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2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

その他の試合 2011年07月29日

第35回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会準決勝 東京Vユース×柏U-18@三ツ沢

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201107291557000[1]mitsuzawa.jpgファイナルのリターンマッチ。昨年度も覇権を懸けてぶつかり合った両雄、東京ヴェルディユースと柏レイソルU-18が1年の時を経て三ツ沢の地へ帰ってきました。とはいえ、実は今回の大会でも両者はEグループに同居。1次ラウンドの最終日に激突し、0-2で勝利を収めた柏が首位通過。敗れた東京Vは、他のグループ2位と得失点差の比較で辛うじてグループ突破を決めたという経緯もあります。迎えた一昨日の準々決勝では、東京Vが同じ関東の強豪・浦和ユースを0-5で粉砕すれば、柏U-18は鹿島ユースに先制を許しながらも最後は4-2で快勝。今回も好バトルが期待される中、どんよりと立ちこめていた雲はいつのまにか夏のそれに。絶好のコンディションで、セミファイナルの第1試合はキックオフされました。
まずチャンスを創ったのは柏。3分、木村裕(2年・柏レイソルU-15)のパスから川島章示(2年・柏レイソルU-15)が繋ぐと、フリーで飛び出した蓮沼翔太(3年・柏レイソルU-15)のシュートは枠の左へ。6分には東京Vも反撃。南秀仁(3年・ヴェルディSS相模原)が左へ流すと、中島翔哉(2年・東京ヴェルディJY)のエリア内シュートは、柏CB郡司昌弥(3年・柏レイソルU-15)が体でブロック。8分には柏に決定機。左サイドから山中亮輔(3年・柏レイソルU-15)が上げたクロスはGKがかぶってしまい、走り込んだ中川寛斗(2年・柏レイソルU-15)のボレーはワンバウンドしてクロスバーに当たる不運。お互いにチャンスを創り合います。
ただ、両者の攻撃姿勢は対照的。柏の「レイソルらしいスタイル」と下平隆宏監督も自負する“繋ぐ”スタイルは今日も健在。象徴的なのはGKの中村航輔(2年・柏レイソルU-15)で、簡単に蹴り出すシーンは皆無。時にはサイドから戻されたバックパスを中央のボランチや攻撃的な中盤2枚にダイレクトで付けたりと、抜群の視野と足元を披露します。
一方の東京Vは、ある程度相手に回させるような形から、ポイントに入った時は「質の高いプレス」(下平監督)を前から敢行。奪ったボールは杉本竜士(3年・東京ヴェルディJY)や中島が「仕掛けなきゃ始まらないんですから」と語る楠瀬直木監督の意図を汲むようなドリブル勝負に。これには「ああいうクラスのドリブラーはあまり対戦していない」と舌を巻いた下平監督。ポゼッションとは裏腹に、攻守の切り替えの速さで上回る東京Vがゲームをコントロールします。
そして15分に先制したのは、やはり緑。相手ボールを高木大輔(1年・東京ヴェルディJY)が奪って繋ぐと、中島のパスを受けた南は緩やかなドリブルから、突如ギアを3段階くらい上げたかのような強烈ミドル。ボールはGKの脇を擦り抜け、スコアが動きました。
重いストレートを食らった柏も、17分には得意の左サイド攻略から山中がクロスを送りましたが、中とわずかに合わず。すると23分、東京Vは右サイドで中島と南の“ラモス&ビスマルク”を彷彿とさせるようなパス交換から南がフリーで抜け出し、1本目のシュートは中村航輔がよく防いだものの、こぼれを再び南がプッシュ。点差が広がりました。
さて、小さくないビハインドを追い掛けることになった柏。いわゆる“持たされている”状態に加え、「裏へ攻め急いだ所はあった」と指揮官も話した通り、なかなか3トップの中央を務める川島へボールが入らず、前線の動きも小さくなってしまいます。確かに東京Vの最終ラインは高い位置をキープし、全体がかなりコンパクトだったので、狭い局面よりスペースのある裏を狙うのはわかりますが、結果的にスタイルとの相違もあって奏功せず。東京Vがうまくハメた形からアドバンテージを握って、45分間は終了しました。
「矛盾しているかもしれませんが」と前置きしながら「負けてはいるけど攻め急ぐなと話しました」とハーフタイムを振り返った下平監督。この指示を受けて、後半はスタートから柏が攻勢。49分には平久将土(2年・柏レイソルU-15)が右へ振ると、木村を回った鈴木達也(3年・柏レイソルU-15)のクロスは何とか東京VのGK中村一貴(3年・東京ヴェルディJY)がセーブ。54分にも左サイドでじっくりボールを回しながらCKを獲得するなど、ゆったりとした前への推進力が表出し始めます。
さらに62分には「会心のセットプレー」(下平監督)が炸裂。ゴール左でのFKは、山中がまたぎ、中川がまたぎ、直接狙うかに見えた秋野央樹(2年・柏レイソルU-15)はカベの横へショートパス。潜り込んでいた中川が縦へ繋ぐと、川島がフリー。周到に用意されたトリック成就かと思われた瞬間、しかしシュートは中村一貴が足で弾き出すビッグセーブ。ゴールには届きません。
こうなると65分にはカウンターから南が左ポストにぶつけるシュートを放つなど、流れは再び東京Vへ。そんな中で、68分に柏が見せたのはシンプルなアタック。鈴木が右へ大きく蹴ったボールはタッチラインを割りそうな中、8分前に投入された荒木大吾(3年・柏レイソルU-15)は左足アウトで残すと、ドリブルで運んでクロス。走り込んだ平久のヘディングはゴールネットを捕獲。「大会前まではスタメンじゃなかった」(下平監督)23番の追撃弾は、得点ランクトップに並ぶ大会6ゴール目。ラッキーボーイの一撃で、黄色の勢いが増すかに見えました。
それでも「ウチがボールを回してたので、ヴェルディさんは後半運動量が落ちると思ったのに、落ちなかったのは予想外」と下平監督が話し、「まだまだ足りないけど、頑張ってるな、追い込んでるなという所は見えてきている」と楠瀬監督も一定の評価を与えたように、失点にも気落ちせず、攻守に集中したパフォーマンスを継続させた東京Vは、流れを完全に明け渡すことなく時間を経過させていくと、84分には攻撃陣から守備陣へ大きなプレゼント。中島のヘディングは一旦クロスバーに阻まれますが、そのこぼれから田中貴大(3年・東京ヴェルディJY)が右クロス。南を経由して、最後は再び現れた中島が確実にゴールへ流し込む3点目。東京Vが難敵・柏に昨年の返り討ちと、3日前のリベンジを果たし、連覇に王手を掛ける結果となりました。
柏はハッキリとしたスタイルを持つ好チーム。アカデミーで一貫している“繋ぎ”に特化したスタイルは一長一短で構築されるものではなく、完成度もかなり高かったと思います。近年でも仲間隼斗が熊本へ、島川俊郎が仙台へ、そして指宿洋史がジローナへ加入していったことが証明しているように、ここで育った選手は他クラブからも高く評価されており、今日は悔しい結果を享受しましたが、これをとことん突き詰めた数ヶ月後を、また見てみたいと思わせる楽しいチームでした。
「勝たせるだけならもう少し戦術的にできるんですけど、勝つだけじゃあ伸びないんで」と楠瀬監督が話す東京Vは、他から見れば「個の技術が高いし、ハードワークもできる」(下平監督)厄介なチーム。面白いのは対戦相手の監督が口を揃えて、「ウチにとってはやりにくい相手」と東京Vを評する所です。ということは、つまり他のどのチームとも異なる個性を持っているということ。「サッカーは不条理なことが起こるんで、今の内にそういう所へ追い込んでおかないと」なんてことを飄々と語る指揮官に率いられたここも、おそらく常に進化し続けていく魅力的な集団。多くの人に見てもらいたいチームです。   元・AD土屋

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