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2000年の番組開始から15年以上に渡り、良質かつ多彩な企画で人気を博してきた、J SPORTSオリジナルサッカー番組「Foot!」。
2011年8月から、週5日放送のデイリーサッカーニュースとしてリニューアルし、世界のサッカー情報を余す ことなく紹介する。

その他の試合 2010年10月11日

高円宮杯決勝 広島ユース×FC東京U-18@埼スタ

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9月4日に開幕を迎えてから1ヵ月強。もう勝ち残っているチームはたったの2つ。埼玉スタジアムのファイナルで覇権を争うのは、広島ユースとFC東京U-18。少なくとも私が見た中では考え得るベストのカードが最後の最後で組まれたように思います。この両チームは夏のクラブユース選手権でも1次ラウンドで対戦。その時はグループ突破へは不利な立場にいた広島がFC東京に競り勝ち、決勝トーナメントに進出。また、2006年と2009年にはそれぞれJユースカップの決勝で激突し、前者は広島が、後者は東京が優勝を勝ち取るなど、「かなり因縁の対決」(広島・森山佳郎監督)となってきています。今日は比較的暖かかったとはいえ、同じ27度でも開幕当初と比べれば格段に秋の気配を増した体育の日。頂点のみを目指す戦いは、広島のキックオフでその幕を開けました。まず勢い良く飛び出したのは「前回負けてる分、気持ちは強かった」とキャプテンの松藤正伸(3年・FC東京U-15深川)が話した東京。1分に佐々木陽次(3年・富山北FC)が、2分に出場停止明けの武藤嘉紀(3年・FC東京U-15深川)が続けてミドルを放ち、高い意欲を見せ付けると一気にペースを握ります。この要因は、「プレッシャーを掛けて相手のミスを誘い、ボールを奪うことができていた」(東京・倉又寿雄監督)「自陣で相手のプレッシャーを浴びて前に進めなかった」(森山監督)と両指揮官が口を揃えた、東京の果敢なハイプレス。特に武藤は準決勝を欠場した欝憤を晴らさんとばかりに、前から走り回ります。一方、「グラウンドがボコボコしていたので少しミスが出た」とはキャプテンの宗近慧(3年・サンフレッチェびんごJY)の出場停止を受けて、3バックのセンターに入った脇本晃成(2年・サンフレッチェ広島JY)。繋ぐ広島にとって、グラウンド状態が不利な方向に働いたのも無視できないファクターでした。攻め続ける東京は26分、佐々木のCKはフリーの武藤へ届き、シュートには持ち込めなかったものの惜しいシーンを創ると、28分にも廣木雄磨(3年・FC東京U-15むさし)のパスを受けた秋岡活哉(3年・FC東京U-15むさし)がクロスバー直撃の強烈なシュート。徐々にゴールの予感が高まります。すると29分、準決勝でも素晴らしい働きを披露した1年生の岩田拓也(FC東京U-15むさし)は相手DFラインの裏へ落とす、絶妙のロングパス。反応した佐々木はGKとの1対1を冷静に右スミへ制します。10番の3戦連発となる先制弾。流れを考えても必然と言えそうなリードは東京が奪いました。以降も34分には高い位置からの激しいプレスでボールを奪った武藤のクロスに、飛び込んだ岩田のヘディングは今日2回目のクロスバー直撃。39分にも佐々木のCKから岩田が押し込むもオフェンスファウル。東京の攻勢は続きます。しかし、ゲームの潮目となるゴールが生まれたのは前半終了間際の45+1分。左サイドを野津田岳人(1年・サンフレッチェ広島JY)とのコンビで崩した浅香健太郎(3年・吹田JFC千里丘)のクロスに、中央で2枚が潰れると、ファーへ走り込んでいたのは「ウチは「迷ったら行け!」みたいな感じ。来るなっていうのがわかった」という3バックの右を務める越智翔太(3年・四国中央土居中)。169センチのCBが頭で左スミへ流し込み、まさにワンチャンスを生かした広島がスコアを振り出しに戻して、前半は終了しました。追い付いた広島に、追い付かれた東京。ハーフタイムを挟むと一転、後半は立ち上がりから「とにかく繋いでいくウチのスタイル」(脇本)を目に見える形で体現し始めた広島がペースを握り続けます。この要因も両チーム指揮官の見解は同様。「後半は相手のプレッシャーが弛んで、ボールを動かせるようになってきた」とは森山監督。「前線の運動量が落ちてきて中盤で回される形が多くなり、両SHも少し絞らせて守備をさせたかったができなかった」とは倉又監督。前半序盤からハイプレスを敢行した東京は「パスを回されて走らされたので、自分たちの足が少し止まってしまった」と松藤も認めたように、目に見えて運動量が低下し、プレスを掛けられなくなってしまいます。もちろん前半終了間際という、ダメージの大きい時間帯で喫した失点によるメンタル的な部分もあったとは思いますが、劣勢だった前半の広島もシュートこそ少なかったとはいえ、「怖がらずにどんどん繋いで相手を走らせる」(森山監督)ことは悪いピッチコンディション下でも実行できていました。それが「後半に絶対効いてくる」という森山監督の読み通り、結果的に奏功した格好になりました。そして59分、広島は野津田のCKを浅香がボレー。松藤はテリーを思わせる全身ブロックで一度は危機を脱したものの、こぼれ球に詰めていたのはまたも越智。大学受験で国立のピッチには立てず、「準決勝に出てない分、自分がやらなきゃと感じた」というDFのドッピエッタ。広島がゲームを引っ繰り返してしまいました。さて、66分や67分にも危ないシーンを創られるなど、すっかり主導権を奪われてしまった東京は、73分にこの2試合で十分過ぎる程の好パフォーマンスを見せた岩田を下げて、準決勝では先制ゴールを挙げた岩木慎也(2年・FC東京U-15むさし)を左SHへ送り込み、武藤を最前線へ上げて、秋岡を一列落とした右SHにスライドさせます。さらに76分の川森有真(3年・FC四日市)が掴んだ広島の決定機を、GK三浦龍輝(3年・町田JFC)が決死のファインセーブで阻止すると、79分には前岡信吾(3年・FC東京U-15深川)を下げて、奥村一誠(3年・FC東京U-15むさし)を投入。2トップは佐々木と武藤に変わり、中盤も奥村をアンカーに、江口貴俊(3年・FC東京U-15むさし)を2トップ下に配した、ダイヤモンドにシフトします。最後の10分は常に“勝利”へフォーカスしてきた東京の猛ラッシュ。なりふり構わずとにかく1点を奪いに行く強烈な姿勢に、森山監督も「もうとにかく“百姓一揆”じゃないけど人数で守るしかないという感じ」と、ある程度後ろに人を残して、何とか逃げ切ろうという執念を発揮します。80分、秋岡がドリブルでエリア内へ侵入して放ったシュートは、広島DFが体を投げ出してブロック。そこから3本連続で蹴った佐々木のCKの3本目は、松藤が繋いで江口が頭で狙うも、広島GK大野哲煥(2年・レスポール浜田FC)がキャッチ。84分から86分にかけて再び佐々木が3連続CKを放つも、シュートは打ち切れず。86分、江口に替えて182センチの長身DF永井あとむ(3年・FC東京U-15深川)が最前線に投入され、パワープレーに。攻める東京に、守る広島。もはや「戦術とか何にもなくて本当に男と男の戦い」(森山監督)がそこにはありました。90+4分のラストプレー、佐々木のFKは広島DFが掻き出し、拾った岩木のクロスに頭で合わせたのは、上がっていたGKの三浦。想いを込めたボールは、しかしゴールの左へ。直後にタイムアップを告げる木村博之主審のホイッスル。壮絶な死闘は「みんな120%の力を出せたと思う」と越智が胸を張った広島に凱歌。17年間ユースの選手たちが暮らす“三矢寮”の寮長さんと寮母さんを務め上げ、この1月に定年退職される稲田夫妻へ捧げる日本一に輝きました。双方の実力差はほとんどなかったでしょう。ただ、今日に関してはここまでPK以外では1つの失点も許していなかった東京から、2点を奪い切った広島が最後は「根性勝負になったらウチは絶対負けない」と言い切った森山監督の言葉を見事に証明してみせる結果になりました。まさにファイナルにふさわしい最高のゲームを、両チームともに見せてくれたと思います。    AD土屋


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