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サッカー フットサル コラム 2024年10月18日

残留を懸けたサバイバルマッチ!11位対9位のシックスポインター! 市立船橋高校×尚志高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグ EAST 第19節】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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努力を重ねてAチームまで這い上がってきた市立船橋高校・渡部翔太

やはりこのチームのしぶとさは言葉だけで説明し難いものがある。前半戦が終わった段階で3分け8敗の最下位。とにかく苦しんでいた市立船橋高校だったが、全国8強まで勝ち上がったインターハイを挟み、第12節の青森山田高校戦でリーグ戦初白星をゲットすると、後半戦はここまで4勝2分け1敗とプレミアリーグEASTの12チームでトップの勝点を稼ぎ出し、一気に残留への光が見えてきた。

永遠のライバル・流通経済大柏高校と対峙した前節も、キャプテンの岡部タリクカナイ颯斗をU-18日本代表のスペイン遠征で欠きながら、開始6分でエースの久保原心優が先制点を奪うと、以降は守護神のギマラエス・ニコラスを中心に守備陣も奮闘し、1-0で勝利。今季初の連勝を達成し、9位の尚志高校、10位のFC東京U-18に3ポイント差まで迫っている。

対する尚志高校はやや苦しい後半戦を過ごしている。再開初戦の第12節・流通経済大柏戦は3-0で快勝を収めたものの、13節からは5試合未勝利。20失点はリーグ2番目の少なさだが、1点差での敗戦は8試合を数え、接戦をモノにできない試合が目立っている。

ただ、アウェイに乗り込んだ前節の川崎フロンターレU-18戦は、前半13分に長坂隼汰のハイプレスから大内が先制ゴールを叩き出すと、相手がギアを上げた後半の猛攻も西館優真と大須賀元のセンターバックコンビを中心に1つずつ凌ぎ、6試合ぶりの白星を獲得。歓喜の余韻を携えつつ、今節の決戦へと臨むことになる。

勝点3差で11位と9位が激突する、文字通りの『シックスポインター』。このゲームでは3つのポイントを挙げて、注目すべき選手を紹介していきたい。

高円宮杯プレミアリーグ特集サイト

まず1つ目のポイントは『背番号1の守護神対決』だ。市立船橋のゴールマウスに立つのはギマラエス・ニコラス。昨シーズンから定位置を掴み、高校選手権でも全国ベスト4を経験。最高学年となった今季も1番を背負って、チームの守備を最後方から支えている。

前節の流通経済大柏戦では、少なく見積もっても3度のファインセーブを繰り出し、3バックの中央に入った双子の兄のギマラエス・ガブリエルとともに堅陣を築いて、完封勝利に大きく貢献している。尚志を倒して連勝を3に伸ばすためには、この人の安定したパフォーマンスが必要不可欠だ。

尚志の背番号1は野田馨が付けている。ここまでチームでただ1人フル出場を続けてきた中で、20失点はリーグ全体で見ても青森山田高校に次ぐ2番目の少なさ。1試合平均失点も1.11と素晴らしい数字をマークしており、果敢なシュートストップと抜群の反応速度をどの試合でも遺憾なく発揮している。

第14節の昌平高校戦では1-2で敗れたにもかかわらず、試合後には相手チームの選手から「尚志のキーパー、ヤバかったな」という声が上がるほどの存在感を披露していたのも印象深い。昨シーズンはプリンスリーグ東北を主戦場に戦っていたため、プレミアデビューとなった2024年は間違いなく飛躍の年。野田の成長がグループにもたらしているエネルギーは語り落とせない。

2つ目のポイントには『市船の左!尚志の右!サイドの主導権争い』を挙げたい。『市船の左』を代表するのは、新チームの立ち上げ時にはCチームからスタートしたという渡部翔太だ。プレミアでも開幕時は登録外だったが、インターハイ予選からAチームの左サイドバックに抜擢されると、以降はスタメンに定着。インターハイ3回戦では今節の対戦相手でもある尚志から決勝ゴールを奪い、8強進出の立役者になった。

最大の魅力は正確な左足のキック精度。最近はプレースキッカーとして両サイドのCKに加えて、FKも任されており、流通経済大柏戦でもセットプレーから決定機を演出していた。ちなみに渡部とエースの久保原は、前所属のA.CアスミJrユースFCからのチームメイト。6年間を共有してきた彼らの、息の合ったホットラインにも是非注目したい。

『尚志の右』は大内完介をフィーチャーする。前半戦はなかなか思うような結果を残せず、スタメンを外れることもあったが、第10節の柏レイソルU-18戦でプレミア初ゴールを記録すると、後半戦初戦の流通経済大柏戦では圧巻のハットトリックを達成。9試合で7ゴールを積み上げ、一気に尚志のトップスコアラーへ躍り出た。

左利きということもあり、右サイドハーフの位置からのカットインは絶対的な武器。シーズンが進むにつれて、フィニッシュへの思い切りも増しており、上手い選手から怖い選手へと進化していることに疑いの余地はない。市立船橋には中学時代に所属していた鹿島アントラーズつくばジュニアユースでチームメイトだった伊丹俊元と加藤悠人がいるだけに、“旧友”の前での躍動に気合を募らせているはずだ。

3つ目のポイントは『悩めるストライカー、爆発を期す!』。市立船橋のストライカーポジションに就くのは、昨年度の高校選手権でも優秀選手に選出された久保原心優。今年は郡司璃来から10番を受け継ぎ、さらなる飛躍が期待されたが、前半戦はまさかのノーゴール。本人も「『本当に入らないんだな』というシーンが多くありました」と振り返ったように、決定機は迎えながらも不思議と得点だけが生まれない。

だが、第14節の大宮アルディージャU18戦で、90+2分に劇的な決勝弾を叩き出し、今季のリーグ戦初ゴールを記すと、そこからの5試合で5ゴールを量産。その間はチームも3勝2分けと勝点を着実に積み重ねてきた。遅れてきたエースの覚醒はそのまま結果に直結し、市立船橋は完全に息を吹き返している。今節も久保原のゴール前での一挙手一投足から目が離せない。

尚志の9番を託されているストライカーは矢崎レイスだ。圧倒的なフィジカルの強さと得点感覚を携え、満を持してプレミアのステージへ登場するも、待望の初ゴールが生まれたのは第14節の昌平戦。高橋響希のフィードに反応して先制ゴールを沈めたものの、その後にチームは2失点を喫して痛恨の逆転負け。ようやく手にした自身の結果も、勝利という形には結び付かなかった。

それこそ第14節での“初ゴール”は久保原とまったく同じタイミングだったが、その後に描いた軌跡は、今のところ明暗が分かれている。彼らはU-17日本高校選抜でも共闘しているだけに、矢崎も負けてばかりはいられない。プレミア残留に向けてもこの人の復調は絶対条件。今節で“2点目”を奪えるか否かは、尚志の浮沈を大きく左右する。

リーグ戦での前回対戦は7月6日に行われた第11節。その試合ではホームの尚志が4-1で快勝を収めている一方で、前述したように両者はインターハイ3回戦でも激突しており、そこでは市立船橋が1-0で競り勝った。1勝1敗で迎える、正真正銘の“シックスポインター”は激戦必至。残留争いの大一番を見逃すな!


尚志高校の右の翼・大内完介

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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