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サッカー フットサル コラム 2025年10月31日

しなやかなゴールハンターが見据えるとてつもない金字塔。名古屋グランパスU-18・大西利都が期す30ゴールへのチャレンジ 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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名古屋グランパスU-18・大西利都

いわゆる力みのような類のプレーとは無縁。気づけば最も得点に近い場所へ、スルスルと入り込んでいく。そんなストライカーには、ボールも自然と惹き付けられるのだろう。自分の元へと巡ってきたチャンスで、まるで呼吸をするように、しなやかに得点を奪っていく。

「やっぱりユースでの活動には、これからのキャリアでは味わえないことだったり、このチームでしか味わえないことがあると思うので、そこを大事に噛み締めながら、この最高の仲間たちとサッカーしていきたいなと思います」

1シーズンにおける最多得点者として、プレミアリーグの歴史にその名前を刻んだ、名古屋グランパスU-18を牽引する背番号11。ゴールを愛し、ゴールに愛された大西利都の進撃は、まだまだ止まる気配がない。

2年生だった昨シーズンは、プレミアリーグWESTでもトップ昇格を果たした杉浦駿吾と並んで、得点ランキング3位タイとなる14ゴールを記録。9月には自身初となる年代別代表にも招集され、一躍注目を浴びる存在へと成長を遂げる。

「去年は杉浦駿吾くんもいて、自分はゴールを獲らせてもらっているような立場だったんですけど、今年はちゃんと自分の力でゴールを獲ったり、周囲に獲らせることもやらないといけないなって。よりプレッシャーも感じている中で、自分がチームを勝たせたいという想いは去年より何倍も増しています」とエースの自覚を携えて臨んだ今シーズンは、まずシャドーの位置にトライすることになる。

ただ、リーグ開幕戦のガンバ大阪ユース戦は、チームこそ1-0で勝利を収めたものの、大西が放った3本のシュートはいずれも不発。第2節のアビスパ福岡U-18戦も、訪れた2つの決定機をモノにできなかったが、ドロー決着が濃厚だった最終盤の83分に、ようやく“レーダー”が発動する。

相手の最終ラインをダイアゴナルランで切り裂き、八色真人のスルーパスを引き出すと、GKとの1対1も冷静に制し、ボールをゴールネットへ送り届ける。「本当に泣きそうになりました。今までなかなかゴールを決められなくて、チームに貢献できていなかったんですけど、サポーターからも味方からも信じてもらっているのは感じていたので、その信頼に応えられたのが一番嬉しかったです」。アウェイの地で挙げた今季初ゴールは、チームを勝利に導く決勝点に。大西が紡ぐ歴史的なシーズンは、ここから本格的に幕が上がる。

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第3節・帝京長岡高校戦で2ゴール、第4節・大津高校戦でハットトリック、今季初黒星を喫した第5節のサガン鳥栖U-18戦でも1ゴールを叩き出す。それでも勢いは止まらない。第6節・東福岡高校戦では90+6分の劇的同点弾を含めて2ゴール、第7節・静岡学園高校戦で1ゴール、さらに第8節のファジアーノ岡山U-18戦では、JFE晴れの国スタジアム開催のゲームで、今シーズン2度目のハットトリック達成。7戦連発というド派手な活躍を披露してみせる。

第11節のヴィッセル神戸U-18戦は4-6という打ち合いに敗れたものの、大西は3度目のハットトリックをマークし、前半戦は11試合で16ゴールと、近年稀にみるハイペースで得点を量産。わかっていても止められない“大西ハリケーン”は、対峙するプレミアのディフェンダーたちの悩みの種になりつつあった。

ところが、夏の中断期間が明けると、チームの調子がやや下降線に入ったのと同時に、その勢いにも陰りが見え始める。後半戦開幕からの3試合は大西にゴールは生まれず、名古屋U-18もまさかの3連敗。リーグ戦では6連敗という苦境に陥ってしまう。

第15節の東福岡戦は3-2で、第16節の神村学園戦は1-0でともに競り勝ち、チームが連勝を飾った中で、東福岡相手には今季4度目のハットトリックを果たすも、神村学園からは得点を奪えず。後半戦は6試合中5試合でノーゴール。「やっぱり相手が2枚や3枚来ると、どうしても自分の良さが出ないので、まだまだ全然課題は多くあるなと思います」。大西は苦悩の森の中に迷い込みかけていた。

10月11日。第17節。静岡学園と激突したアウェイゲーム。ストライカーは、再び覚醒する。11分。神谷輝一のスルーパスを受けると、最初のシュートは相手GKのファインセーブに阻まれるも、リバウンドを詰めて1点目。42分。八色のスルーパスに反応し、自ら獲得したPKを沈めて2点目。そのキックはクロスバーの下を叩いたため、「ちょっと怖かったですけど、雨でスリップしたのか、良いコースに飛んでくれました。雨じゃなかったら危なかったですね」とは本人だが、この日は運も味方に付ける。

65分。3バックの一角から、高い位置まで駆け上がった鶴田周のグラウンダークロスを、丁寧にインサイドキックでゴールへ流し込んで3点目。74分。相棒の八色からディフェンスを出し抜いた完璧なスルーパスが届き、GKとの1対1も確実に仕留めて4点目。今シーズン5度目のハットトリックに1点を加え、チームも4-0で快勝を収める。

そして、この日は大西にとっても記念すべき1日になった。プレミアリーグでの23得点は、1シーズンの個人最多得点記録を13年ぶりに更新する数字。「意識はしていましたけど、あまり意識しすぎると硬くなっちゃうなと思っていたので、あまり気にしないようにしていました」と話しつつ、「本当に自分の力だけではないですし、みんなが良いパスをくれるので、みんなに感謝したいなと思います」とも。少し続いていたモヤモヤを振り払うような記録樹立に、試合後には背番号11にも笑顔が弾けた。

翌節のサンフレッチェ広島F.Cユース戦でも1点を加え、リーグ戦は4試合を残した状態で24ゴール。ここからは未知の世界。どれだけ記録を伸ばせるかは神のみぞ知るところだが、大西は明確な数字を見据えている。

「個人の数字として、30点というのはもちろん難しいとは思うんですけど、一番はチームのためにプレーして、その中で自分の特徴を出しながら、最終的に30点という目標を達成できればなと思います」

可能性は、十分にある。先人の誰しも成し得なかった30ゴールという、とてつもない金字塔への大いなるチャレンジ。名古屋グランパスU-18が誇る、生粋のゴールハンター。大西利都は自ら獲り続けるゴールで、まだ見ぬ鮮やかな景色へと、胸を張ってたどり着く。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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