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サッカー フットサル コラム 2024年6月20日

前線にそびえたつ“緑のライトハウス”。昌平高校・鄭志錫が愚直に突き進むのは『日本一の15番』への道 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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昌平高校・鄭志錫

まさに前線にそびえたつ“緑のライトハウス”だ。チームメイトはその男が力強く照らす明るい光を頼りに、ボールを預け、ボールを受け取り、攻撃をスムーズに構築していく。その上で、個性派の集まるグループを引っ張っていくリーダーシップも携えているのだから、実に頼もしい。

「プレミアでは徐々にチームとしても、個人としても、スピードに順応してきたなという感じはあって、そこで自分のストロングポイントでもある身体を使ったポストプレーや得点感覚は、去年より養えていると思います。正直、相手を背負ってしまえばボールを取られる気はしないですし、自分の間合いに入ったら負ける感じはしないです」

昌平高校の1トップを任された、15番を背負う屈強なストライカー。プレミアリーグで重ねた実戦経験から大きな自信を得てきた鄭志錫のパフォーマンスは、今年のチームの勝敗を左右するだけの確かな影響力を持ち始めている。

本人も「自分の強みは体の強さを生かしたポストプレーだったり、収めるところなので、そこは自分の中でも自信はあります」と口にするように、とにかくボールが収まる。最終ラインからシンプルに送られたフィードも、中盤から縦に付けられたクサビも、洗練された身体捌きでしなやかに受け入れると、最適なポイントへ落としていく。

ストライカーではあるが、決してエゴイストではない。プレミアEAST第2節の前橋育英高戦。2-2の同点で突入した試合終盤の78分。鄭は巧みに最終ラインの裏へ抜け出してGKと1対1のシーンを迎えたが、シュートではなく、より確実な横パスを選択。三浦悠代の決勝点をアシストしてみせる。

「自分で打ちたかったですけど、可能性の高い方を選びました。去年からプレミアを経験させてもらって、1点の重みや1勝の重みというのは、本当に重いと感じていたので、可能性の高い方を選んで、それが結果に繋がって良かったなと思います」

高円宮杯プレミアリーグ特集サイト

もちろん自分のゴールにはこだわっているが、まず優先すべきはチームの勝利。玉田圭司監督も「あそこで志錫が懐を使えることが、2列目や3列目が気持ち良くプレーできる要因でもあると思うので、そこは僕もちゃんと見ているし、評価はしています」と言及するあたりに、このストライカーがピッチに立つことの重要性が滲む。

 

そのリーダーシップも折り紙付きだ。中学入学後は通っていた学校のサッカー部でプレーしていたものの、2年生の途中で昌平の下部組織に当たるFC LAVIDAへと加入すると、すぐさま大役を託されたという。

「LAVIDAに入ってすぐにキャプテンに任命されて、最初は本当にビックリしたんですけど、自分はそのころからサッカー以上に人間性の部分を大事にしてきたので、チームをまとめていくこととか、自分が中心になって何かをやっていくことは全然苦じゃないです。そういうことを率先してやってきたので、どこにいても自分が方向性を共有して、みんなでやっていけるようにできるイメージはありますね」

中学生時代は生徒会長も経験。「人前で話すことにも最初は緊張していたんですけど、徐々に慣れていきましたし、前に立つ人間として、普段の生活や身だしなみもしっかりしなきゃなということはそこで学べたので、今も目標にされる人間というのを意識して生活しています」。サッカーと生徒会活動をきっちり両立させたことは、今に繋がる小さくない自信になっている。

だからこそ、最高学年になった今シーズンは、チームを支える側としての自覚も十分だ。「LAVIDAの時の経験からキャプテンの大変さはわかるので、なるべく(大谷)湊斗を支えられるように、自分も声を出したり、日常生活からチームを引っ張ろうという考えは常に持っているので、それは徐々に表現できているのかなと思います」。やはりこの男があらゆる局面で打ち出す存在感は、昌平にとって絶対に欠かせない。

今季から指揮官に就任した玉田監督のメッセージに、さらなる成長を予感している。「玉田さんが常におっしゃることは『サッカーを楽しめ』『試合を楽しめ』ということで、実際に楽しむことを意識しただけでリラックスできたり、身体の力が抜けたりするので、そこは自分にとっても良かったなと思いますね。日々熱血的に指導してくれますし、情熱をもって接してくれるので、その想いは僕たちも感じています」。自分と同じフォワードのポジションで世界を相手に戦ってきた玉田監督の指導が、鄭へ今まで以上の進化を促してくれることに、疑いの余地はないだろう。

昨シーズンに引き続いて背負っている“15番”は、自分で志願した特別な番号だ。「LAVIDAから15番を付けているので、自分としても愛着がありますし、LAVIDAの時は何となく付けていたんですけど、高校に入ったタイミングで藤島さん(藤島崇之・前監督)が考えてくれて、そこからもずっと15番を付けさせていただいたので、『今年も15番がいいです』と伝えました。15番と言えば自分の名前が出てくるようになりたいですし、そういう印象を付けられるように、“日本一の15番”になりたいと思います」

昌平はインターハイ予選を制し、全国への出場権を獲得。決勝で2ゴールを叩き出し、埼玉制覇に貢献してみせた鄭にここからの目標を問うと、力強い答えが返ってくる。

「インターハイでは全国で優勝することが目標ですし、選手権でも国立の決勝まで行きたいと思っているので、その日まで本当に1日も無駄にせず、できることを最大限にやり続けていきたいです。そうすれば今まで以上にパワーアップできると思うので、それを信じて、愚直に、1日1日頑張っていきたいですし、どんな劣勢でも自分がゴールを決めて、チームを勝たせられるようなエースストライカーになりたいと思います」

愚直に突き進むのは『日本一の15番』への道。昌平の前線にそびえたつ“緑のライトハウス”。強烈なエネルギーを有した鄭志錫が放つ眩い光は、チームがここから目指すべき方向もくっきりと、鮮やかに、照らし出していくはずだ。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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