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このブログについて
2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。
Week 15 <後半1>:代表ウィークを巡るトピックス
戦没者追悼のポピー。プレミアリーグでは毎年恒例だが、代表戦では禁止?
●第一次世界大戦の休戦記念日である、11月11日にイングランドとスコットランドがW杯予選で対戦した。
●視聴者の皆さんが良くご存知の通り、休戦記念日の前にプレミアリーグ各クラブが直近のホーム戦でセレモニーなど行い、ユニフォームに「ポピー」の花を飾る。
●同じイギリスである、スコットランドのサッカーチームも同じようなことをする。
●従って、イングランド・スコットランド両国のFAはちょうど休戦記念日に行われるこの代表戦でも、追悼したいという強い気持ちがあった。
●試合前にはセレモニーと黙祷が行われ、そして選手たちはポピーのマークが付いた喪章を付けてプレーした。
●しかし、この行為に対して、FIFAによって処分を課せられることになった!罰金、また勝ち点のペナルティという可能性もある!
●今回、引っ掛かるのは以下のルールである:
サッカー競技規則、2016/17シーズン版、第4条の第4項目
「用具には、政治的、宗教的または個人的なスローガンやメッセージ、あるいはイメージをつけてはならない。競技者は、政治的、宗教的または個人的なスローガンやメッセージ、あるいはイメージ、製造社ロゴ以外の広告のついているアンダーシャツを見せてはならない。いかなる違反であっても、競技者およびチームは、競技会の主催者や各国サッカー協会、またはFIFA によって罰せられる。」
時系列でこの事件の背景
●このルールは2007年に、IFAB(国際サッカー評議会)によって導入された。
●一応、国内リーグ戦などどの試合にも当てはまるが、最後に「競技会の主催者や各国サッカー協会」とあるように、ルールの解釈や適用範囲は主催者次第である。
●つまり、プレミアリーグ戦の場合はプレミアリーグやイングランドのFAが決めることだ。
●勿論、プレミアリーグやFAのスタンスでは、ポピーとは決して政治的なものではない。
●しかし、国際試合の場合はFIFAの管轄下になり、解釈が異なる。
●2011年11月の代表ウィークでは初めて大きな話題となった。イングランド対スペインの親善試合でリーグ戦同様、ユニフォームにポピーのマークを付けたかったが、このルールが引っ掛かり、FIFAから許可が下りなかった。
●当時、FAの名誉会長であるウィリアム王子がFIFAにアピールするなど、大きな話題になった。結局、妥協としてポピーの付いた喪章をつけることになった。
●同様にキプロスと対戦したスコットランドも、ノルウェイを迎えたウェールズもポピーの喪章をつけてプレーした。
●その前例がある為、今回も問題がないと考えたFAやSFAが同じようなポピー喪章をつける予定をFIFAに連絡した。
●しかし、今回はInfantino会長へと政権が変わったFIFAが5年前とは違う解釈を取り、ポピー喪章の着用が反則になると主張した。
●FAとSFAは交渉するもFIFAが折れず、結局、FIFAの指示を無視することにした。
指示が無視されたとのことで、FIFAが尚更怒ったようだ...
19日(土)、FIFAのスポークスマンが「調査・処分」の対象を明確にした (出典:ESPN)
●"The disciplinary committee decided to open proceedings against the FA and the Scottish FA in relation to a series of incidents reported after the match, including the wearing of arm bands with a poppy symbol, several cases of fan misconduct, a non-approved pre-match ceremony, the display of flags by fans with poppies and members of the armed forces, the display of poppy symbols on the big screen and T-shirts displaying poppies placed on seats.
「FIFA規律委員会は、試合後に報告を受けた一連の事件について、FAとスコットランドFAに対して調査を始めることにした。この一連の事件とは、
・ ポピーのシンボルが入った喪章の着用
・ サポーターの不適切な行為
・ 非承認の試合前セレモニーの実施
・ サポーターによる、ポピーが入った旗の掲揚
・ 英国軍人の登場
・ 場内大画面における、ポピーシンボルの表示
・ サポーターに対する、ポピーTシャツの配布
などを含む。」
●"These incidents potentially constitute breaches of the laws of the game 2016/2017, the FIFA disciplinary code, the FIFA stadium safety and security regulations, the regulations of the 2018 FIFA World Cup and the guidelines for FIFA match officials."
「これらの事件は2016/17のサッカー競技規則や、FIFA規律規定、FIFAのスタジアム安全・安心規定、2018年FIFAワールドカップの規定、またFIFA審判員のためのガイドラインに対して、反則と見なされる可能性がある。」
FAのMartin Glenn会長、10日 (出典:Daily Mail紙)
●"Unfortunately, with new personalities coming in there [FIFA], they felt they wanted to make a bit of a stand.
「残念ながら、FIFAのトップに新しい人達が登場したので、彼らはどうやら存在感を示したがっているようだ。」
●"If they fine us, we'll contest. They have much bigger problems they should be concentrating on.
「罰金を課せられる場合、アピールするつもりだ。FIFAにはこれより遥かに大きな問題があるので、それに集中するべきだろう。」
●"We'll contest it strongly. I'm confident our legal position is right and our moral position is right. We believe our case is absolutely rock solid. So good luck."
「強く反対するつもりだ。私たちは法的な立場も、道徳的な立場も正しいということに自信がある。私達の主張は絶対確実である。だから、かかってこい。」
Theresa May首相、2日の首相質疑応答(英議会・庶民院)
●"I think the stance that has been taken by FIFA is utterly outrageous.
「私は、FIFAの取ったスタンスが本当にとんでもないと思う。」
●"Before they start telling us what to do, they jolly well ought to sort their own house out."
「私達に指示を出す前に、まずは自分たちの振る舞いを正すべきだろう。」
FIFAのFatma Samoura事務局長、2日 (出典:Sky Sports)
●"Britain is not the only country that have been suffering from the result of war.
「戦争によって被害を受けた国はイギリスだけではない。」
●"Syria is an example. My own continent [Africa] has been torn by war for years.
「シリアも一例である。私自信が生まれたアフリカも長年、戦争によって引き裂かれている。」
●"And the only question is why are we doing an exception for one just one country and not the rest of the world."
「だから、問題は一つだけだ。一つの国だけ特別扱いにする理由は一体何なのか?」
「ポピー」とはそもそも「政治的な」ものなのか?
基本的にポピーを身に付ける人は99%、政治的なものだとは考えていない。ただ...
(参考)
●ポピーは退役軍人および現役の軍関係者を扶けるための募金活動「ポピー・アピール」への募金と引き換えに英国在郷軍人会から配布されるものだ。この月の第二日曜日は戦没者追悼記念日として、女王および王室と議会のそれぞれ数名によって、ロンドンの戦没者記念碑にケシの花輪が捧げられる。ほかにも国中の各地域で同様の式典が執り行われている。
●ケシの花の持つ意味は、フランドル(フランダース)の地で戦死した兵士たちを埋葬した土地に芽吹いた赤い花にまで遡る。1915年に作られたジョン・マクレー中佐の詩「フランダースの野に」の中にある胸を打つような描写を元にして、この花は1920年から北米で、その翌年から英国で追悼のシンボルとして採用された。
Royal British Legion(英国の退役軍人会)のコメント (出典:BBC)
●"The poppy is not a political statement or 'a sign of support for war"' but instead a symbol of 'remembrance and hope'.
「ポピーというものには政治的なメッセージや、戦争への支援という意味が一切入っていない。むしろ、追悼と希望のシンボルである。」
●"We see no reason why the poppy should be banned from players' shirts as it is not a political symbol."
「だから、政治的なシンボルではないということから、サッカー選手のユニフォームに付けるのを禁止する理由はないだろう。」
しかし、場合によっては政治的な意味を持たせられることがある。 (出典:BBC)
●1921年、英国で初めて採用された当初は、完全にチャリティ目的のものだった。退役軍人や戦没者の家族をサポートする為のものだった。
●しかし、世界各地が再びヒートアップするようになった1930年代には、「Peace Pledge Union」という英国の平和団体が登場した。
●同団体は、「赤いポピーは、どうしても軍事力や戦争の正当化との関連性を避けられない」との主張で、明らかに「平和」との関係を強調した白いポピーを販売した。
●また核戦争が心配された1980年台にも、Campaign for Nuclear Disarmament(核軍縮キャンペーン、CND)のアピールによって白いポピーが再び流行った。
英国サッカー界で有名な「例外」はWBAのJames McClean
●McCleanは北アイルランドとアイルランドの国境に近い、Derry(歴史的な訳あって公式にはLondonderry)という街の出身。
●アイルランド紛争では多くの犠牲者が出た街である。特に、1972年のBloody Sunday(血の日曜日事件)では、デモ行進中の市民27名がイギリス陸軍落下傘連隊に銃撃された。そのうち、14名が死亡、13名が負傷。
●McCleanは、ポピーが英軍の関わった全ての戦争・紛争のシンボルであると考え、英軍がDerryでもたらした被害を許せないということから、ポピー着用を強く断る。
「ポピー」という自由のシンボルを強制的に付けさせるなんて...
ポピーをユニフォームにも付けるという発想は、実はつい最近のことである
●サッカー界でもこの時期に1分間の黙祷を捧げる伝統が長年にわたって続けられてきたし、監督たちにはコートの襟にポピーをつけることが認められてきた。
●だが、選手たちのユニフォームにこの花をつけようという考えは実はごく最近生まれたものだ。
●プレミアリーグで初めてそれを行ったのは2003年のレスター・シティだった。
(100万人の英国人がロンドンの通りに繰り出し、イラクに対する戦争に反対した年のことた。)
●このアイディアはすぐに広がりを見せ、2009年までにはリーグの20チーム中18チームまでもがポピーを掲げるようになっていた。
●2010年にはマンチェスター・ユナイテッドとリヴァプールも続き、全チームの参加が完了。
●2012/13シーズンからはリーグがポピーの公式デザインを導入した。
「ポピー・ファシズム」
●実は英国内でもポピーをめぐってもある程度の論争が起こっている。
●具体的には、もともとは自発的でポジティブなものであったこのシンボルの使用が公人や公的機関にとってほぼ義務と化すという、重点の置き方の変化をネガティブに捉えるものだ。
●ユナイテッドとリヴァプールは別の形で退役軍人のためのチャリティ活動を支えてきたのだが、「Daily Mail紙」の尊大な圧力キャンペーンに押され、2010年にはポピーを採用することを強いられた。
●同じく圧力をかけられた、英国Channel 4のニュースアナウンサー、John Snowがこのようなやり方に対して、その追悼の対象となっている戦争が自由の名の下に戦われたはずであることを皮肉りつつ、「ポピー・ファシズム」と避難した。
さて、結論は?ベンの思いとして
●英国では最近、「ポピーを自由に着用する」という発想から、「ポピーを着用しないと悪い」というように変わったなら、非常に残念だと思う。
●かつては確かに、個人個人の判断で洋服にポピーを付けたり、11日のいつもの時間に皆で黙祷に参加したりする程度で十分だった。
●英国のサッカー界も追悼したいという考えは、基本的に良いことだとは思うが、喧嘩の原因になるほど強く拘るのはどうかな?
●FIFAにとって、「一部の国の一部の人でも政治的なシンボルとして捉えるなら、念のためここではやめましょう」というスタンスは理解できる。
●しかし、イングランド対スコットランドのように両チームが合意する場合は、FIFAがわざわざ止めようとする必要はあるのか?
●ところで、2007年にIFABがそのルールを導入したとき、IFABのメンバーである英国4協会が賛成したので、今更反対すると立場が弱いかもしれない...
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