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このブログについて
2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。
Week 3:移籍マーケットを巡る、誤った社会通念
Jake Cohen, TheSetPieces.com
●いよいよ31日、最終日が迫っている移籍マーケット。
●この時期はどの新聞を見ても、移籍に関して様々な記事が掲載されているし、サポーターもコメンテーターもその話題を熱く議論したりすることが多い。
●しかし、我々の移籍に関する「常識」は本当に正しいのか?
●実は、移籍マーケットを巡る、誤った社会通念がたくさんある!
●それに関して、フットボールビジネスに詳しいスポーツ弁護士、Jake Cohen氏が『TheSetPieces.com』にて6つの「誤った社会通念」を紹介して、分かりやすく解説している。
●それを基に、ベンの調べた情報も混ぜて説明したいと思います。
(1)「移籍金が高くても、ユニフォームの販売で元が取れる」
●良く言われる。スター選手を取れば、めっちゃ多くのファンがその選手のユニフォームを買うから、早く元が取れる。
●例えば、Ibrahimovicがユナイテッドに移籍したとき、『The Sun』では「たった1週間のユニフォーム売り上げが£7600万に上った為、そのお金でPogbaも取れる」という報道があった。
出典:
●しかし、実際はユニフォームの販売で元が取れたクラブは一切ない。
●何故なら、ユニフォーム販売の売り上げについて、AdidasやNikeなどサプライヤーが基本的に約85〜90%を取るからだ。クラブに入ってくるのは約10〜15%だけだ。
●ユニフォームサプライヤーとの契約は、基本的に「ライセンス契約」である。
サプライヤーがクラブからライセンスをもらい、ユニフォームの生産から販売や流通まで担当する。
●クラブはそもそも、そんなことをするインフラを持っていない!幾らビジネスになっていると言っても、あくまでもフットボールクラブなのである。クラブの公式オンラインショップも、基本的に外部委託する。
●また、ユナイテッドの場合は、10年間でAdidasから£7億5000万を貰う契約になっているが、基本金が世界最高額だった一方、ユニフォーム販売の売り上げについてクラブに入ってくる割合が通常よりも低い。
決まった枚数が売れるまで、ユナイテッドに何も入ってこない。その枚数を超えた分に対して、あるパーセンテージを貰える。
Herbert Hainer(Adidas CEO)、ユナイテッド契約発表時、2014年7月
●"This collaboration marks a milestone for us when it comes to merchandising potential. We expect total sales to reach £1.5 billion during the duration of our partnership."
「ユナイテッドとのコラボレーションは、我々にとってかつてないほどの営業ポテンシャルになる。我々は10年間で£15億の売り上げを期待している。」
出典:
●なお、『The Set Pieces』の推定では、ユナイテッドはIbrahimovicのユニフォーム販売に関して、最大300万ポンドぐらいの収入を期待できる。
●しかし、そのうち、Ibrahimovicが居なければユナイテッドのユニフォームを買わなかった人は本当にどれぐらい居るのか?
(2)「ファックスのトラブルで、移籍が遅れた・間に合わなかった」
●ペーパーワークをファックスで送ろうとしたが、機械のトラブルで時間がかかり、間に合わなかった、というような話がよく出てくる。
●しかし、今の時代にファックスでペーパーワークを提出するようなアナログ仕組みではない。
●国際移籍については2010年から、FIFAが「Transfer Matching System=TMS」というシステムを導入した。
●2クラブ(と選手)の間に移籍を合意した時点で、両クラブがこのシステムで移籍の情報を記入し、書類をアップロードする。(システム上に分かりやすいフォーマットがある。そこに必要な情報を記入して送信する。)
●両クラブが送信した情報が一致していれば、登録が成功し、移籍が成立する。
●尚、各クラブに「TMS担当者」を指名する義務がある。各国の協会が各クラブの「TMS担当者」に研修を提供する義務があるが、実はクラブ内で行うことが多い。
●FIFAの「TMS General Manager」、Mark Goddard氏によると、正しく記入すれば移籍が成立するのに7〜10分しかかからない。
●国内移籍についても、各国の協会が似たようなシステムを導入している。
●移籍マーケットの最終日など、関係者が同じ場所で集まることが困難な場合、両クラブ間に書類を送る必要があるが、今の時代にはPDFとメール送信で済む話だ。
●未だにファックスを使っているクラブがあれば、そのクラブが悪いだろう!
●しかし、ネットの時代にも機械トラブルが起こることもある。
●2013年1月移籍マーケットの最終日に、スイス代表MFのPajtim Kasamiがフラムからイタリアのペスカーラに移籍することがギリギリのところで決まった。
●しかし、イタリアのクラブが移籍マーケットの最終日に取引の場所として使う、ミラノ市内ホテルでは、Wi-Fiの接続が落ち、ペスカーラが必要な情報を登録することができなかった。
●結局、移籍が成立しなかった。
●尚、以前『Foot!』で紹介したように、プレミアリーグでは「取引シート」という仕組みもある。
●移籍期限まで2時間を切ったところ、移籍について合意に達するも必要な書類を発行する時間がない場合は、「取引シート」という簡単で仮のものをまず移籍期限までに提出すれば、正式なものを登録するのに2時間の延長をもらえる。
●例えば、移籍期限が23時の場合、21時〜23時の間に「取引シート」を提出すれば、正式なものを登録する期限が翌朝1時になる。
(3)「補強の『総支出額』よりも、『実質支出額』を重視するべき」
●最近、イギリスのサポーターやメディアは「net spend=実質支出額」について熱くなることが多い。
●つまり、クラブが補強に使ったトータルの金額ではなく、放出した選手の移籍金も含めて、プラスマイナスのことである。
●監督やクラブを擁護するサポーターは、「確かにお金を使っているが、移籍金の収入も結構あるから、良いビジネスだろう!プラスマイナスにすると、こんなに安いお金で強いチームを作ってくれている!」という。
●一方で、監督やクラブを批判するサポーターは、「プラスマイナスにすると、これだけケチっている!お金あるだろうから、もっと良い選手を取ってくれ!」という。
●確かに、これは分かりやすい指標になるので、メディアが使うことも多い。
●しかし、クラブがこのような単純計算をすることはまずない。
●ビッグクラブの場合は、移籍金を一括か二分割で支払うことが多いが、昨シーズンの『Foot!』で紹介したように、補強に関してクラブが支払う金額はその選手の契約年数に分けて計上する。(いわゆる減価償却。)
●例えば、アーセナルは£3000万の移籍金でXhakaと5年契約を結んだ。その為、今年度から5年間、£600万の支出を計上する。
●一方、売る側のボルシア・メンヒェングラッドバッハは、今年度の帳簿に£3000万の全額を計上する。
●単純なプラスマイナスではない。
●また、移籍にかかるコストはもちろん、移籍金だけではない。
●加入する選手の報酬なども大きなコストになる。
●Ibrahimovicのようなフリートランスファーは、移籍金のプラスマイナスでは非常に安い買い物になるが、もちろんユナイテッドが高い給料を支払っているわけだ。
(4)「今季、移籍金の予算が〇〇万ポンド」
●イギリスのメディアでは、「マンチェスター・シティがグアルディオラに£2億の移籍金予算を」というような見出しが良く出てくる。
出典:
●しかし、(3)のように、移籍にかかるコストはもちろん、移籍金だけではない。最終的に報酬のコストが移籍金のコストを超える場合も多い。
●補強に関して予算があるとしても、そのうち幾らが移籍金に使われるか、幾らが報酬に使われるか、幾らがエージェントの分に使われるかは、取引が始まってみないと分からない。
●だから、その報道に「報酬などを含めて〇〇万ポンド」とはっきり伝えていれば、本当かもしれないが、ただ「移籍金の予算」という記事だったら、記者がそれを把握できているわけがないので、無視して良いだろう。
(5)「エージェントの仲介はクラブにとって都合が悪い」
●Pogbaの移籍に関して、エージェントのMino Raiolaが移籍金の20%も貰ったことが大きなニュースになった。また、交渉についても一時期、ネックになったという報道があった。
●エージェントにはクラブが年々、たくさんのお金を支払っている。相当恐ろしく、力を持つ存在になってきた。
●しかし、エージェントの力を貸すのは選手や監督だけではない。
●クラブも、エージェントの仲介をお願いすることが多い。
●どのような場合かというと、放出したい選手が居れば、なるべく高い移籍金で取ってくれるクラブをエージェントに探してもらう。
●例えば、Kia JoorabchianとGiuliano Bertolucciがそのようにクラブの為に仕事することが多い。
●Ramiresが£2500万の移籍金でチェルシーから中国の江蘇蘇寧(こうそ・そねい)へ移籍したとき、チェルシーがJoorabchianとBertolucciの仲介を依頼した。
●Paulinhoがスパーズから広州恒大(こうしゅう・こうだい)に移籍したとき、スパーズがJoorabchianとBertolucciの仲介を依頼した。
●このケースや、Robin van Persieがユナイテッドからフェネルバフチェへ移籍したときように、売る側のクラブに依頼を受けたエージェントが元々、その選手のエージェントでもあるケースが少なくない。
●その場合は、選手の文面による同意が必要。(利害の衝突が生じ得る為だ。)
●しかし、選手が同意すれば、エージェントの手数料を払わなくて良い。その代わりに売る側のクラブが払うことになる。
(6)「報酬と肖像権」
●最近はMessiの脱税事件や、チェルシーがまだMourinhoの肖像権を持っていたことでユナイテッド監督就任が遅れた事件など、「肖像権」が話題になるケースがある。
●しかし、選手の契約更新や報酬について話題が出てきても、「肖像権」のことは忘れられがちである。実際は選手たちの収入に「肖像権」の割合が比較的に大きい。
●目安として、基本給料+20%の肖像権が一般的である。
(その上に、クラブがその選手を使う営業活動による直接利益の一部ももらう。)
●だから、「〇〇選手の週給が〇〇万ポンド」という報道がよく出てくるが、それは肖像権込なのか?それとも別なのか?それにより、実際の金額がかなり異なる。
●クラブと選手が正式に報酬の詳細を発表することが殆どないので、報道に出た場合、基本的にある関係者が記者にリークしたことになる。
●しかし、その記者のソースが誰だったかによって、肖像権込なのか別なのかも変わるし、記事ではっきりしていなければ、どう解釈すれば良いかも不明になる。
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