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このブログについて
2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。
全体の紹介
●イングランドはフットボールのみならず、音楽の文化も強く根付いている。
●たまに、その2つの間に接点もでき、フットボールの曲が発売される。
●これまで、圧倒的に一番人気を集めたのは、1996年の「Three Lions」という曲だ。
●イングランド代表の内容とのことで、今でもどのW杯かEUROの前にも必ずあっちこっちで流れる曲だ。
●これは、Britpop時代のアーティストである「The Lightning Seeds」と、コメディアンのFrank SkinnerとDavid Baddielが作曲してリリースしたものだが、内容は完全にサポーター目線だ。
●イングランド代表を巡る思い、期待、期待はずれ、そして希望を物語っている。
●元々、EURO 96という地元開催の大会前にリリースされ、スタンドでも歌われて大ヒットとなった。
●今も人気があるというのは、その大会が懐かしいというのもあるし、歌いやすいというのもあるが、
一つ一つの歌詞を聞くと、全ての言葉が本当にすごくイングランド人の心を掴むことだというのが一番大きいかなと思う。
音声クリップ1
Alan Hansen: "I think it's bad news for the English game"
「イングランドのフットボールにとってまた悪いニュースだね」
Trevor Brooking: "We're not creative enough, we're not positive enough"
「クリエイティブさも足りないし、攻撃力も足りないし」
It's coming home,
It's coming home,
It's coming,
Football's coming home
帰ってくるぞ
帰ってくるぞ
もう来るぞ
フットボールがホームに帰ってくる
Jimmy Hill: "We'll go on getting bad results..."
「これからもダメな結果が続くだろう...」
It's coming home,
It's coming home,
It's coming,
Football's coming home
帰ってくるぞ
帰ってくるぞ
もう来るぞ
フットボールがホームに帰ってくる
音声クリップを受けて
●この出だしでは、2つの大きな前提が設定される。
●まず、実際のBBC中継のスタジオコメンテーターの話を活かして、
「イングランド代表を巡る話はネガティブだ」というのが1つ。
●こんな話は、イングランドにとって聞き慣れており、聞き飽きている内容である。
●良い選手は居るのに、チームはダメだ。なんでこんなにダメだ?
●いくらやっても変わらない。
●当時は1994年W杯で予選敗退を喫し、Euro 96に向けて調子が上がらないイングランド代表についての話だったが、だいたいどの時代にも当てはまる内容。
●イングランド代表の中継を見ると、結局、話がネガティブになるのが当たり前だ。
●しかし!その中で突然、ポジティブに聞こえる歌詞も流れてくる。
●「Football's coming home」だと。
●ここでフットボールとは、もちろん、当時は1966年W杯以来となる地元開催の大会が始まるところだったので、そういう意味も持つ。
●しかし、それだけではなく、「イングランドが勝つ」という意味、更に深く探ると、
「フットボールを介して希望を持つ」という意味もある。これはどの時代にも通じる。
音声クリップ2
Everyone seems to know the score,
They've seen it all before,
They just know,
They're so sure,
誰も状況を知り尽くしている
もう何度も見てきたからさ
誰もがはっきり
心で分かっている
That England's gonna throw it away,
Gonna blow it away...
イングランドは今回も失敗して
今回も台無しにするだろうと
音声クリップを受けて
●これでまた元々の前提に一旦戻る。
●曲を聞く人も含めて、イングランド人なら知り尽くしている前知識、つまり、イングランド代表=ネガティブな話という点だ。
●因みにここの一行目にちょっとした言葉遊びがある。
●「know the score」とは直訳すると「スコアが分かっている」、つまり、元々スポーツのコンテクストで使われて実際のスコアという意味を持つが、そこから意味が広がり、スポーツと関係ないところまで「状況が分かる」という意味で一般的に使われる。
●ここではまたスポーツのコンテクストに、「状況」という広くなった意味で「score」という単語を戻している。
●そして、内容として、イングランド人なら必ず感じていることだ。
●イングランド代表はいつも期待はずれだからどうせ今年もダメだろう。
●これももちろん、どの時代にも通じる。
●だが、ちょっと待った!というのを紹介するのは、次の歌詞だ。
音声クリップ3
But I know they can play,
'Cause I remember
だが、俺はイングランドのプレーを信じている
俺は違うことを覚えているからさ
Three Lions on a shirt,
Jules Rimet still gleaming,
Thirty years of hurt,
Never stopped me dreaming
ユニフォームに3頭のライオン
今も光り輝くジュール・リメ
30年間の辛い思いでも
俺の夢は潰していない
音声クリップを受けて
●ちょっと待った!イングランドが「必ずダメ」と決めつけるのに早くない?
●みんなが話しがち、感じがちのネガティブのことは置いといて、もう少し誇りに思えば良いのではないか?
●ユニフォームを飾る3頭のライオンは誇りのシンボル。
●そのライオンは「強さ」だけではなく、「高潔」の象徴でもある。
●元々、その3頭のライオンは12世紀から使われている、イングランド王室紋章にある。
●1198年、リチャード一世の時代からデザインが変わっておらず、歴史を持つ象徴だ。
●そして、ジュール・リメはFIFAの3代目会長として、 ワールドカップの実現に尽力した人だ。これを記念して最初の優勝トロフィーは、彼の名前を冠してジュール・リメ・カップと呼ばれていた。
●そのトロフィーをイングランドが1966年に掴み取り、そのレプリカがまだピカピカと輝いている。イングランド代表が一度、世界を制覇したシンボルである。
●これはもう30年前という遥かに昔のことだし、あれからは負け続けてきたというのを認めつつ、一度そんなことがあったので、今後も有り得ないことはないよ!という主張。
●今や更に22年が経ち、もう52年の辛い思いと書き直す必要があるが、同じことが今も当てはまる。
●そしてイングランド人の心を語る。
●確かに毎回失敗するし、辛い思いが続いてきたけれど、一度は優勝したことがあるので今年も「もしかして」可能性があるかもしれない!という希望だ。
●だから、可能性は低いとはいえ、夢は見ても良い。夢を捨てる必要はない。
音声クリップ4
So many jokes, so many sneers,
But all those oh-so-nears,
Wear you down,
Through the years
ネタと自虐ばかり
長年に亘って何度も
「あともう一歩だった」という惜しさを感じて
肩に重く伸し掛かるさ
音声クリップを受けて
●これでもまだ説得されていない、ネガティブの人をまた相手にする。
●ネガティブなのは分かる。
●そして、イングランド人はつらいときに自虐的なジョークで乗り越える文化がある。
●毎回、イングランドが負けてまたそんなネタに戻ってしまう。
●そして、確かにPK戦の敗北など、本当に惜しい負け方を繰り返して経験すると、イングランド人は希望を捨ててしまう。
●それも理解できる。
●しかし...
音声クリップ5
But I still see that tackle by Moore,
And when Lineker scored,
Bobby belting the ball,
And Nobby dancing
だが俺はまだ見えている、あのムーアのタックル
あのリネカーのゴール
あのボビーの強烈なシュート
あのノビーの踊り
音声クリップを受けて
●ムーアとは、1966年のW杯で優勝したときの主将、ボビー・ムーアのこと。
●あのタックルとは、1970年W杯で前回王者として、最終的にその年の王者となるブラジルと対戦した有名な試合のことだ。
●スピードに乗ったJairzinhoから、ムーアが優雅なタックルでボールを奪って、有名シーンとなった。試合後、ムーアとペレが暖かく挨拶を交わした。
●リネカーは6ゴールで1986年のW杯得点王で、1990年にも4点を挙げてベスト4進出に大きく貢献した。
●ボビーとはボビー・チャールトンのことで、1966年のW杯ではメキシコ戦、そして準決勝のポルトガル戦で強烈なミドルでゴールを決めて、決勝進出に大きく貢献した。
●そして、ノビーとはノビー・スタイルズのことだ。強いボランチの選手だったが、1966年の優勝が決まったあと、トロフィーを持ってピッチ上で踊ったことが有名だ。珍しく「柔らかい」面を世界に見せた。
●これらのシーンを、俺はまだ覚えている。皆さんも、思い出してみたら?
●イングランドがW杯で実際に優勝したとき、そして他にも優勝を本格的に争った歴史があるんだ。
●これがすごい、説得力のある根拠だろう!
●みんなで大会で向けて、ポジティブに考えよう!
音声クリップ6
John Motson: "England have done it! In the last minute of extra time!"
「イングランドの勝ち越しゴール!延長戦で残り1分で!」
David Coleman: "What a save! Gordon Banks!"
「何というファインセーブ!ゴードン・バンクス!」
Reporter: "Good old England! England that couldn't play football! England have got it in the bag!"
「やったぞ、イングランド!フットボールができないと言われたイングランド!ワールドカップを掴み取った、イングランド!」
I know that was then
But it could be again
あれは昔のことだって分かっているけど
今回もまた実現するかもよ
音声クリップを受けて
●これが最後のクレッシェンドに繋がる、大切な設定し直し。
●出だしをひっくり返す。
●出だしと同じように、実際の中継の言葉を活かす。
●しかし、今回はポジティブな内容だ。つまり、「こんな誇らしい歴史がある」と言っているだけではなく、見せている。
●延長戦で残り1分のゴールは、1990年W杯ラウンド16のベルギー戦、David Plattが決めたゴールだ。
●ゴードン・バンクスという名GKのファインセーブは、1970年のブラジル戦でペレのヘディングだった。
●そして、最後はもちろん1966年W杯決勝後の言葉だ。
●その後、一番イングランド人の心を掴み、今でも涙が出てしまいそうになる言葉。
●改めて、これは遥かに昔のことだと認めつつ、
「it could be again」と希望を持たせてくれる。
●ここの「could」がキーワードだ。
●「will」は言っていない。つまり、「絶対優勝するんだ」とは言っていない。
しかも、イングランド人の心はそんな保証も求めていない。
●「可能性大」も、イングランド人として求めていない。
●「少しでも可能性があるので、優勝するかもよ」という小さなする希望を持っても良い。
●それが、イングランド人の心を掴む言葉だ。
●さて、出だしのネガティブな雰囲気から抜け出して、ポジティブな希望を持てるようになった今、曲のコーラスがまさにクレッシェンドになる。
音声クリップ7
It's coming home,
It's coming home,
It's coming,
Football's coming home
帰ってくるぞ
帰ってくるぞ
もう来るぞ
フットボールがホームに帰ってくる
全体を受けて
●最後に一言。
●イングランド人は勝利を求めるとは言うけど、本当はあまり求めていない。
●実は、勝利するのが苦手だ。
●勝負弱い、という意味ではなく、勝利したらどうする?どうしたら良い、という不自然なところが出る。
●実際に勝利してしまえば、本当に勝利して良いのかという不快な思いもするかもしれない。
●だからイングランド人にとって一番気持ちが良く、気が済みやすいのは、
「誇らしい歴史」、「今後の希望」、そして「名誉ある敗北」という3つのことだ。
●その中、一番大切なのは「希望」であり、実際に優勝するときよりも、「今年は優勝するかも」という希望を持てる時期のほうが一番幸せだと思う。
●そして、あのEuro 96では、
スコットランドに勝利し、オランダに圧勝し、史上初で今まで最後のことに(ベスト8のスペイン戦で)PK戦でも勝利したが、準決勝ではすごく健闘した末、ドイツを相手にPK戦で敗れた。
●あの大会は、全体を客観的に見たらめちゃくちゃ面白い大会ではなかったが、イングランド人にとっては非常に特別だった。
●ベンは今でも、何時間も語り続けることができる。
●しかし、もし優勝してしまったとすれば、本当に同じぐらい特別な思い出になったのかな?
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