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サッカー フットサル コラム 2025年11月20日

【左サイドはオレが切り裂く!瀬口大翔が高精度キックでチームに与える鮮やかな彩り FIFA U-17ワールドカップ カタール2025 日本×オーストリア マッチプレビュー】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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U-17日本代表の左サイドで躍動する瀬口大翔

息詰まる激闘だった。FIFA U-17ワールドカップのラウンド16。U-17日本代表にとっては、直近の出場4大会にわたって、ここで進撃を阻まれている“鬼門”とも言うべきステージで対峙するのは、同じアジア勢の北朝鮮。絶対に負けたくない一戦は、いきなりの先制点で幕を開ける。

4分。日本はメンディーサイモン友からパスを受けた瀬口大翔が、ファーまで届ける好クロス。待っていたマギージェラニー蓮が丁寧に合わせたヘディングは、GKの頭上を綺麗に破り、ゴールネットへ吸い込まれる。「セグのクロスがファー気味に来たので、ヘディングで逆を突きました」と話す日本の秘密兵器が今大会初ゴール。幸先良くリードを奪う。

だが、ここからは風上に立つ北朝鮮の攻撃に対し、日本は防戦一方に。27分にはPKを献上し、絶体絶命のピンチを迎えたものの、ここは絶対的キャプテンの村松秀司がビッグセーブ。「練習からギシさん(山岸範宏GKコーチ)と一緒に、キッカーの蹴り方によってどの方向に飛ぶかは話していましたし、それが合っていれば絶対に止めるという想いがありました。ギシさんに感謝です」と話した守護神がチームの危機を救ってみせる。

後半に入っても、北朝鮮の巧みなパスワークに翻弄され、後手に回るシーンが多く、59分にビルドアップのミスから与えたピンチは、ここも村松が弾き出したが、67分には左サイドを細かいパスで崩されて失点を喫し、タイスコアに。日本も81分には平島大悟のパスから、浅田大翔が放った決定的なシュートは枠外へ。準々決勝への進出権はPK戦で争われることになる。

先攻の北朝鮮は1人目が成功。日本1人目の吉田湊海はGKに触られながら、強烈な弾道をネットへ突き刺すと、北朝鮮2人目のキックは枠外へ。以降は元砂晏翔仁ウデンバ、瀬口、平島と日本が4人目まで全員成功させれば、北朝鮮も3人目から5人目までいずれもゴール。決めれば勝利の日本5人目。大きなプレッシャーが掛かる局面に、浅田がスポットへと歩み出る。

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背番号11が右スミを狙ったキックは、コースを読んだGKの手を弾き、ゴールへと転がり込む。「相手も本当に強い相手だったので、勝つか負けるかの勝利の執着心を、最後の最後まで選手が持ち続けてくれたことが結果に繋がったかなと思います」と笑ったのは廣山望監督。日本は2011年大会以来となるベスト8進出を、逞しく引き寄せた。

運命の準々決勝で対戦するのは、ラウンド16でイングランドに4-0と快勝を収めて勝ち上がってきたオーストリア。グループステージからここまで5連勝中であり、14得点1失点と攻守に好調をキープ。とりわけここまで5ゴールを挙げているヨハネス・モーザーは、中盤のキーマンとして注意が必要だ。

勝利すれば、日本として初のベスト4へ駒を進めることができる、ビッグマッチのキープレーヤーに挙げたいのは、ここまで2ゴール1アシストと世界の舞台で確かな結果を残してきた、左のウイングバックを任されている瀬口大翔だ。

グループステージのモロッコ戦では、美しい曲線を描いた右足シュートを右スミのゴールネットへ送り届け、大事な初戦勝利に貢献すると、3戦目のポルトガル戦でも左足で豪快なシュートを叩き込み、それがチームの決勝点に。グループ首位通過の立役者と言っていい活躍を披露してきた。

さらに前述した通り、北朝鮮戦でも完璧な右足クロスでマギーの先制点をアシストすれば、PK戦でも3人目のキッカーで登場し、極めて冷静にGKのタイミングを外して、ゴール中央へとボールをグサリ。プレースキッカーも託されている高いキック精度を、きっちりとチームの結果に結び付けている。

そんな瀬口だが、ワールドカップ予選に当たる4月のU17アジアカップを振り返ると、スタメン起用されたのは本大会出場が決まった後の準々決勝のみ。「相手のスピードも含めて海外でしか味わえないこともありましたけど、試合にも出れなくて、結構悩まされた大会ではありました」と悔しい想いを抱えながら、この春からは自身の成長と向き合ってきた。

所属のヴィッセル神戸U-18では3トップの左ウイングに配され、縦にも内にも切れ込める抜群の突破力を存分に発揮し、プレミアリーグでも躍動。キャプテンマークを巻きながら、優勝争いを繰り広げるチームをしなやかなリーダーシップで束ねる姿も印象的だ。

「得点の部分では2点獲って、得られたものはあるんですけど、守備の部分での手応えはまだ掴めていないので、そこはチャレンジしたいなと思います」とは本人だが、守備のハードワークも水準以上。加えて簡単にボールを奪われない高い技術を誇っているだけに、サイドで時間を作れるプレーは、よりシビアな状況が増えてくるここから先の試合の中でも、チームに小さくない余裕をもたらしてくれることだろう。

今や日本のメインキャストに躍り出たが、もちろん慢心の類がこの人の中にあるはずもない。嫌いなものは「きのことジェットコースターと高い所」だという17歳の高校3年生。瀬口大翔が力強く振り切る右足が、ピッチ上を鮮やかに彩り、チームに歓喜を連れてくるシーンは、きっとオーストリア戦でもやってくるに違いない。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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