング2位のサム・バード(DSヴァージン)とのポイント差を広げることに成功。ヴェルニュが162点、バード122点、ローゼンクビスト86点となりました。
ローゼンクビストはトップから76点差となってしまいましたが、「フォーミュラE」では優勝から10位まで与えられるレースポイントに加えて、ポールポジションが3点、ファステストラップが1点のボーナスが付きますから、最大で30点を獲得できます。ニューヨーク2戦を含めて残り3レースで90点獲得できるということで、まだローゼンクビストはチャンピオン争いに踏みとどまっていますが、ヴェルニュに対して17点もの差を詰めねばチャンピオン争いから脱落となります。条件的にはかなり厳しい状況です。
実質的にはジャン・エリック・ヴェルニュ(テチータ)=162点、サム・バード(DSヴァージン)=122点の一騎打ちということになってきそうなチャンピオン争い。その差も40点開いているので、この差が60点以上に開くと次戦ニューヨークを待たずにヴェルニュの王座が確定します。ここまで一度もリタイア無しの両者ですが、ここからの3レースはミスがチャンピオン争いの行方を大きく左右することになるので、全く気の抜けない緊張感あふれるレースが展開されるでしょう。
ライバルに差をつけるために有益な3点を得られるポールポジションはこれまでヴェルニュが4回、バードが0回と予選1発の速さではヴェルニュに軍配が。1点ボーナスのファステストラップではヴェルニュ0回、バード1回。ファンの人気投票で得られる武器となるファンブーストに関しては両者共に獲得0回。優勝回数はヴェルニュ3勝、バード2勝ということで、最終戦・ニューヨークを前に逆転をしやすい条件を整えるには、バードとしてはチューリッヒでの優勝はマスト事項と言えます。
そうそう簡単に事が運ばず、毎戦のように勝者が変わる非常に難しい戦いとなっている「フォーミュラE」。初コースとなるチューリッヒ市街地で巧さを見せ、チャンピオンに近づくのはヴェルニュか、バードか。目が離せない戦いとなります。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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