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このブログについて
2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。
(1)偽の偽9番
Barney Ronay, The Guardian紙 【翻訳:桐谷 圭介】
●With 89 minutes gone at a drenched, slightly woozy Etihad Stadium Eden Hazard was taken off, bringing to an end an afternoon spent chasing fruitlessly as the most false of false nines.
雨でびしょ濡れ、若干ぼんやりとしたエティハド・スタジアムの89分過ぎ、エディン・アザールは交代となり、成果なく走り回り続けた午後は「偽9番」としても何もできずに終わった。
●Hazard cares about this Chelsea team and has been a fine servant. This, though, was an afternoon that must rank with his most miserable in England.
アザールの今のチェルシーにかける思いは強く、チームに素晴らしい貢献をして来た。しかしながら、この午後(のプレー)は彼のイングランドでのキャリアでも最も惨めな部類に入るだろう。
●Hazard was roughed up with his back to goal. He chased gamely. He made almost zero dribbles. Hazard likes dribbling: he is very good at it. But twice now in 10 days he has instead been asked to watch while creative opponents, his de facto peers, have been allowed to express their talents while he trudges his lonely path, a caged bird in a No 10 shirt.
アザールはゴールに背を向けた状態で痛めつけられ、それでも勇敢にボールを追った。この日の彼のドリブル数はほぼゼロだった。アザールはドリブルを好み、実際得意なプレーだ。しかし、自分と同類のクリエイティブな相手がその才能を見せつける中、10番のシャツを身にまとった鳥かごの鳥のように重い足取りで孤独に走り、ただそれを眺めることを求められたのは、この10日間で2度目のことだ。
https://www.theguardian.com/football/2018/mar/04/football-chelsea-manchester-city-eden-hazard-false-nine
「偽9番」はそもそも、ボールを持つ前提で機能するのでは!? 【黒板?】
●Guardiola監督のバルセロナなどで「偽9番」という戦術が機能した前例がある。
●その基本として、1トップとして中央で最も高い位置でプレーすると思われる選手が、ビルドアップで思いっきりポジションを落とすこと。
●それにより、相手CBと距離を置いてフリーになる。或いは、相手CBも一緒に釣り出して、中央にスペースを作る。
●そのスペースをチームメイトが横からカットインしたり、中盤から上がったりすることで攻める。
●このようなプレーは、Hazardに十分期待できそうだ。
●しかし、ビルドアップ中にこのプレーをする為には、そもそもビルドアップする、つまりボールを持って攻撃を展開する必要がある。
●完全にボールを持たれる試合だと、「偽9番」は難しいだろう!
●孤立した状態から何とかカウンターの起点を作るのであれば、ポストプレーが得意な選手がまずボールをキープして溜めを作ることになるが、あまりHazardが向いてそうにない。
●Conteの起用法はどうかな?
(2)後半:ペップの抗議がシティにとって不都合の質問を招く件
黄色いリボン:カタルーニャ独立住民投票とスペイン政府の対応
●『Foot! MONDAY』でも紹介されてきたように、去年10月1日にスペインでカタルーニャ独立住民投票が行われた。
●フットボール界にも色々と影響が出るかもしれないが、現在、話題となっているのはGuardiola監督のつけている黄色いリボンのことだ。
●住民投票を受けて、Jordi Sanchez氏とJordi Cuixart氏をはじめとする、カタルーニャ独立支持者の政治家が、スペイン国家に対して反乱の扇動という疑いで逮捕された。
●そういったスペイン政府の対応が人権問題として問題視され、カタルーニャ独立自体に賛成しなくても、それを決める権利はカタルーニャの人々にあるということを主張する人は、政治家の逮捕に対して反対の気持ちを表すために黄色いリボンを身に付ける動きが始まった。
そのリボンをつけたGuardiolaが処分を受けることに
●しかし、フットボール関係者がその立場を利用して政治的なマークをつけたりすることが基本的に許されない中、FAカップ5回戦やリーグ・カップ決勝戦でそのリボンを付けたGuardiolaがFAに処分を課せられることになった。
●一体何が「政治的なマーク」なのか、という点について、解釈がバラバラで不明というのも問題だが、それを別にしても、この件が実は、マンチェスター・シティにとって非常に不都合の質問を招いてしまっている。
●つまり、この話題を持ち込みした、マンチェスター・シティの監督が「じゃあ、あなたは?」と問われる立場になった。
Pep Guardiola、カタルーニャの人権問題について(2月25日)【翻訳:桐谷 圭介】
●"Before a manager, I am a human being.
私は監督である前に、ひとりの人間だ。
●"[The FA] know I'll wear the yellow ribbon always. It's not about politicians, it's about democracy; it's about helping the people who didn't do absolutely anything."
(FAは)私は黄色のリボンを身に着け続けることは分かっている。政治家かどうかではなく、これは民主主義であり、何も悪くない人々を助けるためだ。
●"If I broke the rules, I accept the fine. There are four guys in prison. There are other guys, who are outside of Catalonia; when they come back, they are going to be jailed, imprisoned for rebellion and sedition.
もし私がルールを破ったなら、罰金を受け入れるよ。4人の男が牢獄にいるんだ。他にも、今はカタルーニャの外にいても、戻ってくれば反逆と扇動で投獄される者もいる。
http:www.bbc.com/sport/football/43195688
ペップが言うこと、そしてこの動きに参加して意識を広めることはごもっともだ、とはいえ...
●地元の社会に対する、強い責任感を感じたGuardiola監督。
●確かに、一般人より、Guardiola監督ほど知名度や立場のある人がリボンをつけると、世界中に意識が高まるに違いない。
●しかし、Guardiola監督の雇用主である、マンチェスター・シティというクラブは基本的にある国家の持ち物である。
●その国家はアラブ首長国連邦(アブダビ)だ。
●そして、実はそのアラブ首長国連邦では、人権問題があるようだ。
●国際的な人権NGOの『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』は、UAEを以下のように評価している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(国際的な人権NGO)による、UAEの評価【翻訳:桐谷 圭介】
●"The United Arab Emirates (UAE) often uses its affluence to mask the government's serious human rights problems. The government arbitrarily detains, and in some cases forcibly disappears, individuals who criticized the authorities, and its security forces face allegations of torturing detainees. A new anti-discrimination law further jeopardizes free speech and is discriminatory, as it excludes references to gender and sexuality. Authorities denied access to the country to activists who criticized the UAE's mistreatment of migrant workers. Labor abuses persist, as migrant construction workers facing serious exploitation. Female domestic workers are excluded from regulations that apply to workers in other sectors."
UAEは、政府による人権上の深刻な問題を覆い隠すのに、その豊かさをしばしば利用している。UAE政府は、権力を批判する者たちは独裁的に逮捕し、時には強制的に抹殺してしまう。治安部隊には逮捕者への拷問の疑いがかけられている。新たな反差別法は更に言論の自由を危機に晒し、ジェンダーやセクシュアリティへの言及は除外されるなど、実際には差別的だ。当局は、UAEによる移民労働者への虐待を批判した活動家の入国を拒否した。強制労働の実態は依然残っており、建設現場で働く移民たちは深刻な搾取に晒されている。家庭内で働く女性労働者は、別の産業の労働者たちには適用される規制から外されている。
https://www.hrw.org/middle-east/n-africa/united-arab-emirates
このUAEの人権問題は新しい問題ではない。しかし、ペップがこれを話題にしてしまった
●そもそも、間接的にもフットボールクラブが国家の持ち物になることを問題視する人も少なくないし、UAEの人権問題もこれまでも知られていた。
●だが、フットボールと政治を別で考えるべきなのか、どこまで一緒にすれば良いのか、色々とグレイゾーンがある。
●オーナーのことを考えるより、シティのフットボールを純粋に楽しもう、というほうが主流だった。
●しかし、カタルーニャの人権問題を持ち込みすることで、Guardiola監督が自ら人権を話題にしている。
●だから、人権問題のあるUAEのアブダビからお金を貰って仕事をしているGuardiola監督も立場が問われることになった。
●リーグ・カップ決勝戦の試合後記者会見でカタルーニャの人権問題について話した後、Guardiola監督は記者に「では、UAEの人権問題は?」と聞かれてしまった。
Pep Guardiola、UAEの人権問題について(2月25日)【翻訳:桐谷 圭介】
●"Every country decides the way they want to live for themselves. If he decides to live in that [country], it is what it is. I am in a country with democracy installed since years ago, and try to protect that situation."
どの国も、自分たちがどうありたいかは(自分たちで)決めている。もし誰かがその国で生きていきたいのならば、それまでの話だ。私自身は昔から民主的な国から来ているし、それを守ろうとしているのだ。
http:www.independent.co.uk/sport/football/news-and-comment/geopolitics-in-football-qatar-abu-dhabi-man-city-psg-trump-manchester-united-a8235996.html
知らない顔をしたも同然で、批判の対象に。
●これにより、UAEや、パリ・サンジェルマンを持つカタールの事情も、これまでよりも注目を浴びることになった。
●シティのオーナーにとって、こんな話題が非常に不都合のはずだ。
●しかし、ペップの行動を受けて、アブダビのような国家が何故、フットボールに関わろうとするかについて、注目度が高まり、報道が増えた。
Nick McGeehan、人権問題の研究者(Independent紙)【翻訳:桐谷 圭介】
●"[Abu Dhabi and Qatar are] not making money out of these clubs. They latch themselves on to prestigious, high-value brands, whether it's football clubs or universities or museums, and these associations enable them to present themselves as progressive and tolerant, when the opposite is true."
(アブダビやカタールは)これらのクラブで金儲けをしているわけではない。自分たちを、名誉ある価値の高いブランドに並べ立てているだけだ。それがフットボールクラブ、大学、博物館の何であれ、それらに関連することで、実際には正反対であるのに、彼ら(アブダビやカタール)が進歩的で寛容であるかのように見せることを可能にしているのだ。
●"What Pep said is fine in isolation but the context is that he works for the Abu Dhabi government, whose deputy Prime Minister he thanked in the same speech, and was speaking on a platform provided to him by their money. If he'd said people in Abu Dhabi also deserve these rights, that would have really been something to admire, but he pointedly refused to do that. That's obscene hypocrisy."
ペップの発言自体は別で良いのだが、ここでの文脈は、彼が同じ場で副首相に感謝を述べたアブダビ政府のために仕事をしており、その資金によってもたらされた足場で話をしている、ということだ。もし、彼がアブダビの人々にもそうした人権があって然るべきだ、と言ったなら、それは真に賞賛されることだろうが、その点についてはあからさまに拒否した。それは節度を欠いた偽善というものだ。
http:www.independent.co.uk/sport/football/news-and-comment/geopolitics-in-football-qatar-abu-dhabi-man-city-psg-trump-manchester-united-a8235996.html
シティのオーナーは困るだろうが、このきっかけで改善を?
●やはり都合良く無視するのではなく、フットボールを通じてこういった問題も注目を浴び、そしてそれが改善に繋がるのが理想的だ。
●素晴らしいフットボールが絶賛を浴びているシティだからこそ、そのフットボールが人権問題を隠すのではなく、暴露して改善に繋がると良いだろう。
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