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重要なゴールを奪う星の下に生まれた17歳。鹿島アントラーズユース・吉田湊海が永遠に求め続ける成長の糧 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史鹿島アントラーズユース・吉田湊海
ピッチに立つ姿からは、いつだって何かをやりそうなギラギラ感が漂っている。鹿島アントラーズユースの40番を託されている吉田湊海のことだ。
プレミアリーグでデビューを飾ったのは、1年生だった昨シーズンの開幕戦。いきなりスタメンに抜擢され、試合には敗れたものの、90+3分まで前線で好プレーを披露すると、カシマスタジアム(当時)で行われた翌節の市立船橋高戦では、自ら奪ったPKを沈めて初ゴールを奪ってみせる。
興味深いのは、そのころから放っていた“アントラーズの選手感”だ。中学時代の吉田は東京のFC多摩ジュニアユースに所属しており、中学3年時の夏のクラブユース選手権ではチームの日本一に加え、MVPと得点王を獲得するなど、大きな注目を集めていたが、つまりは鹿島の下部組織出身の選手ではない。
だが、この1年生の4月の時点で本人の口からも「鹿島アントラーズというチームは常に勝利を求めてやっているチームなので」という言葉が発せられていたように、まるで昔からこのクラブでプレーしてきたかのようなマインドと立ち振る舞いが、非常に印象的だった。
吉田にとって幸運だったのは、チームの指揮を執っていたのが、日本サッカー史上屈指のフォワードとして知られる柳沢敦監督だったことだ。中学時代はボランチやトップ下でもプレーしていたが、鹿島ユース加入後は一貫してストライカーの位置で起用されてきたことで、その得点感覚は一層磨かれることになる。
「普通の人ではヤナさんに教われるなんてありえないことで、ここのユースじゃなければ経験できないことなので、それはありがたいと思っています。ヤナさんは本当にフォワードとしても一流の選手だったので、吸収する部分が本当に多いですし、動き出しや受け方は勉強になっていて、中学校時代に比べたらフォワードとしての動きは変わったと思います」
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結果的に昨季のプレミアリーグEASTでは18試合に出場して、二桁に乗せる10ゴールを記録。前橋育英高校のオノノジュ慶吏、柏レイソルU-18のワッド・モハメッド・サディキと並んで、得点王の座に就く。ゴールを決めた試合のチームは、6勝2分けと負けなし。既に1年生ながら、鹿島の勝敗を担う存在としての自覚と責任を十分に携えていたように思う。
2年生になった今シーズンは、さらに高いレベルで戦う権利を自ら掴み取ってきた。トップチームに練習参加する機会も増えていく中で、4月29日のJ1リーグ第13節の横浜FC戦で初めてベンチに入ると、90+4分に鈴木優磨との交代でニッパツ三ツ沢球技場のピッチを踏みしめ、トップチームデビューを果たす。
ただ、もちろんそれだけで満足するようなタマではない。直後のプレミアリーグで話を伺った際には、「1分ちょっとぐらいしかピッチに立つことはできなかったんですけど、自分はもうこの中でずっとやりたいなと思いましたし、ここで活躍できる選手になりたいなと思いました。まず試合に出れたことはいいんですけど、結果も大事だと思うので、次は(徳田)誉のゴール記録を抜かしていきたいという気持ちはあります」ときっぱり。そんな言葉からも強気なメンタルが垣間見える。
11月には自身にとって初めての世界大会となるFIFA U-17ワールドカップに出場。日本は史上最高成績タイのベスト8まで進出した中で、背番号10のエースという役割を託された吉田にとっての晴れ舞台は、思い描いていたような活躍を果たすステージにならなかったと言っていいだろう。
初戦のモロッコ戦で沈めたゴールが、FVS(フットボール・ビデオ・サポート)で取り消されると、以降も決定機にこそ顔を出すものの、なかなか結果に恵まれない。ラウンド32の南アフリカ戦ではようやく大会初ゴールを奪ったが、ベスト4を懸けた準々決勝のオーストリア戦ではベンチスタートに。後半開始からピッチに解き放たれながら、試合は0-1で競り負け、チームも敗退を余儀なくされる。
大会前に「自分が点を獲って、チームを勝たせるということは、目標というより、自分がやるべきことだと思っています」と話していた17歳が、悔しさともどかしさを募らせていたことは想像に難くない。それでも、この人は常に成長の糧を追い求める逞しさを持ち合わせている。帰国後のプレミアでは2試合で3ゴールを奪って、チームの勝利にきっちり貢献。きっと世界で味わった蹉跌も、すべて自らのパワーに変えていってしまうのだろう。
興味深い数字がある。今シーズンのプレミアで吉田は13ゴールを積み重ねたが、彼が得点を決めた11試合における鹿島ユースの成績は10勝1分け。加えて実に6試合で、この人が決勝点を叩き出しているのだ。圧倒的な勝負強さを誇る背番号40が、大事な得点をマークし、雄叫びを挙げながらピッチサイドへ駆け出していく光景は、何度も、何度も、目にしてきた。
今シーズンも残された試合はあと1つのみ。11年ぶりのプレミア日本一の懸かるプレミアリーグファイナルだ。チームにとってもクラブユース選手権、Jユースカップとの三冠が懸かる一戦だが、改めて吉田が少し前に話していたことを思い出す。
「もしずっと点を獲り続けていたとしても、自分のやるべきことは変わらないですし、ずっと勝ち続けていても、チームとしては常に優勝だけを目指してやっているので、そこの部分は何も変わらないと思います」
12月21日。埼玉スタジアム2002。みんなで目指してきたプレミアの頂上へと、駆け登るための90分間。鹿島ユースが笑顔で優勝カップを掲げるためには、40番のユニフォームを纏った吉田湊海の重要なゴールが、必要不可欠だ。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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