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サッカー フットサル コラム 2025年9月30日

立ちはだかる壁と向き合う時間はさらなる成長が見込める「良い時期」。流通経済大柏高校が迎えるシーズンの正念場 高円宮杯プレミアリーグEAST前橋育英高校×流通経済大柏高校マッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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正念場を迎えている流通経済大柏高校

「きっかけにするうえでは凄くいい試合になると思うんですよね。ここを超えられないとその先は絶対ないから、何試合かけてもやって、促して、その中で自覚のある選手が試合に出ていく、と。そういう感じかなと思います」

チームを束ねる榎本雅大監督は、そんなことを口にする。おそらくはここが2025年シーズンの正念場。好調を続けてきた流通経済大柏高校にとって、さらなる進化を遂げるためには、きっとこの立ちはだかる壁と1人1人が向き合い、全員で乗り越える必要がある。

「根本的に戦える選手が少ないですね。そこをしっかり改善して、チームのために戦える選手を増やしていければ、少しは変わるゲームだったかなと思います」。怒気をはらんだ口調でそう語ったのは、キャプテンの島谷義進。プレミアリーグEAST第15節。アウェイで前橋育英と対峙した一戦は0-1で敗戦。首位を走る鹿島アントラーズユースとの勝点差は7に広がった。

嫌な予兆は、開始早々にあった。流通経済大柏のキックオフ。ボールをいったん後ろに下げ、GKの藤田泰土が前方に蹴ろうとしたキックは、突っ込んできた相手フォワードに奪われてしまう。ここは藤田が懸命に戻って事なきを得たものの、あまり見られないようなシーンから試合はスタートする。

以降もピッチサイドの指揮官からは、再三にわたって檄が飛ぶ。「シンプルなことをシンプルにやれているのが育英さんで、シンプルなことを難しくしているのがウチみたいな感じでしたね」(榎本監督)。20分前後に右サイドバックの石井友啓と、右サイドハーフの古川蒼真を入れ替え、さらに飲水タイム明けからは中盤の3人の位置をシャッフル。あの手この手で変化を加えるが、なかなかその効果は現れない。

31分にはサイドを崩され、先制点を献上。前半終了間際に上田哲郎のスルーパスで抜け出し、完全にGKと1対1になった1年生フォワードの熊木虎太郎のシュートは、左のゴールポストを叩く。1点のビハインドを負った状態で、最初の45分間は終了した。

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ハーフタイムを挟んで、後半開始から金子琉久と安藤晃希を送り込み、反撃に転じたい流通経済大柏。「守備をハメるためにシステムを変えたり、追い方を工夫してやっていたんですけど、あと一歩寄せるところを寄せ切れる選手が少なかったので、そこで相手に少し自由にやらせてしまったのが、リズムを作られた原因かなと思います」と島谷も言及した強度の部分を、改めて引き締め直す。

守備面での改善は確実に見られた。チャンスも前半以上に作り出した。だが、73分に山元琉士が直接狙ったFKはクロスバーに当たり、76分にもセットプレーの流れからセンターバックの大徳剛矢が放ったシュートは、ここも左のポストに弾かれる。退場者を出し、数的不利になっていた終了間際の89分に安藤が迎えた決定機も、相手GKがビッグセーブで回避。どうしても1点が奪えない。

「後半は少し割り切って、並びを変えたりしてやったので、ちょっとゲームの流れを戻せたんですけど、ポストにあれだけ嫌われると、しょうがないですよね」と榎本監督。公式記録で見ても、前橋育英の3倍近いシュートを打ちながら、最後までゴールネットは揺らせず。流通経済大柏は今季初の連敗を喫する結果となった。

ピッチサイドから檄を飛ばす流通経済大柏高校・榎本雅大監督

「ハーフタイムに『結局「前期はできたよね」という感じで、後期を迎えてしまっているのだったら、それは慢心じゃない?』と言ったんですよ。常に向上心を持って、上を目指して、『もっとできる、もっとできる』と思えていないというか、『前期はできたのにおかしいな、おかしいな』と思っているんだったら、それはもう慢心の始まりなんだと」(榎本監督)

シーズンの前半戦は間違いなく好調の渦の中にいた。プレミアでは開幕から6戦無敗を続け、11節終了時点でわずか2敗と、鹿島ユースとともに首位争いを牽引。夏のインターハイでも準決勝の大津高戦はPK戦の末に敗れたが、大会を通じて好パフォーマンスを披露し、『流経強し』の印象を対戦相手に与えてきた。

だが、後半戦は一転してシビアなゲームの連続。浦和レッズユース戦は終盤に何とか追いつき、勝点1を獲得。昌平高校戦では4-3と打ち合いを制したものの、続く川崎フロンターレU-18戦は1-4の大敗。そして、この日は何度も決定機を作ったが、結果は無得点での敗戦。噛み合っていたチームの歯車に、軋みが生じ始めている。

キャプテンの島谷は、日常の重要性に目を向ける。「夏が終わってから、チームの中で慢心が出てきたのかわからないですけど、やはり少し気持ちの面で前期より勢いを持ってできている選手が少ないなと。前期はうまく行った分、後期は相手が修正してきた中で、もっと勢いを持ってやらないといけないと思いますし、それを日ごろの練習から体現できる選手をもっと増やしていかないと、チームも変わっていかないので、そこはもっと自分が促していきたいなと思います」

「まずは3年生がもっと気合を入れてやらないといけないですよね。前期の方が誰が見てもがむしゃらに戦っていましたし、1人1人が頑張って戦っていた中で、最近は少し慢心なのか、サボり始める選手も出てきているので、そこはしっかり僕が言って、変えていかないといけないですし、責任を持ってやりたいと思います」

この日の対戦相手だった前橋育英は、昨年度の高校選手権決勝に出場した選手が8人そろっていたのに対し、流通経済大柏は安藤1人のみ。ただ、それは裏を返せば、今年から出場機会を掴んだ選手たちが危機感を覚え、みんなで必死に積み上げて、必死に作り上げてきたものが、前半戦の好結果を呼び込んだということでもある。

「後期に入って全然良くないですけど、このまま行くとは思っていなかったですし、成長するにはこういう時期が絶対に必要だと思っていたので、前期はうまく行っていたのに、後期はうまく行かないと感じる中で、どうやって向き合って、どうやって乗り越えていくかというところで、今戦っているところですね。そういう意味では良い時期ですよ」。

榎本監督はわかっている。この時期を乗り越えない限り、チームのさらなる成長は望めない。促せる部分は促すが、最後は選手たちが自分たちで気づき、自分たちで獲得したものしか、本当の力には変わっていかない。それが『良い時期』というフレーズに込められている。

次節は鹿島ユースとホームで戦う大一番。島谷の言葉が力強く響く。「この苦しい中で首位を独走しているアントラーズとやれるというところで、自分たちはそれを追わないといけない立場なので、アントラーズに少しでもポイントで近づくためにも、しっかり勝って、首位を食いたいなと思います」

おそらくはここが2025年シーズンの正念場。去年のチームを超えようと、みんなでいばらの道を切り拓いてきた今季の流通経済大柏の真価が今、問われている。

流通経済大柏高校を牽引するキャプテン・島谷義進

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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