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サッカー フットサル コラム 2024年10月4日

欲しいのは勝利だけ!優勝と残留に向けて絶対に落とせない正念場inカシマ 鹿島アントラーズユース×大宮アルディージャU18マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第17節】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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鹿島アントラーズユースの正守護神・岸野瑛太

好調をキープしていた鹿島アントラーズユースに急ブレーキが掛かっている。後半戦に入って柏レイソルU-18市立船橋高校に続けて競り勝ち、夏の中断前から数えてリーグ3連勝を達成。暫定ではあるが13節終了時点で首位に立ち、優勝争いへ堂々と名乗りを上げていく。

だが、第14節で打ち合いの末、流通経済大柏高校に3-4で敗れると、青森山田高校戦にも0-2で敗戦。出場停止のディフェンスリーダー大川佑梧と、チームトップの8ゴールを挙げている吉田湊海が欠場した前節の昌平高校戦は、開始1分の失点を跳ね返せずにまさかの3連敗。ここに来て勝点を伸ばし切れていない。

一方の大宮アルディージャU18も苦しい時間が続いている。最後に勝利したのは5月12日の第6節・尚志高校戦。以降は決して悪い内容のゲームばかりではなく、勝っていてもおかしくない試合もあったものの、9試合に渡って白星から見放されているのが現状だ。

前節の青森山田戦も前半に菊浪涼生のFKがクロスバーを叩くなど、先制のチャンスも十分にあった中で、後半に入るとすべてCKの流れから3失点を喫して、最終的なスコアは0-3。1年生ボランチの神田泰斗や、U15に所属している中学3年生センターバックの熊田佳斗といった若い戦力も着実に台頭しているが、どうしても結果が付いてこない。

高円宮杯プレミアリーグ特集サイト

鹿島アントラーズユース不動の守護神は、曽ケ端準GKコーチの代名詞とも言うべき背番号21を託されている岸野瑛太だ。2年生だった昨季からレギュラーを任され、プレミア昇格にも大きく貢献。今シーズンもここまでリーグ全試合にフル出場しており、的確な指示とチームを鼓舞する大きな声を出しながら、守備陣に安定感をもたらしている。

前節も敗れたとはいえ、個人としては好守を連発していたが、岸野にとって昌平は因縁の相手。アントラーズつくばジュニアユース3年時に、冬の高円宮杯準決勝で対戦したFC LAVIDAの選手たちが多数在籍していたからだ。土橋竜之介、芝碧斗、徳田誉も出場していたその試合は、1-4と完敗を突き付けられている。今季のプレミアでは前半戦のホームゲームに1-0で競り勝つも、今回はリベンジを果たされた格好に。ただ、個人としてのパフォーマンスは決して悪くなかった岸野の奮闘が、連敗ストップの実現には絶対に欠かせない。

トップチーム昇格が内定している中で、戦線離脱していた前半戦は1試合の出場もなく、後半戦に入ってようやく帰ってきた右サイドバックの松本遥翔が、早くもそのクオリティを示している。プレミアデビューとなった第13節の市立船橋戦では、ルーレットで相手を剥がしたかと思えば、やはりトップ昇格内定の左サイドバック・佐藤海宏に正確なサイドチェンジを通すなど存在感抜群。はっきりと違いを見せていた。

中学時代はJFAアカデミー福島U-15WESTでプレーしていた松本は、キャプテンとして臨んだ3年時の高円宮杯で準々決勝まで勝ち上がったものの、最後はPK戦で敗退。実はその時の相手がアントラーズつくばジュニアユースであり、PK戦では1人目のキッカーとして登場すると、岸野からゴールを奪っている。そんな2人がチームメイトになり、今度は一緒に栄冠を目指すというのも不思議な縁。今回の試合も松本が攻守に発揮する質の高いプレーに注目したい。

大宮U18のキーマンには、1年時から試合に出続けてきた斉藤秀輝を挙げたい。上下動を繰り返しつつ、ポジショニングにも長けた右サイドバックは年代別代表の常連だが、負傷の影響もあって昨年開催されたU-17ワールドカップのメンバーには入れず、悔しい想いを味わった。

それでもこの夏はU-18日本代表に選出され、SBS杯に出場。本人も「人生の中でも初めてレベルだったんですけど、練習でたまたま良いボールが蹴れたら指名されました」というプレースキッカーも任され、新境地を開拓している。もちろん代表の経験を、残留争いに喘ぐチームに還元する必要があることは百も承知。「練習から1つ1つのパスだったり、1対1の強度で違いをしっかりと見せ付けていきたいなと思いますし、全体に共有しながらバチバチやっていきたいと思います」。右サイドを駆け上がる斉藤がどれだけ躍動できるかが、大宮U18の勝敗に直結することは間違いない。

山中大智が大宮U18にもたらしているエネルギーも語り落とせない。昨シーズンは主にボランチの位置で、ただ1人プレミア全22試合に出場。「去年はあまり自信を持ってプレーできなかったんですけど、今年は後輩を引っ張りながらチームの中心としてプレーしたいですし、いろいろな経験を生かしていきたいです」という副キャプテンは今季もここまでフル出場を続け、オレンジ軍団を逞しく支えている。

中学時代は街クラブのクラブ与野でプレー。「アルディージャに入った時は周りがみんな上手かったので、頑張るしかなかったですし、走るとか、頑張るとか、戦うとか、献身的なプレーも含めて基本中の基本をやろうかなという部分はありますね。ここは環境も整っているので、本当に自分次第でどうにでもなるなと感じていて、アルディージャに来て良かったなと感じています」。だからこそ残留という形で、このチームに恩返ししたい。後半戦は3バックの中央を任されている、大宮U18の走って戦うグラディエーター。山中の意地がこのグループを力強く牽引する。

なお、前半戦の両者は6月16日に行われた第8節で対戦。アウェイの鹿島ユースが長疾風の2ゴールに加え、中川天蒼と吉田も得点を重ねて、4-0というスコアで大勝を収めている。それぞれ優勝と残留を手繰り寄せるためにも、この試合は絶対に落とせない正念場となる90分間。カシマのサブグラウンドのピッチが、彼らが繰り広げるであろうバチバチの好勝負のキックオフを、静かに待っている。

大宮アルディージャU18・山中大智

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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