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2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

Jリーグ 2011年05月07日

J1第10節 柏×浦和@国立

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201105080042001[1]kokuritsu.jpg柏にとっては2年ぶりに開催された聖地国立でのリーグ戦。ホームゲームで24222人と発表された観衆の数字と、アウェイゴール裏を埋め尽くしたファナティックな“赤”が、J1の舞台へ帰ってきたことを何より如実に証明しています。おなじみ柏のソウルソング“柏バカ一代”に対しても、コールリーダーの話には耳を傾け、歌が始まると同時に大音量の浦和レッズコールで打ち消しにかかる辺りはリスペクトの現れ。ゴールデンウィーク最後のゲームは、降りしきる雨をモノともしない熱狂の中で幕を開けました。
電光石火。先制は柏。右サイドで酒井がレアンドロからのリターンを素早くクロスに持ち込むと、ニアへ飛び込んだのは2戦連発弾でスタメンの座を勝ち取った北嶋。ゴールネットが揺れたのは、開始わずかに56秒。「取るべき人が取ってくれた」と大谷も話す、エースの3戦連発弾で、ホームチームがいきなりアドバンテージを奪取しました。そして、この1点は柏にとってゲームプランを一層思い通りに運ぶための、大きな要素となったのです。
立ち上がりの15分くらいまでを全体で見れば、ポゼッションで上回っていたのはやや浦和。7分には原口がミドル。8分には柏木のCKから、原がヘディングシュート。16分にはマルシオ・リシャルデスの縦パスを、うまく反転した原がフィニッシュ。先制ゴール以降は、3分にレアンドロがミドルを放った以外にチャンスのなかった柏を、手数でも上回ります。ところが、「浦和が攻めてくれれば攻めてくれるほど、ウチのチャンスだと思ってやってた」と話したのは柏不動のボランチ栗澤。この発言の真意は、ネルシーニョ監督が明らかにしてくれました。曰く「浦和が攻撃に出た時は柏木が上がって、山田が1人アンカーで残る。その山田の両脇にスペースが空くので、相手のサイドバックと2列目、トップの連携をブロックしてニュートラルにすれば、奪った後に山田の周囲のスペースへ効果的にボールを入れてカウンターができる。そういうトレーニングは積んできた」と。浦和はここ最近採用していた4-3-3から、柏木と山田暢久をドイスボランチ気味に置く4-2-3-1でスタートしましたが、柏も「3トップなのでサイドに基点を創られると厳しくなる」(栗澤)と攻撃的な中盤をいつもより外側に配置。これにより、「マークに付く人をハッキリできた」(栗澤)ことで、まずはサイドでの攻防で機先を制します。これを嫌がってか、原とマルシオは比較的中央に位置を取りましたが、結果として流動的過ぎることで、フォローを得られなかったエジミウソンが孤立。マルシオも埋没する中で、ボールの集まった柏木が前に出ていくのはいわば必然だったとも言えると思います。これに「1点目を取ったことで相手が多少前がかりになった」(大谷)部分もプラスされ、柏の前にズラリと好条件が揃いました。
そして、まさにそのカウンターが発動したのは21分。浦和のCKを跳ね返すと、自陣からレアンドロは左へ最高のロングパス。受けた大津が短く繋ぐと、エリア外から「低く抑えて打とうと思っていた」ジョルジ・ワグネルのミドルがゴールの左スミ下へ突き刺さります。形こそ相手のセットプレーを奪ってからだったものの、カウンターからの結実という面ではまさにネルシーニョ監督の狙い通り。点差が広がりました。
以降もボールを握りながら、前が手詰まりになった浦和は22分という早さで宇賀神を下げて野田を投入する荒療治に出ましたが、「もうちょっとカウンターが速くて、前に出てくると思っていた」と増嶋が話したように、なかなか縦へ加速するスイッチが入りません。一方の柏は34分、レアンドロのスルーパスから大津のシュートは枠の左へ。39分、大津のパスを受けたレアンドロがダイレクトではたいたスルーパスはわずかに北嶋届かず。さらに41分、自陣でボールを奪うと栗澤が繋ぎ、レアンドロのパスはまさに孤軍奮闘を強いられた柏木がクリアしましたが、このカウンター時に柏が掛けた人数は、守る浦和の倍。「奪った後のレアンドロが空いた所を突いていこうと言っていた」(栗澤)狙いも、それまでのチャンスすべてにレアンドロが絡むなど完璧に体現。攻守でポイントをしっかり押さえた柏が2点をリードして、45分間は終了しました。
後半も先にチャンスを創ったのは柏。47分、大津が左サイドで粘り、ワグネルのクロスは田中がヘディングで枠へ飛ばしましたが、山岸がファインセーブ。さらに51分には再びレアンドロを経由した高速カウンター。フィニッシュには結びかなかったものの、後半もカウンターが大きな武器になり得ることを証明します。まずは1点を返したい浦和は58分、右サイドでマルシオからボールをもらった原が強烈なミドルを枠内へ。59分、またも右サイドで柏木が溜めると、上がった高橋のクロスは柏DFがクリア。この前後から原と高橋には積極性が出始め、右サイドが活性化してきますが、もう1つアクセントが足りず、決定機を掴むまでには至りません。
ペトロヴィッチ監督は65分、スピラノビッチに替えてエスクデロを投入。山田暢久がCBに下がり、柏木をアンカーに、その前へエスクデロ、マルシオ、原、原口を並べる4-1-4-1気味にシフト。67分には原がドリブルで華麗に2人を置き去るも、3人目の大谷がスイープ。68分、エスクデロの右クロスを、二アでエジミウソンがすらし、マルシオが走り込むも、シュートは力み過ぎてヒットせず。2点が重くのしかかります。
70分、ネルシーニョ監督が切った1枚目のカードはワグネルに替えて橋本。すると橋本はいきなり71分、74分に積極的なオーバーラップから田中の決定機を演出するなど躍動します。一方、77分にペトロヴィッチ監督が切った最後のカードはマゾーラ。これで、攻撃的なポジションには原口、エスクデロ、マゾーラとドリブラー3人が並びましたが、率直に言って機能していたとは言い難いと思います。
逆に、冴えまくるネルシーニョ采配。83分、レアンドロの左FKを二アでその8分前に投入されていた澤がヘディング。山岸が辛うじて触り、ポストに跳ね返ったボールはDFがクリアしましたが、そこにいたのは「彼は今、ゴールの匂いがすごくしているのでしょう」と指揮官も笑顔で言及した北嶋。3-0。勝敗は決しました。浦和も92分、相手が一瞬見せた隙を突いて、最後まで戦う姿勢を見せていた原口が1点を返しましたが、時すでに遅し。「戦術をしっかり理解して、90分継続して遂行できた」とネルシーニョ監督も認める完勝で、柏が早くもシーズン4勝目を挙げる結果となりました。
浦和は個人のプレーは規則的なのに、チームとしてのプレーが規則的ではないように見え、強烈な個の組織化に苦しんでいる印象です。特に今日もかなり突かれていた、攻守のトランジションの遅さは致命的。厳しいゴールデンウィークとなってしまいました。
勝った柏はスカウティングも含めて、あらゆることがハマった、まさに完勝。ネルシーニョ監督も「今シーズンの5試合の中でも、今日は戦術面で一番良い内容だった」と手応えを語りました。J2を戦ってきた昨シーズンから確実に積み上げてきたベースも、さらにワンランク上がってきている太陽王。“日の出の勢い”はまだまだ止まりそうにありません。

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