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2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

Jリーグ 2010年12月04日

J1第34節 浦和×神戸@埼スタ

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3月6日に開幕した2010年シーズンのJリーグも、とうとう今日が最終節。それぞれのチームが、それぞれの決着を付ける日です。私が最後に見たかった決着の行方は、やはりJ1の残留争い。ほとんど一騎打ちの様相を呈しているFC東京と神戸の決着をこの目で確かめるために、埼玉スタジアムへ向かいました。ここ6試合は3勝3分けという、驚異的としか言いようのない結果を残し、特に前節の清水戦では10人になってからの決勝ゴールで勝ち点3を獲得した神戸。現状ではリーグの中でも最も調子のいいチームかもしれません。その神戸を4万5千の埼スタで待ち受けるのは、フォルカー・フィンケ監督体制下としてもホーム最終戦となる浦和。どちらの“赤”がより燃えたぎるのか。そして神戸に奇跡は起きるのか。第34節。泣いても笑っても最後の90分間は家本政明主審のホイッスルでその幕を開けました。立ち上がりから「浦和はホーム最終戦なのでかなりの勢いで入ってくるだろうと予想していた」と和田昌裕監督が話した神戸は、石櫃と茂木の両SBも攻め上がりを自重する格好で、まずは守備に軸足。対する浦和も早めに縦を狙う選択が目立ち、なかなかボール回しにリズムが出てきません。18分には浦和が先に決定機。エスクデロ、柏木と繋いで、ポンテが右サイドへ振ると、高橋の折り返しをエスクデロがシュート。ここは神戸GK徳重が足で防ぎますが、1分後にも再び浦和のチャンス。ポンテがエジミウソンとのワンツーから抜け出し、放ったシュートはこちらも再び徳重がファインセーブ。「(徳重)健太がよく2本止めてくれた」とは北本。神戸は守護神の連続セーブに救われます。すると24分にチャンス到来。吉田がDFラインの裏へ出したボールに小川慶治朗が走り、フィニッシュまで持ち込むと、これは岡本拓也がブロック。高校3年生同士の攻防は両者譲りません。そんな中、ゲームが動いたのは意外な形から。31分、何気なく茂木が前へ蹴り入れたフィードに対応したのは、「CBのポジションで緊急事態を迎えていた」(フィンケ監督)チームで、今シーズン初スタメンとなった濱田水輝。ところがその濱田がGKへ頭で戻したボールは短く、「相手のDFラインもプレスを掛けるとアタフタしてたんで、1本来るかなと思ってた」という吉田が拾います。まったくのフリーで迎えた山岸との1対1も、冷静に右スミへ。ベテランがこの大事な局面で大仕事。勝つしかない神戸がリードを奪うと、以降は「先制点の重みで呪縛から解けた」と北本が話したように、バランスを維持しながらリスクを賭けずにゲームをコントロール。45分間は神戸がアドバンテージを握った形で終了しました。ハーフタイムのスタジアム。場内アナウンスで告げられた西京極のスコアは、1-0で京都リード。どよめくアウェイゴール裏。「他会場の経過は出ている選手には伝えてないし、僕も知らなかった」とは和田監督ですが、この時点で不利なはずだった神戸が一転、このまま行けば逆転残留という状況が生まれます。後半も先にチャンスを掴んだのは神戸。47分、右サイドからボッティが上げたクロスに、小川はフリーでボレーを放ちながら枠の左へ外してしまいましたが、その18歳が2分後に貴重な働き。49分、浦和の縦パスに体を入れたCBの北本は「僕のファウルかと思ったけど」、笛が鳴らないと見るやパスカットから「チャンスだったので」そのままオーバーラップ。この流れから抜け出した小川が濱田に倒されると、家本主審が指し示したのはペナルティスポット。神戸に追加点の絶好機が訪れます。このプレッシャーの掛かる場面。本来のキッカーはポポでしたが、「蹴りたそうな顔してポポに「俺に任せてくれ」と言った」のは吉田。倒れた山岸の治療と、「不安がとても大きくなってしまった」(フィンケ監督)ために施された濱田と堀之内の交替も含め、3分近い中断を挟んで迎えたPKにも、「絶対に入れる自信はあった」と話した男の度胸は本物。指揮官も「真ん中に蹴ってましたもんね」と苦笑するほど冷静なキックが揺らしたゴールネット。0-2。吉田の今日2点目となる一発でリードが広がります。止まらないクリムゾンレッド。59分、「言い続けていたファーストディフェンス」(和田監督)を吉田が激しいチェイスで敢行。乱れた浦和のパスを奪うとボッティ、ポポを経由したボールはフリーのパク・カンジョへ。「痛み止めの注射も切れて、痛い中なんとかやってた」パクは、山岸との1対1も難なく左スミに一刺し。飛び出した“カズダンス”ならぬ“パクダンス”。0-3。この時点で神戸が見せていた守備の安定感を考えても、ゲームの大勢は決しました。ある意味、このゲームの神戸は“狡猾”だったと思います。実際にはおそらくここ数試合と比べても、チーム全体が見せた前への推進力はむしろ少ない程。それでも相手のミスを突き、PKを獲得して、高い位置でボールを奪ってのカウンターから3ゴールを奪取。まるで常勝チームの勝ちパターンかのような展開は、この苦境を強いられる中で神戸が身に付けてきた「チームに生まれた自信」(吉田)の象徴だったのではないでしょうか。63分には左サイドを素晴らしいターンで抜け出した宇賀神の折り返しから、エスクデロが打ったシュートには3人のDFが体を投げ出してブロック。守備陣の集中も途切れません。和田監督は74分、ポポに替わってルーキーの森岡亮太を投入すると、81分には吉田とイ・ジェミンを、83分に足をつった茂木と小林を入れ替え、万全を期すゲーム運びを披露。そして、交替で退くポンテに万雷の拍手がスタジアム中から贈られるシーンを経て、“ケーキに苺を乗せた”のは10代コンビ。93分、森岡は高いテクニックで右サイドを切り裂くと中へ折り返し、実は記録された4本のいずれもが決定的なシュートだった小川が、ようやく4本目で結果。0-4。終盤戦のキーマンとなった高校生のダメ押しゴール。点差はさらに開きます。西京極は京都に追加点。ベンチ前に集まる神戸の選手たち。94分、鳴らされたのはゲームの、そしてシーズンの終わりを告げるホイッスル。「とりあえずみんなで行こうと言っていた」(吉田)和田監督の下に駆け寄った全ての選手と全てのスタッフで広げた歓喜の輪。最後にJ1残留という決着を付けたのは神戸でした。確かに奇跡だったのかもしれません。10試合勝利がない状況から、最後の7試合は4勝3分けと逆に負けなしというのは、現実離れした数字と言えるでしょう。ただ、和田監督は試合後の会見でこう話しました。「チームが変わったのは一体感。ベンチ全員が一緒になって喜べる、悔しがる、泣ける、そういうチームにはなったのかな」。きっとそれを手に入れるのは口で言う程簡単ではありません。そして、それを生み出したのは「和田さんのためにもという気持ちがあった」(河本)「何とか和田さんを男にしたいとみんな思ってた」(吉田)「和田さんが監督になってこういう結果が出せた」(ボッティ)と皆が声を揃える指揮官への想い。「とにかく選手たちは凄いとただただ思うだけ」と言い切った和田監督その人が自ら“一体感”を創り出し、残留という“必然”を呼び込んだのだと私は感じました。    AD土屋




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