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クリムゾンレッドVS赤い彗星 開幕無敗を継続せよ!ヴィッセル神戸U-18×東福岡高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグWEST第3節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史191センチの体躯を誇るセンターバック、ヴィッセル神戸U-18・山田海斗
ヴィッセル神戸U-18が臨んだプレミアリーグWEST第2節。アウェイに乗り込んだ静岡学園高校との一戦は、山田海斗と瀬口大翔のゴールで2点をリードする。それは開幕戦とまったく同じ展開だったが、「2-0になった時に、もっと攻めたかった部分で全体的に守りに入ってしまいました」と山田が悔やんだように、その試合はそこから2点を返され、ドロー決着を強いられている。
だが、この日の彼らは逞しかった。「今日も2-0になった瞬間に、監督からも『次の点を獲りに行くぞ』と言われて、チームとして3点目を奪えたのは良かったと思います」(山田)。安部雄大監督の檄も後押しとなって、吉岡嵐がきっちりとチーム3点目を奪い、ファイナルスコアは3-0。1週間前の反省を生かした神戸U-18は、しっかりと勝ち点3を手にしてみせた。
東福岡高校も上々の開幕スタートを切っている。オープニングマッチは難敵・静岡学園と対峙したホームゲーム。押し込まれる時間が長い展開の中で、終盤に稗田幹男のロングスローから途中出場の齊藤琉稀空が決勝ゴールを叩き込み、1-0で勝利。今季から就任した平岡道浩監督に初白星のプレゼントを贈ることに成功した。
続く第2節の相手は昇格組の鹿児島城西高校。アウェイで戦ったゲームは、双方に数回の決定機が訪れたものの、GK後藤洸太が見せたファインセーブも光り、結果は0-0のスコアレスドロー。2節までに勝ち点4を獲得しており、とりわけ2試合続けて無失点を記録した守備陣の奮戦が目立っている。
今シーズンの神戸U-18でディフェンスリーダーを任されているのは、昨季からレギュラーを務めてきた山田海斗だ。191センチの体躯を誇る大型センターバックは、ビルドアップやフィードで披露する足元の高い技術も標準装備。本来のキャプテンの江口拓真が離脱しているため、腕章も巻きながらチームに安定感をもたらしている。
プレシーズンにはトップチームのキャンプに帯同。「アジリティのアドバイスは大迫(勇也)選手が言ってくれて、酒井高徳選手から『ゴハン3杯は食べろ』と毎回言ってもらっていました(笑)」と笑顔を見せつつ、同じポジションでもあり、実は小学生時代のチームが一緒だという山川哲史からはチームの中での振る舞い方を学んだという。17日のルヴァンカップでもベンチ入りを果たすなど、クラブからの期待値も非常に高い山田のパフォーマンスには、この試合でも大いに注目してほしい。
開幕から好調を続けているセンターフォワード、吉岡嵐の躍動も語り落とせない。初戦の大津高校戦では、キックオフ直後に相手ボールをかっさらい、開始9秒で衝撃の先制弾。後半にももう1点をマークし、いきなり1試合2ゴールを叩き出すと、前節もこぼれ球に鋭く反応して1得点。現時点でWEST得点ランキングトップに立っている。
本来は左サイドが主戦場だったが、チーム事情でコンバートされた途端のブレイクぶり。本人も「フォワードを最後にやっていたのは中学生の頃だったので、『まさかここで自分の長所が出せるとは』とビックリしています」と言いながらも、「ストライカーになったので、毎試合1点以上は決めたいです。もう得点王を狙いに行きます」と力強い宣言も。神戸U-18の新ストライカー、覚醒しつつある吉岡の得点感覚が攻撃陣を牽引していく。
今節はアウェイゲームとなる東福岡からは、キャプテンの柴田陽仁にスポットを当てよう。2番を背負った右サイドバックは、一言話せばすぐにわかるナイスガイ。「大変じゃないと言ったらウソになりますけど、やりがいはありますし、『東福岡のキャプテン』を務めるという責任感もあります」と新たな役割にもポジティブに向き合っている。
プレーの参考にしているのは、右サイドバックとして日本代表に定着しつつある毎熊晟矢(セレッソ大阪)。そんな偉大な先輩たちから引き継いだエンブレムの重みも、十分に理解している。「最近は全国制覇も、福岡県制覇も獲れていない中で、『やっぱり東福岡は強い』と思わせたいですし、『福岡の中ではヒガシだ』と言われるように、全国でも赤い彗星に憧れてもらえるようなサッカーをして、結果を残したいですね」。2024年の“ヒガシのキャプテン”。柴田の攻守に渡る奮闘とリーダーシップは要注目だ。
今季の東福岡の核となり得る中盤のキーマン、大谷圭史も活躍を期待したい1人であることは間違いない。昨シーズンもプレミア10試合に出場しており、「プレミアの選手はみんな上手い中で、(西田)頼くんや去年の選手は切り替えも早くて、強度を持ちながらやっていたので、そこは学ばせてもらいました」と肌で体感したものをチームメイトへとフィードバックしているようだ。
参考にしている選手として挙げるのは福井太智(ポルティモネンセ/ポルトガル)。自身でも「自分はゲームメイクの部分が得意で、チームのテンポを上げたり、前を向いた時のプレーの選択のバリエーションは特徴かなと思います」と言及している。児玉愁都、佐藤宏耀と3人で組む中盤がどれだけ機能するかは、逆三角形を敷く中盤に強みを持つ神戸U-18との対戦という観点でも、勝敗を左右する大事な要素。その中でも大谷が有するバランス感覚は、きっとゲームのカギを握ってくるはずだ。
最後にあるデータをご紹介したい。一昨シーズン、昨シーズンと2年連続でWEST2位となった神戸U-18だが、それぞれのシーズンの結果を振り返ると、2022年は前半戦が6勝1分け4敗で、後半戦が7勝3分け1敗。2023年は前半戦が5勝3分け3敗で、後半戦が9勝2敗と、リーグ前半戦と後半戦の結果に大きな差が表れている。
「去年も一昨年も前期で取りこぼしが多くて、後期から巻き返すんですけど、あと一歩届かないということが続いているので、今シーズンは開幕から1試合1試合の重みを考えてやっていきたいです」(山田)
狙うのは例年以上の開幕ダッシュ。「今季こそは」という気概にあふれた神戸U-18にとって、2024年シーズンの行方を占う意味でも、今節の結果はとにかく重要だ。『クリムゾンレッドVS赤い彗星』の90分間、激闘必至。
東福岡高校のキャプテンを任されている柴田陽仁
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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