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サッカー フットサル コラム 2025年10月7日

目指すは“盟友”とのプレミア制覇。鹿島アントラーズユース不動の右サイドバック・朝比奈叶和がピッチに立ち続けている理由 高円宮杯プレミアリーグEAST流通経済大柏高校×鹿島アントラーズユースマッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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鹿島アントラーズユース不動の右サイドバック・朝比奈叶和

「ずっとコツコツとやってきた中で、今は欠かせない選手ですね。本当に玄人好みというか、派手ではないんですけど、今のチームにとっては凄く大事な存在です」

チームを率いる中野洋司監督が、そう話すのもうなずける。何しろここまでのプレミアリーグ16試合のすべてで、スタメンに指名し続けているのだから。指揮官が「凄く大事な存在」と言い切るのは、鹿島アントラーズユースの右サイドバックを務める朝比奈叶和のことだ。

2年生だった昨シーズンは8月からプレミアリーグの登録メンバーに名前を連ねると、優勝の懸かった最終盤の3試合に出場。とりわけデビュー戦となった第20節の前橋育英高校戦では、いきなりスタメンで解き放たれた右サイドバックの位置で安定した守備を披露し、勝利に貢献する姿が印象的だった。

迎えた今シーズンは、開幕からの2試合こそセンターバックで起用されたものの、3節以降は右サイドバックに固定され、「自分としては攻撃のオーバーラップと守備の安定感は中野さんに評価されているのかなと思います」と自己分析するように、攻守に効果的なプレーを出し続け、中野監督の信頼を勝ち獲っている。

この日の試合は3位につける流通経済大柏高校との、優勝争い直接対決とも言うべき大一番。スタートからピッチに立った朝比奈は、対面のスピードスターに最大限の警戒を払っていた。

「相手の安藤晃希選手には、絶対対人の場面で負けないようにということは考えていました。何回か負けてしまった部分もあるんですけど、全体的には良く対応できたと思います」。縦に加速されても、懸命に足を動かし、食らい付く。最後の最後で仕事をさせない力は、今シーズンのここまでで確実に培ってきた。

プレミアに所属しているチームのサイドアタッカーは、基本的にスピードや技術といった自らの持てるスキルを、存分に生かせる能力の高い選手ばかり。彼らにどうやって対抗するかは、実際にピッチ上で対峙する中で、少しずつ、少しずつ、コツを掴んできた。

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「プレミアの選手のスピードや技術は本当にレベルが高いですし、苦戦する場面も多いので、そこで自分がどういうふうにプレーして勝つかというところで、まず自分の間合いを持って、相手にパスが入った時に距離感を詰めることだったり、守備での駆け引きは意識してやっています」

前半はやや押し込まれる時間も長い中で、朝比奈をはじめとした守備陣が奮闘。1年生GKの大下幸誠がPKをストップするビッグプレーを繰り出し、後半に高木輝人と吉田湊海のゴールで2点を先行すると、そのまま相手の攻撃をシャットアウト。「ハーフタイムでもっと自分たちから攻撃や守備をしていこうと話していて、後半は上手く自分たちから圧力をかけて、点を獲れたという部分ではいい試合だったと思います」と朝比奈。重要なゲームのファイナルスコアは2-0。2位以下を引き離す大きな勝利に、試合後には背番号2にも笑顔が弾けた。

 

ジュニアユース時代には『JFAエリートプログラムU-14』に選出され、森壮一朗や仲山獅恩、佐々木将英らともプレーした経験を有するが、U-15年代以降の世代別代表の招集歴はなし。今季の鹿島ユースで4バックを形成する元砂晏翔仁ウデンバ、大川佑梧、岩土そらはいずれも各世代の代表常連でもある中で、朝比奈ももちろん3人への対抗意識は持ち合わせているという。

「あの3人が代表に入っていたり、プロのベンチにも入っている中で、自分も負けていられないと思っていますし、これから代表にも入っていけるような結果にこだわりたいですね。特に守備では1つ1つのプレーで相手に負けないところだったり、攻撃でもチャンスに繋げられるようなプレーを伸ばしていけたらなと思っています」

鹿島ではスクールに所属していた5歳から一緒にボールを蹴り始め、今季は最終ラインでコンビを組む大川は、“盟友”が丁寧に伸ばしてきた成長曲線を、誰よりもよく知っている存在だ。

「叶和は決して目立つプレーは多くないですけど、安心感は凄くありますし、ジュニアのころから一緒にやっている中で、叶和の対人の強さは今までも何度もチームを助けてくれているので、そういう面でも叶和がサイドにいてくれるのは、チームの守備に凄く良い影響を与えてくれているかなと思います」

「もう5歳から一緒にやっているので、お互いのことを知りすぎているなと思いますし(笑)、自分たちの代はなかなか優勝のようなタイトルを獲ってこれなかった中で、今ここにプレミアを獲るチャンスがあるので、そこを掴みに行きたいと思います」

もちろん朝比奈も、“盟友”と成し遂げたいタイトル獲得への想いを隠さない。「佑梧はずっとあんな感じですね。結構強気な感じです(笑)。頼りになるところもありますし、信頼できる仲間でもあって、佑梧と三浦直人とは小さい時からずっと一緒にやってきたので、その集大成としてプレミアで優勝したいですね」

もうこのチームで戦える時間も、着々と少なくなっている。だからこそ、日々を大切に、楽しく、みんなでボールを蹴り合いたい。みんなで目標を叶えたい。朝比奈の決意が強く響く。

「みんなが試合に出たいという強い想いもありますし、1人1人が高め合って、チームの底上げもできていると思います。その中で自分もチームに貢献できるようなプレーを出すことが一番だと思いますし、プレミア優勝に向けて、もっと戦う姿勢を出していきたいですし、自分の結果にこだわっていきたいです」

その人の価値は同じピッチに立っているチームメイトが、一番よく理解している。鹿島ユースの職人系右サイドバック。日々成長を続ける朝比奈叶和が培ってきた力は、プレミアの頂点だけを狙うこのグループにとって、絶対に欠かせない。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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