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ドイツGT3カーのパフォーマンスと、耐久らしさが見えたレース
降りしきる雨。そして立ちこめる霧。2018年のニュルブルクリンク24時間は、前半はドイツメーカーのマシンたちによる激しいデッドヒート、そして後半は耐久らしい“我慢くらべ”の様相を感じさせたレースだった。
レースは序盤、ポールポジションを獲得したマンタイ・レーシングの911号車ポルシェ911 GT3 Rがリード。今季、アップデートによってフロントのダウンフォースが大幅に増したポルシェ勢は、予選トップ3を占める活躍をみせたが、そのなかでもニュルブルクリンク最強チームのひとつであるマンタイの強さは“さすが”の一語に尽きる。
しかし、911号車は名手ロマン・デュマのドライブ中にまさかのクラッシュ。これの後を継いだのが、同じチームの912号車というところがまたマンタイのさすがというところなのだが、3台をトップ5に送り込んできたブラックファルコンがマンタイに迫っていく。912号車は接触によるスピンやタイムペナルティもあったが、最後までブラックファルコンの4号車メルセデスAMGとのトップ争いとなる。
霧による中断の後、1時間30分にわたって展開されたレースは、日本でもSUPER GTを戦ったフレデリック・マコウィッキ駆る912号車ポルシェと、4号車メルセデスAMGのアダム・クリストドロウによる息詰まるマッチレースとなった。24時間の戦いが残り1時間でテール・トゥ・ノーズとなっているのだから、いかにレベルの高い戦いだったかがうかがい知れるだろう。
今回のレースでは、ポルシェ、メルセデス、そして3位に入ったアストンマーチンの条件がかなり良かったように感じられる。アウディ、BMWもそこまで遅いわけではなかったが、やはりこれらの3車種にアドバンテージがあったように感じられる。ヨーロッパのレースではよくあることだが、こういった「なんとなく有利、不利がある」のはよくある話だ。もちろんドライバーやチームの働きは勝利に値するものだが、今年はポルシェが勝つべくして勝ったのでは……というのもどこかしら感じている。
今回のレースは、より高速化したGT3カーによるスペクタクルあふれるレースとなった。そして、ドライバーのエラーをのぞいてトラブルが非常に少なかったのも特徴的。全体的にこのレースはいつ来ても、“ドイツ最大のコースにおけるドイツ車のお祭り”の風情があるが、雨と濃霧のなかで展開された今年も、そんなレースだったと感じさせた。ドイツ車のGT3カーの優秀さ、パフォーマンスの高さを再確認させられたのだ。
日本勢はそれぞれに収穫。新たな挑戦者も……!?
一方の日本勢だが、結果だけ言ってしまえば苦しい戦いだった。最上位フィニッシュとなったのは、プライベーターであるNovel Racingの佐々木孝太/吉本大樹/ドミニク・ファーンバッハー/マリオ・ファーンバッハー組42号車レクサスRC Fが総合42位/クラス2位。次いで43号車レクサスIS F CCS-Rの東徹次郎/小山佳延/松井猛敏/佐々木孝太組が総合43位/クラス3位でチェッカーを受けた。42号車については、ニュルを知り尽くすファーンバッハー兄弟が素晴らしい走りをみせた。また、43号車とともにトラブルがかなり少なかったのも好結果の要因と言えるだろう。
一方、SP3Tクラスに参戦したスバル/STIのカルロ・バンダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人組90号車スバルWRX STIは、序盤、そして赤旗からの再開後に起きた「おそらく電気系」というトラブルが痛かった。ただ、ウエット路面ではAWDの効果を存分に発揮したと言えるだろう。
そして、トラブルが多発してしまったのはTOYOTA GAZOO Racingの土屋武士/松井孝充/中山雄一/蒲生尚弥組56号車レクサスLC。「これまでまったくトラブルが起きていなかったところに多発した」というのは、ドライバーのリーダーを務める土屋武士だ。
土屋によれば、ミッションはさておき明け方のエンジントラブルは、これまでウエットでの走行を一度も経験していなかったことに起因するトラブルだという。結果は総合99位。さぞや悔しいだろう……と思いきや、「言い方は難しいけど、楽しかった」と予想もしない返事が返ってきた。
今季、実験的な要素を盛り込んだレクサスLCは初めてのニュルブルクリンク挑戦。「今年は壊れないと思ったけど、いろんなところが壊れた。でもこれは来年、再来年に活きるし、今年は新人メカも経験を積んだ」と土屋は言う。人を育て、クルマを鍛えるというTOYOTA GAZOO Racingのスピリットから言えば、“良い経験”だったのだ。
「もちろんレースという部分では、応援してくれる人の期待はできるだけ上位で……というのはあったと思うので、そこに対しては残念な気持ちはもちろんあります。でもこれは絶対に来年、再来年に繋がるレース。それに“引退”した僕にまたこんな素晴らしい経験をさせてもらえるなんて、本当にありがとうございますという気持ち」
日本勢それぞれが、それぞれの収穫を得た2018年のニュルブルクリンク24時間。来季もこの場所でそれぞれの挑戦が始まりそうだ。そして、ひょっとすると新たな日本からの挑戦者が出るかもしれない。今年のニュルでは、そんな噂も見え隠れしていたのでお伝えしておこう。来年も、またこの場所に来なければいけないのかもしれない。
平野 隆治
1976年横浜市出身。モータースポーツ専門誌、サイトの編集部員を経て、2015年からモータースポーツを中心にした“自称なんでも屋”に転身。SUPER GTは10年以上ほぼ全戦現地で取材をこなしてきた。
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