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2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

Jリーグ 2011年04月24日

J1第7節 大宮×柏@NACK5

foot!
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201104232254000[1]nack.jpg“日常”という言葉が本来どういう意味を持つのかということを、おそらく日本中が考えていたであろう、この1ヵ月あまりの時を経て、今日“Jリーグのある日常”が我々の下に帰ってきました。ただ、依然として普通の“日常”を取り戻すことも叶わない、たくさんの方々がいることも決して忘れることはできません。試合前に行われた、今回の大震災で亡くなられた方々へ向けた黙祷。大宮サポーターから巻き起こった「頑張れ日本」コール。今シーズンのJリーグはプレーする選手、監督やコーチをはじめとするクラブスタッフ、声援を送り続けるサポーター、そして我々メディアの人間にとっても特別なシーズンであり、その意識は常に持ち続けていかなくてはならないと思います。
さて、大宮は開幕戦の4-2-3-1から、中断期間のトレーニングマッチでも採用されていた4-4-2へシフトチェンジ。柏はおなじみの中盤4枚が中に絞った形の4-4-2で、再開幕に臨みます。 最初にチャンスを掴んだのは柏。開始わずかに1分、茨田が長いドリブルから左へ送り、最後はジョルジ・ワグネルのシュート気味にも見えたクロスはオフサイドとなりますが、開幕戦の好調を維持するかのような出足を見せます。しかし、3分に柏陣内深くでパク・ドンヒョクのクリアをブロックした流れから、渡部がわずかに枠の左へ外れるシュートを放つと、ここからは大宮が圧倒。6分、杉山の右クロスをラファエルが胸で落とし、東の左足ボレーはバーの上へ。16分、上田が開幕戦の鹿島戦でネットを揺らしたのとほとんど同じ、右寄りのゴールまで約25mの位置から繰り出したFKはわずかに枠の右へ。惜しいシーンを続けて創出します。
大宮がペースを握った要因の1つは、2トップの「しっかりボールを収められる」(茨田)技術。イ・チョンスもラファエルも前線に張るタイプというよりは、広範囲に動いてボールを引き出すことが多いタイプ。「ボランチとCBの間で受けて起点を作られたので、そこの受け渡しをスムーズにできれば良かった」と柏のボランチに入った大谷も振り返ったように、柏は相手2トップへ入るボールに的を絞り切れず、後手を踏む格好に。また、その影響もあってか、中盤を務める4枚の距離感が遠く、セカンドもほとんど大宮が奪取。「ボールも非常に動くようになってきた」と鈴木淳監督が言及した通り、上田の配球を中心に大宮が中盤を制圧しました。
もう1つの要素は、バックスタンド側、つまり大宮の左サイドであり、柏の右サイドにおける、サイドの主導権争い。柏で開幕戦から唯一のスタメン変更となった右SBの酒井は、今日がJ1デビュー。「緊張しやすいタイプ」(大谷)ということもあってか、立ち上がりからミスが目立ち、本来の攻撃性を発揮できません。逆に大宮の左SB村上は、19分に青木からのパスを受けると積極的に飛び出し、イ・チョンスからのリターンをエリア内でのフィニッシュに繋げるなど、攻撃面でも推進力を存分に披露。「SBを起点にされてゲームを創られた」とは茨田。中盤とサイドを制すれば、流れは当然大宮に傾きます。
28分には栗澤とワグネルの呼吸が合わず、かっさらった渡部がシュートまで持ち込むも、ゴール左へ。33分、今度は最終ラインの近藤がスリップすると、拾ったラファエルのドリブルシュートは菅野がファインセーブ。こぼれに反応したイ・チョンスをパク・ドンヒョクがエリア内で倒し、微妙なシーンではありましたが木村博之主審はノーホイッスル。45+2分、ラファエルとのワンツーで抜け出した渡部の突進は、菅野が飛び出してセーブ。8対2というシュート数が示すように、大宮ペースで前半は終了しました。
ハーフタイムを挟み、両チームとも選手交替はなし。ところが「相手陣内でスペースが創れず、我々のペースにできなかった」と判断したネルシーニョ監督は、しっかり“魔法”を掛けていました。その“魔法”とはシステムチェンジ。4-4-2から、田中を最前線に置いて、その下に右から茨田、レアンドロ、大津を並べる4-3-3気味の4-2-3-1にシフト。すると、後半開始から2回続けて酒井が深い位置まで切れ込んでクロス。共にキックミスになったものの、「ユースから一緒にやってるので特徴はわかっている」と話す茨田が明確に自身の前へ入ったことで、酒井が積極性を取り戻すと共にサイドの攻防で優位に。また、守備面でも「プレッシャーを掛ける所が明確になった」(茨田)ため、中盤でのボール奪取の増加に比例して、キープする時間も増加。深谷も「相手のフォーメーション変更に対してバタバタしてしまった」と認めています。
そして、乗った流れのままに記録された先制ゴール。55分、右サイドを上がってきた酒井からパスを受けたのは「相手のマークが凄く外れやすくなった」と感じていた田中。ミドルレンジから「ファーサイドに枠を外さないよう意識して」放ったミドルは、DFに当たりながら枠へ飛ぶと、北野は弾くのが精一杯。詰めたレアンドロのシュートが、左のポスト内側を叩いて、右のサイドネットに突き刺さります。45分間で2本だったシュートを、10分間で3本積み重ねての一発。アウェイの柏がアドバンテージを得ました。
前半の攻勢がすっかり影を潜めてしまった大宮。「相手のシステム変更によって、守備より攻撃がうまくいかなくなった」と鈴木監督。サイドの攻防も劣勢を強いられますが、それ以上に頼みの2トップへ縦パスが入らなくなってしまいます。これも柏にとって攻撃の時間が増えたことで、ドイスボランチがある程度余裕を持って2人を迎撃することができたから。「ゲームの中で修正できたのは良かった」と大谷も手応えを語っていました。75分に鈴木監督は1枚目のカードを起用。上田を下げて藤本を送り込み、ラファエルを頂点に置いた4-2-3-1にシフト。80分には左SHに移ったイ・チョンスのクロスから、こぼれをボランチに移った東が狙いますが、菅野がしっかりキャッチ。得点を許しません。さらに大宮は切り札の石原を投入すると、再び4-4-2に戻して勝負。91分、左サイドで泥臭く繋いだボールを東が上げると、石原が驚異的な打点のヘディングを見せるも、菅野がキャッチ。「苦しい時間帯にも慌てないで立て直す力を、去年積み上げられた」という田中の言葉にも納得のウノセロ。昇格組の柏が見事開幕2連勝を飾りました。
大宮は悪くないゲームだったのは間違いありません。完全に主導権を握った前半は圧巻の機能性だったと思います。それだけにそこでゴールを奪えなかったのは痛恨でしたが、「今シーズンずっと言ってきてることが、徐々にできるようになってきている」と鈴木監督。2トップや東、上田、キム・ヨングォンなど個で勝負できる選手が中心を担うなど、今シーズンの大宮は一味違いそうですね。
勝った柏はネルシーニョ采配が相変わらずズバリ的中。前述の田中に加えて、「システム変更がハマったけど、去年から色んなシステムでやっているので混乱はなかった」と大谷が話したように、積み重ねて来たものが着実にチームへ根付いている印象です。上々のJ1帰還を果たした太陽王の勢いは、そう簡単に止まりそうにはありません。

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