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サッカー フットサル コラム 2025年9月30日

生粋のリーダーは絶対に諦めない。流通経済大柏高校・島谷義進が一緒に戦ってきたみんなを信じる理由 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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流通経済大柏高校・島谷義進

いつだってそのベクトルは内側へ向いている。自分が上手くなるためには、どういう努力をすればいいか。チームが強くなるためには、どういう働きかけをすればいいか。事態が好転するのであれば、仲間に対しても厳しく要求していく。そうやって一歩ずつ、一歩ずつ、丁寧にこのグループをまとめてきた。

「前期はうまく行った分、後期は相手が修正してきた中で、もっと勢いを持ってやらないといけないと思いますし、それを日ごろの練習から体現できる選手をもっと増やしていかないと、チームも変わっていかないので、そこはもっと自分が促していきたいなと思います」

流通経済大柏高校を抜群のリーダーシップで牽引する、不動のキャプテン。島谷義進はブレない信念を携えて、伝統の赤いユニフォームに袖を通し、勝利のために120パーセントの熱量をピッチ上で出し尽くす。

今シーズンのプレミアリーグが開幕する直前。増田大空とのダブルキャプテンに指名された島谷が、目を輝かせながら、きっぱりとした口調で話してくれた言葉を思い出す。「去年のチームが凄かったので、今年も注目されることはわかっていますし、今年も結果を出さないといけないというプレッシャーはあると思うんですけど、今はワクワクの方が大きいですね」

昨年度もプレミアで出場機会を獲得し、高校選手権の決勝ではベンチ入りも経験。1つ上の“先輩たち”の凄さは間近で実感してきた。ただ、もちろん今年のチームは今年のチーム。2年間をともに過ごしてきた同級生と、日本一を目指して戦うことになる新しいシーズンに大きな期待を抱いて、足を踏み入れていく。

新たにトライしたダイヤモンド型の中盤を敷く布陣の中で、島谷が任されたのはアンカーのポジション。広いカバーエリアを受け持ちつつ、全体をオーガナイズする難しい役回りではあるが、「アンカーは1人なので、気になったところには自分が全部行く感じですけど、それがやりづらいことはないですし、自分は運動量が武器なので、それを存分に生かしてプレスバックしたり、サイドチェンジされた時にいち早く戻ることだったりは意識してやっています」といたってポジティブに自身の果たすべき役割と向き合っていく。

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リーグ前半戦はいきなり開幕から6戦無敗を記録するなど、新布陣もしっかり機能。昨シーズンまではほとんどプレミアの舞台を経験していなかった3年生たちも、試合を重ねるたびに好パフォーマンスを披露し、自信を積み重ねていく。その中でも背番号4の存在感は圧倒的。チームを率いる榎本雅大監督も寄せている信頼を隠さない。

「島谷は凄いですね。いつも気合が入っていますし、リーダーシップの部分で、どう周りをまとめられるかというところでも、彼は気持ちで持っていくタイプですし、何よりも背中で語っているなと。まあ、『奈須の番号をもらいたかった』って言っているので、そういうタイプなんじゃないですか(笑)」

ダブルキャプテンの1人として、昨季のチームをしなやかに束ねていた奈須琉世(流通経済大)から、同じ番号と同じタスクを引き継いだ島谷の躍動もあって、流通経済大柏は堂々と首位争いを繰り広げる。前半戦終了時の順位は、鹿島アントラーズユースと勝点1差の2位。夏のインターハイでは準決勝で敗れたが、周囲の期待もより高まっていたことは間違いない。

 

ところが、後半戦の開幕戦となった浦和レッズユース戦に1-1で引き分けると、少しずつ雲行きが怪しくなっていく。昌平高校には4-3で打ち勝ったものの、翌節の川崎フロンターレU-18戦は1-4で完敗。さらに前橋育英高校とのアウェイゲームも、再三の決定機を生かしきれず、ファイナルスコアは0-1。今季初の連敗を突き付けられてしまう。

島谷もうまく行っていない今の流れは、十分に感じていた。「シーズンの初めからダイヤモンドの布陣で、コンパクトにするサッカーを始めて、それが前期はうまく行ったんですけど、最近は距離感も少し狂い始めて、守備もハマらなかったり、ボールを持てない時間が続いたりというのは、今のチームの現状なので、そういうところは初心に帰って、受け止めないといけないと思います」

榎本監督はチームの現状に対して、こう分析している。「『前期はできたのにおかしいな、おかしいな』と思っているんだったら、それはもう慢心の始まりなんだと。いつでも『今日も1つずつチャレンジしていくだけだ』と。そういう楽しみ方をしてほしいですよね。やっぱり“守り”に入った途端、チームって急に弱くなるじゃないですか。それは心の部分なんですよ」

島谷はシンプルに悔しかった。「根本的に戦える選手が少ないですね。そこをしっかり改善して、チームのために戦える選手を増やしていければ、少しは変わるゲームだったかなと思います」。このチームの強さは、このチームメイトたちの真価は、誰よりもよくわかっているし、誰よりも強く確信している。それなのに、自分たちで自分たちの良さを消してしまうような、“慢心”とも取れる姿勢が出てきていることに、納得が行かなかったのだ。

もう残された高校生活は、決して長くない。1年が終わった時に後悔しないためにも、みんなで笑い合うためにも、自分がやるしかない。自分が言うしかない。それがチームの結果に、チームの成長に、必ず繋がると信じて。

「『目の前の相手に強く行く』ということは常々言っていることですし、それは流経としてやらなくてはいけないことだと思いますけど、今はそこが90分通して全然足りないので、もっとチームのために戦っていかないと、ここから先も厳しいなと思いますし、日本一なんて遠い話だと思うので、もっと周囲に求めていきたいです」

「まずは3年生がもっと気合を入れてやらないといけないですよね。前期の方が誰が見てもがむしゃらに戦っていましたし、1人1人が頑張って戦っていた中で、最近は少し慢心なのか、サボり始める選手も出てきているので、そこはしっかり僕が言って、変えていかないといけないですし、責任を持ってやりたいと思います」

ここまでみんなで1つずつ、1つずつ積み上げてきたものには、絶対的な自信を持っている。あとはそれをピッチに立った11人が、90分の中で、過不足なく出し尽くすだけ。そのためだったら、自分にできることは何でもやってやる。諦めない。流通経済大柏を力強く引っ張ってきた、生粋のリーダー。島谷義進は何があっても、掲げた目標を手繰り寄せるまでは、絶対に諦めない。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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