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2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

Ben’s Foot! notes 2018年02月07日

Week 26 後半 - 次期(2019〜22年)の放映権がいよいよ決定する

foot!
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benFoot.pngのサムネール画像のサムネール画像

英国内のプレミアリーグ放映権について、次期の入札は今週から開始する
●これまで通り、高騰は続くのか?
●SkyとBT Sportは権利を維持できるのか?
●オンライン系が参入すればどうなるのか?
●実は、色々と変化の始まりを感じるところがある。
●日本など、英国外にも影響が出るかもしれない!

0024_英国内TV放映権料の推移.jpg

参考:放映権料は何故、こんなに高くなったのか?
(2014/15シーズン『Foot! TUESDAY』 #27、後半レポートより抜粋。)

(1)EU法(独占法)の為、同じテレビ局が独占契約を持つことが出来なくなった。
●2007年まで、Sky Sportsと競争出来るテレビ局が基本的に無かった。
●しかし、権利の一部なら、ライバルが現実的に入札できるようになった。
●ライバルが放映権を取った上、客を増やし、次期のときに試合を更にたくさん取ってしまう、という可能性がある。
●Skyは最低限の試合しか譲らないよう、出来る限り多くの試合をどうしても取りたい。

(2)業界の複雑化:いわゆるQUAD-PLAYを1セットに販売
●ネット、テレビ、電話、無線技術を1セットで販売する、いわゆるQuad-Playという営業法が盛んになっている。
●魅力的なテレビ中継を売りにし、次いでにネット・電話・無線の契約もしてもらうという、増益パターン。
●元々テレビ局だったSkyは、魅力的なサッカー中継さえあれば4つの市場で成功できると考えている。
●元々電話の会社だったBTも、同じ作戦を取っている。
●つまり、以前より遥かに大きな市場を争っている。

(3)封印入札方式、いわゆるブラインドオークション
●国内放映権の契約について交渉はしない。
●決まる方法は封印入札方式、いわゆるブラインドオークションだ!
●各テレビ局が一度だけ入札する。
●しかし、ライバルの提示した金額を知ることは出来ない!
●また、ライバルがいくつあるかも分からない。ライバルが誰なのかも分からない!
●事業の未来をかけた入札なので、これは本当に怖い。
●前々回、電話の会社だったBTがテレビ業界に参入する予定があることすら、知られていなかった!
●他にどこかが参入してくるかもしれないが、それが全く不透明の中、あらゆるライバルに勝てるような金額で入札するしかない!

(4)放映権のパッケージ化
●上記①、EU独占法の関係で、放映権を1つのテレビ局が独占して購入することは出来ない。
●すると、プレミアリーグはこの機会を利用して、放映権を7つの放送枠(パッケージ)に分けて、別々に契約することにした。
●つまり、上記③のブラインドオークションは1回のみならず、7回も行うことになった!相手を倒すような入札を7つもしないといけない!
●土曜日お昼キックオフの28試合についてもオークションを行い、土曜日夕方キックオフの28試合についてもオークションを行い、などなど。


パッケージ化と7つのブラインドオークションの結果
(2014/15シーズン『Foot! TUESDAY』 #27、後半レポートより抜粋。)

前例として、2016〜19年の英国内放映権がどのように決められたか見てみよう。
●現在の契約では、放送される試合が7つのパッケージに分かれている。
●その為、7つのブラインドオークションが行われた。
●結局、Sky Sportsが5つのパッケージ(126試合)を獲得し、BT Sportが他2つのパッケージ(42試合)を獲得した。
0030_英国内のパッケージ契約(2016-19).jpg


今度、入札の対象となる7つのパッケージ(2019〜22年)
今度のパッケージは前期とは少し違う。全体的に拡大の上、多様化も。
●これまであった放送枠は大して変わらない。
●日曜日2試合のキックオフ時間が30分遅くなるようだが。
●しかし、各パッケージの試合数が少し増えている。
●つまり、これまでよりも多くの試合が英国内で放送される(=土曜日15時キックオフから変更される)。
●そして、新たに設けられた放送枠が1つある。
●1シーズンで8試合は土曜日の19:45にキックオフする。(日本時間では翌朝3:45又は4:45になる。)
●土曜日のゴールデンにプレミアリーグが入るのは初めてのことだ!
●また、新たな取組として、平日又は祝日開催の計4節について、全試合(各節10試合×4=40試合)が生中継の対象となる。
●日本では既に経験していることだが、英国では初めての試みとなる。
●尚、土曜日15時キックオフの試合は生で中継できない、という法律は変わっていない。
●合計で、1シーズンの380試合中、200試合が生で放送される。前回の168試合よりも32試合多く、半分以上になったのが初めてのことだ。
●尚、独占禁止法の関係で、1社が148試合までしか獲得できない。
0032_英国内のパッケージ契約(2019-22).jpg
心配事
●実際にスタジアムに足を運ぶサポーターにとって、土曜日15時キックオフが一番行きやすいので、その試合数が更に減らされるのは不満の対象でもある。
●特に、土曜日の19:45キックオフについて、アウェイのサポーターは帰れるかという心配がある。
●また、土曜日ゴールデンにプレミアリーグの中継を入れるのは、家族団欒の時間にどう影響するか。


今度のポイント:テレビ業界の事情が変わった為、変化も
不景気にもかかわらず高騰してきた放映権料だが、現状では永遠に続けられない
●2008年のリーマンショック以降、不景気が続いているイギリスだが、プレミアリーグの市場だけが高騰し続けてきた。
●しかし、2016?19年の契約から、Sky SportsとBT Sportは共に限界を感じてきた。
●共に視聴者数が伸び悩んでいる。解約する人も増えてきた。

その主な理由は視聴料。フットボールを全部見たいなら、果たして幾ら?
●やはり、放映権料がどんどん高くなっていく中、最終的に視聴者にコストが回ってしまう。
●昨日、ベンが新規契約の相談をしてみた。
●Skyのプラットフォームで基本パッケージ+Sky Sports全チャンネル、全てハイビジョン、だが映画などの有料チャンネルは入れない、というプランは:
月、£69.50(=\10,707)の料金となった。
●その上、BT Sport全チャンネル(ハイビジョン)も追加すると、
更に£32.49(=\5,005)の料金となる。
●合計では一ヶ月の視聴料が£101.99(=\15,712)となった。

共にピンチを感じるようになった両局は、ライバル関係を和らげてきた
●両局がコスト削減を進めてきたが、やはりこれ以上、視聴料を値上げすると、視聴者が離れていくしかない。
●その中、ライバル関係を和らげている。
●2019年より、お互いのチャンネルを販売することを発表している。
●(つまり、BT SportがSky Sportsのチャンネルパックに入り、Sky SportsもBTのプラットフォームで見られるようになる。どちらか1つのプラットフォームと、1つだけの契約で両者のチャンネルを全て見られるようになる。)
●これで、視聴料の値引きが期待されている。
●そして、放映権料の高騰に貢献した、両者のライバル関係が協力関係になった為、今後は高騰が続かないかもしれない。
●尚、リニア新幹線のように、入札談合はもちろん違法だけどね!!
●この中、SkyとBTの経営者は強気を示している。「高く払い過ぎることはない」と!

Gavin Patterson氏、CEO、BT Group 【翻訳:桐谷 圭介】
●"We continue to see Premier League content as an important part of BT Sport, but it is only one part. It is one we like and it has performed well for us. We know what it is worth to us and we model that and we bid up to, and no further, than the value of it. We always have a 'Plan B' if we don't get what we want."
我々はBTスポーツにとってプレミアリーグは重要なコンテンツだと考え続けているが、あくまでそれは一部だ。確かに良いコンテンツだし、実際我々のビジネスに貢献してきている。我々はプレミアリーグが我々にとってどこまでの価値があるかをしっかりと認識した上でビジネスモデルを構築しており、その価値までであれば入札できるが、それ以上の金額は出さない。もし、我々が望んだものを手にできなかったとしても、常に「プランB」は用意しているよ。
https://www.theguardian.com/media/2018/feb/02/bt-chief-we-dont-need-premier-league-rights


一番の不明確な要素:オンラインサービスの参入・入札
日本ではお馴染みの現象だが、英国の2強もオンライン系に権利が奪われる可能性も
●SkyとBTがあまりにも大手だし、巨額の放映権料を支払ってきたので、これまで簡単にはオンライン系に権利を奪われることはなかった。
●しかし、大手と競争できるのは大手だ。
●そして、時代の流れに合わせて、今の時代の大手が参入してくる可能性が出た。
●オンライン系の大手、AmazonやFacebookが入札する可能性があると見られている。

英国内でのオンライン事情
●英国では、ネットでテレビを見るという文化が日本よりも遥かに前から根付いている。
●しかし、これまではテレビ局がそれを引っ張ってきた。
●つまり、テレビ局が運営・提供するオンデマンドやネット配信が主なコンテンツだった。(ベンの大学時代ぐらいから。)
●今も、Skyのチューナーから直接アクセスできるオンデマンドのコンテンツが非常に充実している。
●そして、2000年代の途中からオンライン専用の映画配信サービスが始まり、NetflixやAmazon Prime Videoが非常に人気を集めている。
●それぐらいの大手なら、SkyとBTと競争できる日は来るかもしれない。

AmazonとFacebookの実績
●すでに、AmazonがATP World Tourテニスの放映権(英国内)をSkyより奪っている。2019?23年の5年契約となっている。
●また、アメリカではNFLの一部(1年で10試合)の配信権を獲得している。
●一方、FacebookはアメリカでFox Sportsと共同で、一部のUEFAチャンピオンズリーグ試合を配信している。
●クリケットの権利に関しても、積極的に入札している。

今回?次回?
●Skyの看板番組である『Super Sunday』と『Monday Night Football』の放送枠は最も入札額が高く、今回は恐らく奪われることがない。
●しかし、新たに設けられた「この節の全10試合」という枠に関しては、テレビというよりも配信に向いている、配信提供者にとって魅力的だ、というふうに見られている。
●だから、今回はオンライン系が初の試みとして、一部の試合だけを取って、それがうまくいけば次(3年後)から本格的にSkyと競争する官能性もある。


英国外への影響も
●SkyやBTなどの衛星テレビ、ケーブルテレビを視聴するには、物理的に英国内に居る必要がある。
●しかし、オンライン系であれば、そのインフラは原則、世界中どこからでもアクセスできるようにすることは簡単だ。
●本来は権利上、ジオブロックがかかるが、権利さえあれば配信なら、1つのサービスで複数の国、或いは全世界に映像を提供するビジネスモデルは可能だ。
●だから、世界中にビジネスを展開する、オンライン系でグローバルな大手が参入することになれば、今後は英国内にとどまらず、全世界の権利を1セットで獲得するよう、交渉することが想像できる。
●つまり、今後はFacebookやAmazonが全世界の放映権を獲得し、各国で自らのサービスで提供することは、今すぐではなくても、可能性として考えられる。

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