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サッカー フットサル コラム 2024年11月29日

危機感を結果に変えた才気あふれるナンバー10。流通経済大柏高校・柚木創はピッチにファンタジーの魔法をかけ続ける 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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流通経済大柏高校の10番を託されたファンタジスタ・柚木創

その10番には小さくない危機感があった。「選手権が終わって1試合目のプレミアだったので、スタートで出させてもらったからには自分が結果を出さないといけないと思いますし、10番の責任も感じていました」

プレミアリーグEAST第20節。昌平高校とアウェイゲームを戦う流通経済大柏高校のナンバー10。公式戦では1か月半ぶりとなるスタメンに指名された柚木創は、いつも以上の気合を入れて、この日の一戦を迎えていた。

10月上旬に行われたプレミア第17節の柏レイソルU-18戦で捻挫を負ったことで、そこからはコンディションが低下。以降のプレミア2試合は欠場し、全国出場を懸けた高校選手権予選に入ってからもスタメン起用はなく、ベンチから仲間の躍動を見守りながら、途中出場する試合が続く。

「みんなが点差を付けてくれて、気持ち的には凄く楽な状況で試合に出させてもらっていたので、チームには凄く感謝しています。でも、そういった中で自分が出てから、もう一段階や二段階はギアを上げなきゃいけないという中で、あまりチームとして上がり切らなかったのは大きな反省点で、自分の中では少し心残りがあるような選手権予選でした」。流通経済大柏は見事に千葉制覇を果たし、3年ぶりの全国切符を手にしたものの、柚木は自身のパフォーマンスに納得がいっていなかった。

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「彼は選手権で悔しい想いもあって、サッカーノートにも『自分が出ていないチームが勝つのは、嬉しいけど悔しい気持ちもある』と書いてあったので、いろいろなことに向き合っていることが、日々の成長に繋がると思いますし、少し大人に近付いてきているところもあって、ここから1か月は彼にとって凄く良い時間になると思いますね」。そう笑顔で話した榎本雅大監督は、柚木を1トップ下の位置でスタートから昌平戦のピッチへ送り出す。

試合は立ち上がりから流通経済大柏の勢いが鋭い。前から粕谷悠と柚木がハイプレスを敢行し、相手のパスワークを制限しながら、ボールを奪ってからの切り替えも速く、ゲームリズムを引き寄せると、18分には粕谷が先制弾をゲット。チームは幸先良く1点をリードする。

21分。左サイドで獲得したCK。柚木が丁寧に蹴り込んだキックに、飛び込んだキャプテンの奈須琉世が合わせたヘディングが、鮮やかにゴールネットを揺らす。「昌平がどういう守備でゴール前を固めてくるかは、ゴールキーパー陣を含めて分析していて、どういう形だったら点が入るかというのも奈須と話し合いながら、動き方も工夫してあの得点が獲れたので、凄く良かったなと思っています」と柚木が話せば、「柚木が良いボールを上げてくれたので感謝したいです。昨日考えた形がドンピシャで決まりました」と奈須も手応え十分。早くも点差が2点に広がる。

ただ、以降も流通経済大柏は再三に渡って追加点のチャンスを掴みながら、3点目が遠い。「次の1点をどっちが獲るかが重要ということはハーフタイムに全体で話をしていたので、自分も含めて前の選手が外した責任は取らないといけないと思っていました」。上昇気流に乗り始めているチームの中で、久々に勝ち獲ったスタメンの機会。前半だけで3度はあった好機をことごとく外していた柚木は、改めて自分へプレッシャーを突き付け直して、後半のピッチへ向かう。

その時がやってきたのは64分。ショートカウンターから中央を運んだ飯浜空風がスルーパスを送ると、10番は巧みなコントロールでラインの裏へ抜け出す。GKと1対1のシチュエーションにも、躊躇なく左足一閃。ボールは豪快にゴールネットへ突き刺さる。

「ああいう受け方をして、コントロールして、キーパーと1対1という練習もしてきていたので、練習の成果がちゃんと出たようなゴールでしたし、今までプレミアで決めてきた中でも上位に来るような良いゴールだったのかなと思います」。ガッツポーズにも思わず力がこもる。ファイナルスコアは3-0。快勝を収めた90分の中で、1ゴール1アシストを記録した柚木の躍動が、一際眩い輝きを放った。

シーズン前半戦の流通経済大柏はプレミア開幕から7戦負けなしと好調をキープ。小さくない自信を付けていったものの、インターハイ予選決勝で市立船橋高校に敗れ、夏の全国出場を取り逃がすと、そこからリーグ戦でも思うような結果を残せず、苦しい時期を強いられた。

「チームとしても、個人としても、前期は凄く良い流れでやれていたのに、インハイ予選は自分が良いプレーをできなかったからチームが負けてしまったと思っていて、自分としては本当に情けなかったですし、10番がもっと結果を出してチームに貢献しないといけない中で、落ち込んでしまっている時期がありましたね」

正直に言って、まだ自身のハイパフォーマンスを取り戻せたわけではないことは、十分過ぎるほどにわかっている。でも、もうやるしかない。高校に入学して3年目で、ようやく初めて掴んだ選手権の晴れ舞台。チームで掲げてきた日本一を手繰り寄せるためには、もう自分がやるしかない。

「ケガ明けなのでコンディションもどんどん戻していかないといけないですし、選手権の全国出場が決まってからは、みんなからも『全国でやるのはオマエだぞ』と言われているので、そういった信頼も受けていることは自覚しています」

「本当にこの3年間で、3年生とは凄く良い思い出作りができたので、プレミアも悔いが残らないようにやり切りたいですし、選手権もこの仲間と1日でも多く一緒にプレーしたいという気持ちがあるので、自分がチームを勝たせる活躍をして、タイトルが獲れるように頑張りたいと思っています」

強烈なタレントが居並ぶ流通経済大柏の攻撃を、しなやかに取り仕切る10番を背負ったアタッカー。チームが国立競技場の頂からの景色を眺めるためには、柚木創のピッチを包み込んでしまうような創造性あふれるファンタジーの魔法が、絶対に欠かせない。


 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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