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3月20日にフクダ電子アリーナで行われたJ2リーグ第5節、ジェフ・ユナイテッド千葉対清水エスパルスの試合は期待通りの大熱戦となった。
昨年も最後までJ1昇格を争った両チーム……。千葉はリーグ戦後半に追い上げて6位に入って昇格プレーオフを戦ったものの、東京ヴェルディに敗れ、一方、清水はリーグ戦を4位で終えて昇格プレーオフ決勝でも終盤まで東京Vをリードしていたものの、最後にPKを決められて追いつかれ、リーグ戦上位の東京Vの昇格が決まった。
清水は、リーグ戦の最中から「後1勝すれば2位以内(自動昇格)決定」といったチャンスもあっただけに、悔しいシーズンだったに違いない。しかも、昨シーズンは千葉に対して1分1敗と勝利できていなかった。
それだけに、悲願のJ1昇格を狙うチームとしても、また秋葉忠宏監督にとっても千葉戦にはどうしても勝利しておきたかったはずだ。
一方、昨シーズンは小林慶行監督の下、アグレッシブな攻撃的サッカーで順位を上げて昇格プレーオフに漕ぎつけた千葉は前節、鹿児島ユナイテッド相手に2対4と完敗を喫しているだけに、“J2最強”とも言える清水に対して激しい戦いを挑みたかったところだろう。
フクダ電子アリーナは1万4923人の入場者でほぼ一杯。アウェー席も清水サポーターで埋め尽くされ、キックオフを前にフクダ電子アリーナには熱気が充満した。
実際、試合は激しいボールの奪い合いで始まった。ピッチ上の各所で選手同士が激突する。しかも、先立圭吾主審が選手が倒れても簡単には笛を吹かない“強気な”ジャッジでプレー続行を促したものだから、さらに試合はヒートアップしていった。
清水は“J1並み”の戦力を持つチームだ。
GKにはカタール・ワールドカップで日本ゴールを守った権田修一がおり、トップ下にはロシア・ワールドカップで活躍した乾貴士がいる。ワントップも元日本代表の北川航也だ。
そんな「個の力」で優る清水に対して、ホームの千葉は素晴らしい戦い方をして前半は優勢に進めた。
相手陣内のボールに対しては前線から積極的にプレッシャーをかけ、同時にMFやDFもいっせいに動き出してラインを上げ、清水の攻撃を封じ込める。
そして、最終ラインに入ったベテランDFの鈴木大輔がロングボールを駆使して清水の守備ラインを押し下げ、また、左サイドハーフのドゥドゥとサイドバックの日高大が絡んでサイドを攻略。こうして、清水の守備陣形を広げていった。
そして、相手陣内にスペースができるのを待って、ボランチの横山暁之がスルーパスを通して何度かのチャンスを作った。
こうして30分過ぎまで優勢に試合を進めることに成功した千葉だったが、なかなかフィニッシュまで行けない。前半は両チームともにシュートが3本ずつ。CKの数もゴールキックの数も少ないスタッツとなった。つまり、ボールはなかなかゴールラインまで達しなかったのだ。
それはけっして凡戦だったという意味ではない。中盤でボール際を巡る激しいバトルが繰り返された結果だった。
そんな中で、41分にGK権田からボールを受けたDFの蓮川壮大がドリブルで敵陣深くまでボールを持ちこんだところから、清水が攻撃の糸口をつかんで一挙に攻勢を強めていった。そして、前半終了直前の44分、カルリーニョス・ジュニオからのパスを受けた乾が枠内にシュートを飛ばし、GKの鈴木椋大が弾いたところをカルリーニョス・ジュニオが決めて清水が1点をリードした。
勝負所と見るや一気にギアを挙げてきたあたりはさすがに強豪チームだった。
ただ、千葉もそのまま引き下がりはしなかった。相手陣内深くでボールを奪った小林祐介からパスを受けた小森飛絢が強引にシュートを放つと、これが相手DFに当たってそのまま清水のゴールに転がり込んで同点となったのだ。
後半は清水がさらに球際の競り合いの激しさを増し、ラインを下げることなく対抗し、互角の攻防が続いた。流れは明らかに清水に傾きかけたようにも見えた。だが、60分前後には千葉が推進力を発揮して清水ゴールに迫る時間帯も作り、MFの横山からのスルーパスがドゥドゥに通ったり、左サイドバックの日高のクロスが入り、小森が飛び込む場面も作った。
だが、この時間帯に得点を決めることができなかったのが千葉にとっては大きな誤算。公式記録によれば、後半の千葉のシュート数はゼロのままだった。
試合が終盤に差し掛かると、両チーム監督が交代カードを次々と切り合ったが、試合の流れを大きく変えたのは67分の清水の交代だった。
ワントップの北川と右サイドのルーカス・ブラガを退け、右に松崎快、左に白崎凌兵を入れ、それまで左サイドハーフだったカルリーニョス・ジュニオをトップに置いたのだ。
両サイドの推進力とトップでの強さが加わって、疲労をためた千葉のDF陣に襲い掛かる。
そして、80分、千葉陣内で両チームが激しいボールの奪い合いを1分近く続けた後、中盤でボールを確保した住吉ジェラニレショーンが右に展開。松崎がワンタッチで乾に渡すと、飛び込んだ乾はニアサイドにシュートをたたき込んだ。
1点リードした清水はスリーバックに変更して守備を固めると同時に、北爪健吾をウィングバックとして投入した。そして、アディショナルタイムに入った91分には左からのロングボールを北爪が折り返し、そこに走り込んだ松崎が決めて千葉を突き放した。
乾が難しいシュートを決めて勝ち越したこと、あるいは松崎、北爪といった交代で入った選手が活躍したことなど、やはり選手層の厚さこそが清水のストロングポイントなのだろう。前後半ともに最後の10分にギアを上げて得点を生み出したのだ。
良い時間帯もありながら最後に突き放されてしまっただけに、千葉としてはショッキングな敗戦となったが、“J2最強”とも言える清水を相手に互角、あるいは互角以上に戦えたのだから、千葉が力のあるチームであることは十分に証明できた。
数年前まではJ2リーグの中位どころに定着していた千葉だったが、昨シーズン、小林監督の下で繊細でありながら、同時にアグレッシブな攻撃的サッカーを身に着けた。同時に、フクダ電子アリーナの雰囲気も大きく変わり、熱さを感じられるようになってきた。
清水との一戦はそうした千葉の持つ熱量と、秋葉監督が醸し出す清水のなんとも言えない熱さが絡み合った激戦となったのだ。
「突風や雷雨」という天気予報だったが、雨も一時的なものですみ、この日詰めかけたファンやサポーターは元気を持って家路に就くことができたことだろう。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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